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『杏』の閉店後、2人きりになり、私はあんこさんに相談にのってほしいとお願いした。
「もちろん! でもまずは、なんか食べへん? めっちゃお腹空いた~」
「出ましたね、あんこさんの関西弁」
私、生まれが関西ってわけじゃないのに、なぜかこの関西弁にホッとしてしまう。
「ほんま、めっちゃ疲れた。やっぱり年には勝たれへんな。38歳のおばさんにはちょっとしんどいわ~たまには休まなあかんな」
「確かに、働き過ぎはダメですけど……でも、あんこさんがおばさんだなんて絶対ないですよ! すごく素敵な女性ですから、佐久間 杏子さんは」
「ありがとう、雫ちゃん。その名前、たまに忘れそうになるわ。私の名前、きょうこ……やったんやな」
そう言って笑った。
その顔は、疲れを感じさせない程にとても綺麗だ。
毎日毎日がむしゃらに働くあんこさん。
いつも「疲れた」とかってあんまり言わないから、本当にかなり疲れが溜まってるんだろうと思う。
「すみません。相談、また今度にしましょうか?」
私は申し訳なく思った。
「何言ってるの、ダメダメ。相談したいことは、1秒でも早くした方がいいんだから。私なら大丈夫。優しい雫ちゃんの顔みたら、ちょっと弱音吐きたくなっちゃっただけ。ごめんね」
関西弁、もう終わった。
ちょっと残念。
「そんな……あんこさん、それは弱音じゃないですよ。本当に、いっつも頑張っててすごいって尊敬してます。あ、じゃあ私、何か作りますね」
「ありがとう~雫ちゃんみたいな優しい人がうちにいてくれて本当に有難いわ」
私はあんこさんにテーブルに座っててもらって、パスタを作って飲み物と一緒に出した。
「お待たせしました。あんこさんはアイスコーヒー。私は……」
「ロイヤルミルクティーでしょ?」
私の好みはみんなに知られてる。
「やっぱりこれがいいんですよね。いただきます」
私もテーブルについて、2人で食べ始めた。
サッとパスタを完食し、飲み物だけになってから、いよいよ相談がスタートした。
あんこさんも真剣モードに入ってる。
ちょっとドキドキするな、何から話そう?
「あの……」
声が乾いてる。
ミルクティーを1口。
喉を潤して、また話し始める。
「私、前に思いっきりフラレたじゃないですか……あの時、あんこさん達に励ましてもらって、何とか立ち直れました」
「……うん」
「あれから、自分の中で恋愛なんてしないって決めてしまってて。でも、やっぱりそれじゃダメだって思えて。今まで特に気になる人や好きになる人もいなかったんです、本当に。だけど、最近、気になる人が2人いて……」
「気になる人……?」
「はい……」
「当ててみようか?」