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#akg
ポレ
104
暖炉の火が 、 ぱちりと小さく音を立てた 。
その音で 、 ウェンはゆっくりと目を開ける 。
見慣れない天井 。
木の梁がむき出しになった高い天井に 、 大きなシャンデリア 。
「 …… ここ 。 」
昨日までいた路地裏とは 、 まるで違う世界だった 。
体を起こそうとすると 、 左足に鈍い痛みが走る 。
wn
「 っ …… 。 」
視線を落とすと 、 足首には綺麗に包帯が巻かれていた 。
誰かが手当てをしてくれたらしい 。
昨日の記憶を思い返す 。
雨 。
路地裏 。
黒いコート 。
赤い目の男 。
「 …… 。 」
その時だった 。
コンコン 、 と控えめなノック 。
返事をする前に扉が開く 。
眠そうにあくびをしながら入ってきたのは 、 昨日の男だった 。
黒いパーカーにジャージというラフな格好 。
気だるそうな雰囲気は昨日と変わらない 。
kz
「 起きたか 。 」
wn
「 …… 。 」
ウェンは数秒 、 じっと見つめる 。
kz
「 何 。 」
wn
「 昨日の人 。 」
kz
「 そう 。 」
一言だけ返して 、 部屋の壁にもたれた 。
沈黙 。
気まずいわけではない 。
ただ 、 お互い何を話せばいいのか分からなかった 。
やがてウェンが小さく口を開く 。
wn
「 …… 助けてくれたの ? 」
kz
「 たまたま 。 」
wn
「 ありがとう 。 」
葛葉は肩をすくめる 。
kz
「 礼言われるほどのことじゃねぇ 。 」
ぶっきらぼうな返事 。
でも 、 ベッドの横には新しい包帯と薬 、 それからコップに入った水が置かれている 。
ウェンはそれを見て 、 小さく笑った 。
wn
「 優しいんだね 。 」
その瞬間 。
葛葉は少しだけ眉をひそめた 。
kz
「 …… 違う 。 」
wn
「 え ? 」
kz
「放っとくと寝覚め悪いだけ 。 」
そう言って視線を逸らす 。
その横顔が少しだけ照れくさそうに見えて 、 ウェンは思わず笑ってしまった 。
wn
「 ふふ 。 」
kz
「 笑うな 。 」
wn
「 ごめん 。 」
そう言いながらも笑顔は消えない 。
葛葉は諦めたように小さく息を吐いた 。
しばらくして 。
kz
「 腹 。 」
wn
「 え ? 」
kz
「 減ってる ? 」
その瞬間 。
ぐぅぅ ……
タイミングよくお腹が鳴る 。
部屋が静まり返る 。
wn
「 ………… 。 」
耳まで真っ赤になるウェン 。
葛葉は少しだけ口元を押さえた 。
kz
「 正直 。 」
wn
「 今のは忘れて 。 」
kz
「 無理 。 」
珍しく声を出して笑う 。
その笑いにつられて 、 ウェンも苦笑した 。
一階へ降りると 、 ダイニングには温かいスープとパンが並んでいた 。
wn
「 これ …… 。 」
kz
「 冷めるぞ 。 」
ウェンは席に着き 、 一口ス ー プを飲む 。
優しい味だった 。
冷え切っていた体が 、 ゆっくり温まっていく 。
wn
「 …… 美味しい 。 」
kz
「 レトルト 。 」
wn
「 いや 、 それでも美味しいよ 。 」
葛葉は返事をせず 、 自分もスープを口に運ぶ 。
静かな朝 。
気まずさは 、 不思議となかった 。
食べ終わったウェンは 、 食器を持って立ち上がる 。
wn
「 洗うよ 。 」
kz
「 いい 。 」
wn
「 でも 、 」
kz
「 座ってろ 。 」
wn
「 いや 、 これくらい ―― 」
一歩踏み出した瞬間 。
足がぐらつく 。
wn
「 っ ! 」
倒れそうになった体を 、 葛葉が片手で支えた 。
距離が一気に近くなる 。
kz
「 だから言った 。 」
ウェンは苦笑する 。
wn
「 …… ごめん 。 」
kz
「 謝る前に休め 。 」
それだけ言って手を離す 。
ウェンは少し照れくさそうにソファへ座った 。
夕方 。
窓の外が赤く染まり始める 。
葛葉はソファから立ち上がると 、 玄関へ向かった 。
黒いコートを羽織り 、 革手袋をはめる 。
ウェンはその様子を不思議そうに見つめる 。
wn
「 出かけるの ? 」
kz
「 あぁ 。 」
wn
「 仕事 ? 」
少しだけ間が空く 。
kz
「 …… そんなもん 。 」
短く答える 。
それ以上は話さない 。
ウェンも無理には聞かなかった 。
玄関の扉を開けた葛葉に 、 ウェンは小さく声をかける 。
wn
「 …… 行ってらっしゃい 。 」
その言葉に 、 葛葉の肩がぴくりと動いた 。
何百年もの間 。
誰かにそう言われたことは 、 ほとんどなかった 。
振り返らないまま 、 小さく手を上げる 。
kz
「 …… 行ってくる 。 」
扉が閉まる 。
静かになった屋敷で 、 ウェンは窓の外を眺めた 。
「 変な人 。 」
ぽつりと呟く 。
でも 、 その声はどこか優しかった 。
一方その頃 。
夜の街を歩く葛葉は 、 月を見上げていた 。
赤い瞳が細くなる 。
kz
「 …… ほんと 、 変なやつ拾った 。 」
口ではそう言いながらも 、 その足はいつもより少しだけ軽かった 。
まだ知らない 。
この屋敷が 、 ウェンにとって ” 帰る場所 ” になっていくことも 。
そして 、 自分にとっても ” 誰かを待つ場所 ” になっていくことも 。
コメント
1件
ああー、このやりとり、すごく好きです。ぶっきらぼうなのに薬と水を置いておく優しさとか、「行ってくる」って返せた最後とか、心がじんわり温かくなりました。葛葉のちょっと照れてるところと、ウェンがそれに気づいて笑う距離感が絶妙で、これから二人がどうなっていくのか楽しみです。自然に優しい空気を作れるのが素敵ですね🌷