テラーノベル
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「ん…」と降谷は首をかしげて水を飲む。スミスはそれを肩越しに見た。
「なんだろう…まだ眠いな……」寝たはずなんだが…と目を擦る。
「疲れてるのよ」スミスは前を向き、ミルクを傾ける。
ごめんなさいね、零……
これは私が決めたことだから……
スミスは溜まっている食器を気づかれないように見た。
FBIのところに行っている間、起きられたら困る。思いきりセックスした後、さらに水に睡眠薬を混ぜた。
入れすぎたな…とまたコップを傾ける。
自分だったら、と思う。あれじゃ眠らない。量を間違えて、降谷は薬が残っている。しくじった。
「わたしも眠い」はぁ、と息をつく。振り向いたら降谷がソファから手を出していた。
その手をとり、ぐっと引かれて膝に落ちた。「なぁ」「ん?」「…暇じゃないか?」ふっ、と2人で吹き出す。
「じゃあーー」
「もう出ないって…」あはは、と降谷は笑う。「ゲームしましょ」「え?」と彼は中途半端に笑ったまま。
「私が質問をしたら…」とん、と人差し指を胸に突く。「あなたは必ず答える。次は、あなたが私に尋ねる」肩に顎を乗せ、スミスは抱きつく。
「いいよ」と降谷もからだに腕をまわす。
「…なぜ……この仕事を選んだの」
降谷はしばらく考えているようだった。
「…気づいたら」
ふっ、とスミスは笑った。
「次は僕か。うーん……初恋はいつ?」
「なにそれ」
「いや。気になる」2人で笑う。
スミスは少し肩ではにかんだ。「…よく…わからないかも」スミスにはロイが浮かんでいたが、少し感情が違う気がした。
「恋、がよくわからない。って答えになる。次はわたしーーあなたは、零」
わたしがテロリストだったら?
降谷はすぐスミスの顔を見た。「どうする…?」「決まってるだろ」彼は眉をひそめる。
「僕も一緒に死ぬ」
しん。となった部屋でスミスは前髪を垂らしてまた腕をまわした。
「嘘でもやめてくれよ」
「ごめん」ふふふっ、と笑う。
「そんなきわどいこと聞くならこっちもそうするぞ」くすぐられて、スミスは素直に笑ってからだを揺らした。
「風見を」と言われてスミスは止まった。
「…なんだと思ってる……?」
「えぇ?」スミスは降谷の顔を見た。「なに?まさか妬いてるのーー」
「僕の番だろ」
スミスは寄りかかった。
「……だんな様」ふー、と言ってからスミスは続ける。「でも…」欄干から落ちていく風見を思い出して、ぐ、と降谷の胸元を握りしめた。
「…いつか……殺してしまうかもって思ってる……」
最初からそう思ってた。優しすぎると。
「あ。逃げたな?」
「なんのこと」ふふふっ、とスミスはシャツから出ている足を擦った。
「次はわたし……世界が終わる瞬間…どうしていたい?」
スミスはぐ、と腕に力をこめた。
そうしてあげるから。そう言わんばかりに。
「そんなの」ふふっ。と降谷は笑ってスミスを見た。
「君とーー」
両隣で弁当を食べる風見と降谷に、スミスは腕を組んだまま座っていた。
「なにそれ?」と風見が箸で持っていた梅を指差す。「うめ」モグモグする風見はお茶を飲む。
「で?なんでそれをまたごはん様に埋めるのよ」
「味がついて美味しいから」
はっ、と降谷がごはんをかきこんで笑う。「え?そうやって食べません?」「僕は」と降谷は首を振り、ごくごくとお茶を飲む。
2人の男はいそいそと食事して、また飲み込んでいないのにそれぞれ立ち上がる。
「休暇はどうだった?」とスミス。風見はようやくごはん様を飲み込んだ。
「あぁ」
「あぁ、って?」スミスは首をまわすように尋ねる。「寝てた」「こっちも同じようなもんだな」
がさっ、と弁当をゴミ箱に捨てて降谷はまたお茶を傾ける。
「デスクに書類が山みたいに。メールも死ぬほど」
「悪いな風見、そっちよりもこっちを優先してくれ」
「わかってますよ」
「スミス」と言われてスミスもやれやれと立ち上がった。
「ロシアに日本の外務省の要人を護送する、という目的ですがーー」
すでに始まっている会議に、3人は後ろからそれを見た。
「貨物に乗っているのは……」
「南アフリカ原産の…【ニャオペ】です…」刑事らがざわつく。
「ニャオペ?」とスミスは眉をひそめた。「麻薬ですか」と風見が言う。
「ただの麻薬じゃない」と降谷。「麻薬のトレンドは気持ちよくなるのが主流なのよ、でもねーーニャオペは…」
「あぁ」と降谷は風見を見て言った。「数回打てば死ぬんだ」
「な…それじゃ…」
「そう」ふー、とスミスは腕を組んだ。「私たち人間は神の領域に踏み出したのよ…死さえ……弄ぶ」
スミスは目をそらす。
「ロシアは領土問題を抱えています。ですから、バルト3国に流行らせるつもりでしょうねーー」「自国で直接取引しないのか…汚い」「ですがさらに問題は」と刑事が立ち上がる。
「仲介国がアメリカだということ…」
ざわつく室内に、降谷は大きな声を出す。「なら、アメリカに返せばいい」
「は?」という風見の肩をスミスは引く。
「アメリカの領空内で。海に」とスミス。
「はあ?」と風見はスミスを見たあと降谷を見た。「降谷さん、そんなことしたら…」「あぁーー」と顎を引く。「向こうも同じ頭なら……」「黙ってない」
スミスは降谷の前へ出てくる。
「日本の要人が乗ってる輸送機を簡単に打ち落としたりはアメリカだっていくら領空内でもしないわ。だから……」
ふさ、と前髪が目にかかる。
「【あいつ】が来るわよ、ゼロ……」
降谷は顎を引く。
「だろうな…」はーっ、と言ってポケットに手を突っ込む。
「この間の碧斗くんの狙撃に使ったライフルは米軍のものだ」す、とスミスを指差す。「【君】だから使用許可が降りた……」「それは……」風見は言いにくそうにする。
「アメリカはわたしを兵器だと思ってる」スミスは肩をすくめる。「当然ね。それで日本が内側から……」と椅子によろけてみせる。「…ねぇ?」と唇をさわってみせる。
風見はしばらくそれを見たが、何も言わずに眼鏡をあげた。
「だがアメリカの領空内でその箱を海に落とすなんてしたら、当然レーダーに引っ掛かる。日本の輸送機から落とされたとわか……」
はっ、とわかりやすく風見は息をして立ち上がった。
「そう」降谷は階段を下りていき、画面の目の前に立ち、スミスを指差す。
「だから…スナイパーが来るんだ」
「本来は日本と取引して日本に引き渡したもの……それを返すなんて、許すわけないわよ」
風見をスミスは見る。
「捨てる前に、恐らく爆破される…そうすれば、すっとぼけられるからね。だってーー」
「証拠がないからな……」
ざわつく薄暗い部屋で最初に口を出したのはスミスだった。
「…で?」風見を見る。「いつも通り…でっちあげられるわけ?っていうか」
「無理だ」風見は鋭くスミスを見やり、前にやる。「貨物庫のハッチを開ければ、当然運転席に開いたとバレるーー」
「気絶させれば?あっ」と気づいたように刑事が目をそらす。「だめだ、たしかに…パイロットらを気絶なんてさせたら輸送機を危険にさらす……」
「オートパイロットの間にやるしかないな」降谷は呟く。「その間は?」とキョロキョロする刑事。「外務省の彼らや輸送機内の人間にバレませんか?」
室内は諦めのような声をだし始める。
「無理です」風見は再び首を振った。「わたしは飛行機の運転は」と降谷を見つめる。「僕も無理だ」はあ、と降谷は言う。「スミス…」皆が彼女を見上げる。
「できるのか?」
「えぇ」にや、と笑う。「あらゆる操縦桿を……でもだめよ」す、とスミスは視線をそらす。
「最初から操縦席にいたらマスコミにバレちゃうじゃない…ハッチを開ければいいんでしょ?じゃあ」とスミスは前を見据えた。
「貨物庫に乗る」
ざわっ!と明らかに皆が首を振った。
「おいーー貨物庫には空調がない!」風見が肩をぐっと掴んだ。「だから?」とスミスに見られ、風見は息を飲む。「高度は1万以上だぞ!酸素だって薄くなるしーー貨物庫の温度は……」「マイナス50度以下にはなるわね、でも」スミスは降谷を見た。
「ロシアの真冬の海を走ったことは?」
風見はふ、とわかりやすく目をそらした。「泳いだことは…?」「決まりだ」降谷が上がってくる。
「ハッチが開いたことを気付かせないようにするには、その間だけ。その間だけ運転席に誰かがいればいい。運転はオートパイロットにしておいて…」とんとん、と風見の肩を叩く。
「…っ」風見は嫌そうに唇を歪ませた。
「なんて言って運転席を開けるんです」
「普通に」とスミスは人差し指を向けてくる。「そ!それじゃあまるでーー」
「うわあ!」とパイロットは銃口を向けられ椅子から飛び上がる。
「な、なにっ…」
副パイロットが喋ろうとしたのを風見は人差し指を立てる。
「手荒な真似はしたくありません…今から貨物庫のハッチを開けます…アラートを落としてください…早く」
ぐっ、とパイロットに銃口を突きつける。パイロットはすぐその通りにした。
「準備完了」と風見は言う。
「あなた方には何も危害は加えない。わたしに会ったことは内密に…あなた方は外務省の人間を護送している…ハイジャックされたなんて知ったら上は…」
「…っ!」
「だから…経路は変えずこのまま無事に我々をロシアへ…」風見は人差し指をたてて笑った。「安全運転で」
箱がぶち破られ、降谷は転がる。「さっむ!くそっーー!」髪が少し凍りかけてシャリシャリ言った。「さ、寒いなんてもんじゃな…息もうまくできないしっ…」「わたしにしがみついてたから大丈夫でしょ」よっ、とスミスも箱から立ち上がった。
「わたしは凍りかけてるわよ」
ふふ…とスミスは前髪を垂らした。
「えー」とテレビの記者が言う。輸送機の前で、記者はバインダーを見た。
「本日より外務省幹部らはロシアへ向かいますーー首相はその後合流……」
コナンは唸って立っていた。
「いらない?」と灰原がカップを見せるので、首を振った。
赤井にスミスが会いに来たのはなぜだ。
身体中にニトロを塗りたくるなんて…しかも浴室で。
「信じられねぇ…」
あの夜自分が、遅いと思って訪ねていなかったらどうなっていたのか。
彼のことだからなんとかしたんだろうが、かなり間一髪だった。
浴室なんてただでさえ温度が高い場所で……コナンはテレビを見た。
「確実に殺しにかかってるよな…」
「え?」と灰原。
「いや…」とコナンは首を振る。恐らく彼にレイプに近いように抱かれたんだろうが、なら?あの2人は2人きりにはいつでもなれたはず……。
行ってきます、と首相と外務省幹部らは握手を交わしぞろぞろSPを引き連れ飛行機に乗り込んだ。
「開けるわよ、吸い込まれないでね」降谷は頷く。ハッチを開けるとがあっ!と物凄い風が吸い込まれていく。「その箱」とスミスは鼻を鳴らす。「うわ」降谷は肩でそれを押す。「重すぎる!風見!こっち来い!俺ひとりじゃむーー」
「だと思いました」と聞こえて降谷は2度見した。「風見!おま…」「気絶させたんで」スミスはふふっ、と笑う。「だんだん男になってきたわね」
ふん、と風見は顔をそらす。「運転はオートパイロットですが、気付かれるまで時間がありませんよ!」「せーのっ…」
スミスははっとした。ハッチまで歩いて行く。ばさ、と髪が前に引っ張られた。
「…おでましよ」
斜めになっていた米軍の戦闘機が2台、すっ、と左右に別れる。
「ああ…」スミスは顔に手をかざした。
ドアが開くと、左右から同じ銃口が出てくる。
「ほ、ほんとに…」風見はごく、と唾を飲んだ。
「狙撃許可を」
「えっ?」と赤井の耳に向こうの戦闘機からのスナイパーの声が聞こえる。
「赤井さん、箱が飛行機から落ちたら狙撃のはずですよね…」
ザッ、と耳が鳴る。「許可」「えっ!?飛行機が落ちる可能性があります!」
「そうじゃないーー」赤井は引き金に指をかけた。
「やあ【ニトロ】……」
これは挨拶だーー
ふぅっ!と息を吐く。
「んっ……!」とスミスは顔をそむけた。からん、という薬莢の音がして、男2人は「スミス!」と物凄い風の中立つ彼女を見る。
スミスは自分の頬をかすっていった弾で流れてくる血をす、と撫で、にや…と笑って見せた。
「左側に」とスミスは薬莢をハンカチで拾い、がりっ…と噛んで見せた。「なに!?」「いるわ」顎でやって、ぽいと薬莢を後ろに放る。
「早く!」
「うっ」男2人は箱を背中に押していく。「いくぞ」「はい」「3…2…」
1!でハッチから離れた箱を3人は見下ろす。
ぱぁんっ!と歯切れのいい音がしてその粉は空中に舞った。
段々と戦闘機は下がっていく。
「…ずらかるわよ!」
「ああ!」
2人はパラシュートに走るが。「風見!」「…あっ」はっとした風見が顔を上げる。
「おい!」「そこで何してる!」
SPらが銃口を向ける。「くっ…」スミスが銃口を向けた瞬間、すべての銃口が彼女に向いた。
「やめろーー!」風見が立ち上がって手を伸ばす。
ダメーー!スミスははっとした。「動くな!」パァン!と発砲された音で降谷もスミスも風見に向かって走り出す。
届いてーー!
「あ…っーー…」
肩を撃たれた風見が、手を伸ばしたまま視界から消えていく。
降谷が風見に飛びかかったのと、スミスがハッチの入り口部分を撃ち落としたのは同時だった。
外れたハッチに向かってスミスも飛び出す。
「ああああっ!」ぐるぐるっ!と風でまわるハッチで、「まずい!風見!」「気絶してるだけよ!」「んっ!」と2人は同時に足に力を入れてハッチを水平にする。
「このままじゃ……!」
「パラシュートもない、あるのは」こん、とハッチを鳴らす。
「これじゃ落下したら全員粉々だ!」
迫ってくる地面に、スミスは降谷を見る。
「ねぇ、零」
「あぁ!?」と降谷は地面とスミスを交互に見る。
「あなた、あの日言ったでしょ」
世界が終わるときはどうしていたい?
決まってるだろーー君と……
「…!」
スミスは風見の頬を撫でる。「ありがと…だんな様」
「くそっーー!」
「彼、気絶してるから大丈夫…痛くないし、何もわからないから…」
スミスは降谷の頬に両手をやる。降谷も同じようにする。
決まってるだろーー君とキスする。
「怖い?」
「…怖いさ。でも、それでいい」
君が
あなたが
いるから……
2人はそのまま顔を傾け合う。
「…ん」
2人は上を見上げた。「あれは米軍の…」
ドアが開き、2人ははっとした。赤井が思いきり下に何か投げてくる。
「え?」
「まさかーー」
どっ、と降谷が胸元に受け取ったのはパラシュートだった。
スミスは上に舞う髪をよける。
「なんで…」
ドアを閉めるその冷たい目を見ながら、スミスはすべて見えていた。
お前は【兵器】だーーニトロ…
使うまでは……生きろ……
「スミス!」という声にはっとする。「風見が起きていればっ!」と未だ動かない彼を見る。「僕の重心がずれたらずれただけ着地がうまくいかない!」降谷はパラシュートを背負う。
「でもやるしかないわ!」
「あぁーー全員で全身骨折するしかないな!」
うっ、とスミスは風見を抱く。
「零!」
離さないで!スミスはそのままどっと背を預けた。
「ああーー!」と降谷は2人に腕をまわす。「死んでも離さないーー!」
2人は一瞬屈んで勢いよくハッチを蹴る。
バサッ!と広がったパラシュートで下がっていく地面で、粉々になったハッチの入り口を見た。
「まずい!」迫ってくる林に、頭が当たるほど全員で近づいた。
木々の中を通るのが、からだを引っ掛かる枝の痛みでわかる。
「あああああっ!」
鳥が一斉に飛んで行く音がする。
「は…」全身が心臓になったようだった。木々の間に、3人はぶらさがっている。
「ああっ!」と降谷はようやく息をした。「ふざけやがって!」「あはっ…」
風見は声と痛みで目を開けた。
「え?」
目の前に降谷とスミスの顔があってぎょっとした。
「わあっ!なんーー」
「ちょっと動かな……」
「あっ!」
全員でどさり、と風見を間に落ちる。
ひらひら、と葉っぱが落ちてくる。
草のにおいがした。
「あの…」と風見が空を見たまま言う。「なんの冗談ですか……これ」
降谷とスミスは風見の肩で目を合わせる。「ふっ…」2人はやがて笑いだす。
「あはっ、はは…はははは!」
「風見…!はははは…」
「はあ?」
起き上がり、2人は驚いて言葉を無くす。
スミスが泣いていた。「こわかっ…」震えている手を見て、スミスはさらに涙を溢す。
「今まで…死ぬのは怖くなかった」
「スミス」
「でもあなたたちを失うと思ったら!」スミスは叫んだ。
「怖くなった……」
「そりゃそうさ」降谷は当たり前だろ、と言わんばかりに言う。
「きみは、人間なんだからな……」
「風見」とスミスは泣き濡れた顔で言うので、本人は肩を押さえていたが「やめーーわあっ!」遅かった。飛び付かれて、頭に響く女の泣き声をこれでもかとあげられるから。
コメント
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うわあ、今回もすごかった…!貨物庫での極限状況、風見が撃たれて落下するシーンは本当にヒヤッとした。でも最後の「君は人間なんだからな」って降谷の言葉が、今までのスミスの“兵器”としての立ち位置を大きく変えてる感じがして、すごく温かくてグッときたよ。あと、赤井がパラシュート投げてくれたのも、彼なりの距離感での救いの手なんだろうね…。続きが気になる!