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最近、屋敷の中が以前よりも少し騒がしい。
すれ違う使用人たちの視線が、私を追うことが増えた。
ひそひそと交わされる声も、確実に私の名前を含んでいる。
「ノクティス家のご令嬢……」
「光属性だけでなく、お姿まで……」
(……全部、聞こえてます)
どうやら、私――ルクシア・ノクティスの存在は、
貴族たちの間にも少しずつ知れ渡り始めているらしい。
そんなある日のこと。
「ルクシア」
部屋を訪ねてきた兄――ユリウス・ノクティスが、少し照れたように声をかけてきた。
七歳になった兄は、以前よりも背が伸びて、表情にも落ち着きが出てきている。
「今日、俺の友達が屋敷に来るんだ」
「おにいさまの……おともだち?」
私が首を傾げると、ユリウスはうなずいた。
「ああ。ちゃんとした貴族の子たちだ。ルクシアに会いたいって言ってな」
(どうして……?)
理由はなんとなく分かってしまうのが、少し怖い。
「心配しなくていい。俺がちゃんとそばにいるから」
そう言って微笑む兄の様子は、もう“ただの兄”ではなく、
守る立場であることを自覚した顔だった。
――と、その空気を遮るように。
「ふうん」
少し低くなった声が聞こえる。
「また、ルクシアのことを知る人が増えるんだね」
そこに立っていたのは、レオンハルト・アウレリウス王子。
彼もまた七歳になり、王子としての自覚が少しずつ芽生え始めている。
「あーあ……」
レオンハルトは、わざとらしく肩をすくめた。
「ルクシアは、ボクのおよめさんになる予定なのに」
(予定……!?)
「こうやって、可愛いのがどんどん広まると困るな」
その言葉には、冗談めかしながらも確かな独占欲が混じっていた。
「何言ってる。ルクシアは俺の妹だ」
ユリウスが、ぴしりと言い切る。
「それに、簡単に誰かに渡すつもりもない」
(渡すとかじゃないんですが……)
私は二人を見上げながら、小さくため息をついた。
まだ三歳の私には分からないことだらけだ。
けれど。
確実に言えることが一つある。
――私を取り巻く世界は、少しずつ広がり始めている。
それが、守られるためのものなのか。
それとも、縛られる始まりなのか。
今はまだ、知らなくていい。
ただ今日も、私は二人に挟まれて、
過剰なほど大切にされているのだった。