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体調不良の吉田さんをとびきり甘やかす佐野さんのお話
『しぬ』
仕事終わり、2時間前に入った仁人からのメッセージ。
詳細は書かれていないが、恐らく体調不良だろう。
もともと免疫が弱いからか、よく原因不明の体調不良に襲われて1日寝込んでいる。
『ごめん今終わった。すぐ帰るけどなんか欲しいものある?』
既読はすぐに着いたが、返信が無い。
多分相当苦しんでいる。
早く帰りたいところではあるが、その前にスーパーで暖かいスープと甘いものを買って帰る。
薬は前に見た時にあったから大丈夫だろう。
ガサガサとビニール袋の音を立ててマンションの廊下を走る。
鍵を開けてリビングへ行けば、ソファの上で毛布にくるまっている仁人がいた。
『ただいま仁人』
『遅い……』
そう言ってのそのそと起き上がる。
寝てて欲しいけど、せっかく起き上がってくれたので横に座ってそっと抱きしめる。
『あったか…』
『俺は寒い』
仁人の体温を感じていると鼻をすすりながら文句を言われた。俺は急いで買ってきた袋の中からスープを取り出す。
『食べる?』
『うぅん………』
どっちだ。
でも、仁人は食べたい時は食べたいとはっきり言うのであんまり気分じゃないのだろう。
それなら甘いものはどうだ。
『これは?』
『…たべる……』
ほら見ろ。かわいい。
俺は立ち上がってキッチンからお皿とフォークを取り出し、その小さいケーキをお皿に移す。
どーぞ、と渡せば不満そうにこちらを見てくる。なぜ不満なのか、どうして欲しいのかは見ればすぐに分かる。
ちょっとこのままにして、自分から言わせるのもありだが、しんどそうな仁人にそんなことはしたくないのでご希望のままにあーんをしてあげる。
少し大きかったようで頬にはクリームが着いている。かわいい。
俺は人差し指でそのクリームを取り、自分の口へと運ぶ。あ、おいしいなこれ。
食べ終わったあとのカトラリーと、散らばっていたゴミを片付けて、もう一度仁人の横に座る。
その間にまた毛布にくるまっていた仁人だが、俺が隣に来た瞬間、頭を上げて俺の膝の上に移動する。
しんどい仁人には申し訳ないが、こうなっている時の仁人はいつもとはまた違った可愛さがあって好きだ。
毛布にくるまってまるっとしている姿、髪もメイクも整えていない寝起きのような状態、温まった体温。
かわいくて頭を撫でていたら「しつこい」と小さな声で文句を言われた。
それでも俺は辞めないし、仁人もそれ以上何も言わなかった。
「寒いって言ってたっけ?風邪ではない?」
「36.6」
「平熱か」
「…しぬ…」
「薬は?」
「……」
あ、寝たふり。こんな分かりやすい狸寝入りなかなか見ないけどな。
「だから治らないんだよ、ほら、取ってきてあげるから飲んで」
「…や」
「やじゃない」
「…苦い」
「でも飲んで」
取り出して渡しても飲む素振りを見せない仁人。小さく首を振っていやいや言っている。子供か。
取り出した手前、飲まないわけにもいかないので、俺はその薬を口に含み、仁人の口へと移す。
「…ん」
同様に水も移してやれば簡単に飲んだ。
「……苦い」
「でも飲んだね、えらいね」
「…うん」
苦そうだが、満足そうに目を細め、毛布を深く被ってそのまま寝息を立てていた。
…苦いな。
一瞬口に含んだだけだが、その苦味が若干口に残る。仁人が飲むのを拒むのも納得だ。
なにか別の物で紛らわそうとキッチンへ向かおうとする。
すると寝そべったまま腰をぎゅっとホールドされる。
行くなってこと? かわいいなほんと。
その姿を見たら苦味なんてどこかへ行ってしまった。
作業もせず、携帯も見ず、ただそのままずっと仁人を撫でながら、膝の上のお姫様の可愛さを噛み締める。
元気な仁人が好きだけど、ずっとこのまま甘えてくれてもいいんだよ、なんて願いながら俺もいつのまにか眠りについていた。
コメント
1件
可愛過ぎて口角あがりっぱなしです 素敵なお話ありがとうございました