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――目が覚めると、深夜だった。


「……うわぁ。睡眠時間、めちゃくちゃだぁ……」


ベッドの中で、思わずぼやく。

確か昨晩……いや、今も夜の時間なんだけど、夕飯を食べたあとは早々に寝てしまったんだっけ。


昨日は早朝から色々あったし、そのあとは錬金術師ギルドと白兎堂をまわったし……。

いつもならそれくらいは平気だけど、やっぱりまだまだ本調子ではないということかな。


また眠ろうと頑張ってはみたものの、どうにも眠れそうになかったので、しばらく起きていることにした。

何かをしていれば、また眠くなるかもしれないからね。


……さて、何をしようかと考えてみれば、まぁ錬金術くらいしかすることは無いわけで。

でも生活が落ち着いてきたのであれば、そろそろ何か趣味を持っても良いかもしれないなぁ。


テレーゼさんは彫金が趣味だし、そういうものにしても良いかも?

一応錬金術で指輪とかも作れるけど、デザインがお察し状態だからね。


好きなデザインを彫金で作って、好きな効果を錬金術で付ける。

……あれ、錬金術に戻っちゃった? ……どうにも錬金術ばかりに偏るのはよろしくないなぁ。


エミリアさんの場合は、伝承とかを調べるのが好きなんだよね。

確かミラエルツでそんなことを聞いた気がするし、普段お話をしている中でも、そういった知識がちらほら出てくるし。


ルークの趣味は……何だろう。剣術とか? 根が真面目だし、それもあり得そう。

ジェラードの趣味は……ナンパなんだろうなぁ。

ちなみにアドルフさんの趣味は、お酒とかかな? ただのイメージだけど。


「……ま、それはそれとして。

そういえば作らなきゃいけないものがあったっけ」


それは、グランベル公爵の欲しがっているもの……大規模な魔導器に使うという、高品質の触媒。

ジェラードが集めてくれた素材を見てみると、魔導石やら水晶やら、鉱物関係が多かった。


一緒に入っていたレシピ……作り方のメモを確認すると、どうやら『増幅石』というものを4属性分、それぞれ1個ずつ作れば良いらしい。


増幅石……。

うーん? 初耳だけど、とりあえず作ってみよう。


はい、れんきーんっ。


バチッ


私の手の上には、赤色の透明な水晶が現れた。

こう見るとただのガラス玉にも見えるけど……とりあえず、かんてーっ


──────────────────

【火の増幅石(S+級)】

火の力を増幅させる結晶体。高度な製造で使用する

※追加効果:増幅量×2.0

──────────────────


……これで良いのかな?

ちょっと使い方は想像できないけど、魔法の威力を上げる感じの魔導器……とか?


――ま、それはさておき、これをあと3つだね。


バチッ


バチッ


バチッ


――はい、完成♪


他の3つも鑑定したけど、『火の増幅石』と同じ結果だったので、詳しくは割愛……っと。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――さて。まだ眠くは無いわけで」


何度かベッドには入ってみるものの、やはり寝付くことはできなかった。

錬金術師ギルドで受けた依頼をこなしたり、これからお店をどうするのかを考えたり、そういったこともやらなければいけないんだけど――


……でも、今やることかなぁ。


そう思ってしまうと、途端にやる気が失せてしまう。

何せ、時間としては深夜なのだ。そんな時間帯であることを考えると、どうにもやる気が出てこない。


もう少し軽いこと、例えば趣味とか……って、それを言い始めると話が最初に戻ってしまうか。

それ以外だと、例えば何か読む本でもあれば良いんだけど――


「……ああ。

そういえば書斎に本はあるよね、一応……」


今朝に何回か眺めて、結局何の興味も引かれなかった大量の本たち。

でも逆に、それを読んでいれば眠気が起きてくるかもしれない?


それならそれで、つまらない本ながらも役に立つということだ。

まぁ暇だし、ちょっと行ってみようかな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




書斎に行くと、いつもの貫録のある内装が月の光に照らされて、何とも不思議な雰囲気を漂わせていた。


「うーん、やっぱり月明かりは良いね。心にくるというか……」


そうは思いながらも、月明かりだけではよく見えないので、無慈悲に明かりをつける。

不思議な空気は一瞬で消えて、いつもの日常の空気が戻ってきた。


――それじゃ、何か読めそうなものを探してみようかな。


そう思いながらパラパラと何冊かの本をめくってみるも、やはり興味が出てこない。

興味が出てこないというのはつまり、部屋に持っていって眠気が出るまで読む……とすら思わせないレベルだ。


せめてこう、少しでも興味ある単語が見つかれば……といった感じで、徐々にハードルを下げていく。

しかし良い本は見つからない。


「……よし。ここは根性で、左上から順番に全部見ていこう!」


朝になるまで、時間はかなりある。

それまでに眠気が来れば良し、眠気が来なければ時間を潰すことができるから良し。


途中で興味のできた本があれば、それを部屋に持ち帰って読んで……そのうち眠気が来るだろうからそれも良し、だ。


……うん、完璧な計画だ! とっても無駄が多いけど!

でも、そうと決まれば早速取り掛かろう。今は深夜のテンションに身を任せるのだ!



「――ん?」


本をパラパラめくりながら、早や1時間。

とある1冊の本に目が留まった。


いや、目が留まったというか――


「この手法は、昔どこかで見た気がする……」


……その本は、中の紙の部分がくり抜かれており、そこに小さな金属の箱が収められていた。

箱を手に取り軽く振ってみると、何かが箱の内側に当たる音が聞こえてくる。


「んん? 何、これ?」


よく見ると、その箱にはとても小さな鍵穴があった。

ふむ、これに合う鍵が無いと開けられないのか――


……っていうことも無いんだけどね!


ひとまずその箱をアイテムボックスに入れて、そしてそのまま……れんきんちかんっ!


バチッ


私の手の上には、箱の一部を脆い炭に置換させた箱が現れた。

ふふふ、こういう使い方もできるのだよ。


というわけで、早速オープンっ!!


苦もなく箱を開けて、期待をしながら中を覗いてみると、そこには――


「……鍵?」


鍵が、1つだけ入っていた。


「むむむ……。

鍵を使って開ける箱の中に、まさか鍵が入っていたとは……」


何とも複雑な心境である。

でも、どこの鍵だろう? この部屋の中では、これに合う鍵穴なんて見掛けたことは無いけど――


「……ふわぁ」


気が抜けた途端、眠気が襲ってきた。

外を見れば、まだまだ暗い。今から眠れば十分な睡眠を取ることができるだろう。


「よし、今日は寝よう……。

何だかよく分からない鍵も手に入れたし……」


……それにしても、何であんな本があったんだろう?

ピエールさんが搬入してきたものならおかしい気がするけど、もしかして元々ここにあった本なのかな?


そうだとすると、このお屋敷の昔の主が隠しておいたもの?

でもそんなにしてまで隠すものを、このお屋敷に残したまま、いなくなっちゃうかなぁ……。



いくつもの疑問は残るものの、ひとまず私は目先の睡眠にやられることにした。


……うん。

ねーむーいー。

異世界冒険録~神器のアルケミスト~

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