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第八十一話 冬の知らせ
十二月に入った。
朝、玄関を出ると、
吐く息が白くなる。
街にはクリスマスの飾りが増え、
一年の終わりが近づいていることを感じさせていた。
湊は大学へ向かう電車の中で、
窓の外を眺めていた。
紅葉はすっかり落ち、
木々の枝が目立つようになっている。
季節が変わるたびに、
景色は少しずつ姿を変えていく。
湊はそんな変化を、
以前よりも意識するようになっていた。
その日の午後。
写真の企画に応募していた湊のもとへ、
一通のメールが届いた。
――結果のお知らせ。
「……来た」
前回の写真展とは違う。
今回は、地域の人たちの日常を撮影する企画。
もし参加できれば、
今まで以上に
多くの人と関わりながら写真を撮ることになる。
湊はゆっくりメールを開いた。
そこには、
「プロジェクト参加者として選出させていただきます」
と書かれていた。
「……よし」
思わず小さく拳を握る。
写真展に続いて、
また一つ、新しい場所へ進めることになった。
その夜。
湊は紬に電話をかけた。
「もしもし?」
「紬、聞いて」
「なに?」
「この前応募した写真の企画、選ばれた」
「本当に!?」
紬の声が一気に明るくなる。
「おめでとう!」
「ありがとう」
「すごいじゃん。最近どんどん新しいこと始めてるね」
「うん。自分でもちょっと驚いてる」
少し笑ってから、
湊は続けた。
「今度は、いろんな人を撮ることになるんだ」
「湊がやりたかったことじゃん」
「そうなんだよね」
電話の向こうで、
紬も嬉しそうに笑った。
「私もね、今日ちょっと嬉しいことがあった」
「なに?」
「大学の活動で、来年の企画を一緒に考えることになったの」
「へえ!」
「海外から来た学生と、日本の学生がもっと交流できるような企画にしたいんだ」
湊は黙って聞いていた。
それは、紬がずっと話していたことだった。
違う国の人たちが、
お互いのことを知るきっかけを作りたい。
その思いが、
少しずつ形になっている。
「紬も進んでるな」
「湊もね」
「俺たち、ちゃんと夢に近づいてるのかな」
「どうだろう」
少し考えてから、
紬が言った。
「でも、前より近くなってると思う」
その言葉に、
湊は笑った。
電話を終えたあと。
湊は机の上に置いていたアルバムを開いた。
タイトルは、
「夢の途中」
まだ写真はそれほど多くない。
けれど、
ページをめくるたびに、
自分が進んできた道が見える。
湊は新しいページを開いた。
そして今日届いたメールを思い出しながら、
小さく呟いた。
「ここからだな」
これから始まる新しい撮影。
新しく出会う人たち。
まだ知らない景色。
きっと、
思い通りにならないこともある。
それでも。
今は、それすら楽しみに思えた。
窓の外を見る。
冷たい風に、
街のイルミネーションが揺れている。
湊はカメラを持ち、
窓の外へ向けた。
シャッターを切る。
今年最後の月。
そして、
新しい一年へ向かう始まり。
📷 Photo.081「冬の知らせ」
撮影日:12月6日
新しい挑戦の知らせは、
湊に「まだ見たことのない景色がある」と
教えてくれた。
夢の途中だからこそ、
これから出会えるものがある。
――次回、第八十二話「冬の街」へ続く。
コメント
1件
おお、第81話、読み終えました…!湊くん、写真の企画に選ばれたんですね。前回の写真展とはまた違う挑戦、本当に一歩ずつ進んでる感じがして、胸がじんわりしました。 「夢の途中」っていうアルバムのタイトルがもう素敵で…。まだ写真は少ないけど、ページをめくるたびに自分の歩みが見えるっていう描写、すごく好きです。紬さんの「前より近くなってると思う」という言葉も染みました。お互いがお互いのペースで夢に向かっていて、でもちゃんと励まし合える関係、本当に尊いです。 寒い冬の街の描写と、湊くんの内側のあたたかさが対照的で、読後感がとても優しかったです。次の「冬の街」も楽しみにしてますね!