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「え?」
「1人は榊社長。もう1人は、果穂ちゃんと同じ大学に通う学生さんね」
どうして? 榊社長はまだしも、希良君のことはあんこさんは知らないはずじゃ……
あっ、もしかして……
「果穂ちゃんに聞いたんですか?」
うなづくあんこさん。
やっぱり。
「イケメン大学生の男の子が雫さんに会いにきたって、付き合ってないみたいですけど怪しいですって」
私達は、顔を見合わせて少し笑った。
苦笑いというべきか。
「本当に人のことを話すのが好きですね、果穂ちゃん」
もちろん、あんこさんにならいいんだけど、他の人にはあまり言ってほしくないな。
「結局、そのイケメン大学生とは付き合ってないの?」
「はい。でも、最近、2人で遊びにいって……思いがけず告白してくれて」
「えー! 嘘~すごいやん! あ、ごめん。ふざけてるわけじゃないからね」
「もちろん、わかってますよ。驚いた時に出る関西弁。私はあんこさんのそういうとこ大好きですから。いっその事、ずっとそのままでもいいと思いますよ」
「あはは。さすがに都会で関西弁はヤバいでしょ? でも、たまに出るのは許してね。それで、その子の告白はどうしたの? 付き合ってないってことは、断ったってこと?」
私は、あんこさんの質問にうなづいて答えた。
「自分の気持ちが全然はっきりしなくて、変に焦って間違った答えを出してしまったらダメかなって。でも、やっぱり、こんな嬉しいことも最近全然なかったし、一緒にいて楽しかったし、告白されてドキドキもしたし……でも、好きなのか? って言われたら……」
思いが一気に溢れて口から飛び出した。
「あれからずいぶん経ったよね。雫ちゃん、仕事もだけど、いろいろ頑張ったと思うよ。あの時、本当に……つらかったもんね。最初は可哀想で見てられなかったよ」
今でも思い出すと悲しくなる。
でも、もうあのことでは絶対に泣きたくはなかった。
「本当にあの時はありがとうございました」
「ううん、そんなことは当たり前のことだから。ずっと何もなかったっていうのは……たぶん、雫ちゃんが周りのことをわざと気にしないようにしてただけで……本当はいろいろ出会いもあったと、私は思うよ」
「えっ?」
「その大学生……えと……」
「あ、渡辺 希良君って言います」
「その希良君や榊社長のことを意識し出したっていうのは、雫ちゃんがそろそろ自分の中で恋愛したいって、ちゃんと向き合えてるからじゃない?」
「そうなんですかね……」
「だからさ、頑張って恋愛しなきゃ……じゃなくて、自然でいいんじゃないかな? あんまり窮屈に考えないで、焦らずゆっくり感じるままに。人を好きになるって本当に素敵なことだから」
「あんこさん、ありがとうございます。私、向き合えてるのかな……」
「大丈夫、大丈夫。雫ちゃん、本当にいい女なんだから自信持って」
「そんな、私は、いい女なんかじゃないです」
あんこさんは、女の私が見ても色気があって、美人で、素敵な大人の女性。
そんな人に「いい女」なんて言われても……
「またそんなこと言って。榊社長、あの人がパンの配達を他の誰でもない雫ちゃんに頼んだんだよ。それってすごいことじゃない」
「……実は、榊社長にいろいろ言われてて、それも本気なのか、からかわれてるのか、全然わからなくて」
「ん? 何を言われたの?」
「あの、えっと……」