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約束のスノードーム

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約束のスノードーム

14 - 第13話 約束のスノードーム

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2025年02月27日

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あの眩しくて熱く胸に広がる恍惚感はじっくりと味わうことができなかった


時間とは無情であり残酷で、止まって欲しいと思えば思うほど早く過ぎ去っていってしまう

しかし時間自体は先に急ぐ事もなければ後に名残惜しく待つものでもない。

そうであるのなら残酷なのはたったひと時の甘い蜜に縋る人間だとされるのだろうか


つい最近まで夏が名残惜しくも秋の風を感じていたのにもうすっかり町は紅や朱に黄色など暖かな衣で彩られている





…………………………………………………*

10月4日


畑作業をしているらっだぁを縁側で見つめながらこうしてゆったりと日記を書くのもエモくて好きだ。

引っ越してきてから約5ヶ月、余命宣告をされてから8ヶ月が過ぎた。 体はいつも通りで異変もなければむしろ元気すぎるくらい?

らっだぁは病院に通いつつも勉強を継続していて本当に尊敬しかない、でも以前みたいに切羽詰まった感じじゃなくてこうやって畑仕事もこなすしそれなりの愛情表現もある

最近の楽しみは町の絶景探しに二人で散歩をすること

落ち葉で遊んだり、きのこを見つけてはしゃいだり、たまに早起きして朝日を見にいったり。

そういう小さな発見と細かな彼の表情がどうしても好きだ、大好きだ


…………………………………………………*

〈peint side〉


毎日が充実してて、楽しくて、嬉しくて、愛おしくて。でもそれが怖くなった

だって映画とかだとよくある事でしょ?いいことがあった次は決まって良くないことが起きるんだ


夜が長居しても月明かりが眩しく町を照らす。そんな月をただぼーっと眺めては不安を消化しようとしていた

すると後ろから重い体がのしかかってくる



rd 「なにぼーっとしてんの」


pn 「いや、ただ月見てただけ。 今日の月めっちゃ綺麗だよ」


rd 「それって告白らしいね」


pn 「あー、あなたを愛してますってやつね 」


rd 「ぺんちゃんは素直じゃないね」


pn 「え、そういう意味で言ったんじゃないよ?」


rd 「またまたそんなー」






pn 「なんか不安なんだよね最近」



しばらく沈黙が続いてなんだか気まずくて彼の顔を見ることができなかった



rd 「、、そっかぁ」



それだけ言って隣に静かに座っては俺の手を優しく握ってくれた

彼のそういう優しさに触れると不思議と不安に思ってたことがぽろぽろと口から漏れる



pn 「余命宣告の半年から2ヶ月も長生きできて体調も変わらないのに、幸せなのにずっと不安なんだ」


pn 「なにが不安なのかとかよくわかんないけど」


rd 「死ぬのが怖い?」



、、、、


、、、、、、、。


、、、あぁそっか


この不安は余命の半年が過ぎてからずっとだ

毎朝目を覚まして隣で寝てる彼の姿を見ると安堵する。今日も生きてるって

寝る前におやすみって、また明日って言ってくれる彼の声を聞いて一人で考えるんだ

明日がある、俺には明日が待ってるんだって


そうやって毎日確認して明日を夢見て過ごしているんだ



rd 「ぺいんと、目瞑って手出して」


pn 「え、急に?、、、はい」



ん、何これ。 軽いけど硬くて丸い?



rd 「開けていいよ」



目に映ったのはキラキラと輝きながら舞う雪と俺たちが住む古民家、そばにはそこに暮らす俺たちの姿が小さな球の中にあった



rd 「もうすぐ誕生日だから」


rd 「この景色二人で見ようね。約束だよ」



それはまるで儚いひと時を永遠に閉じ込めておくためのような、俺を繋ぎ止めてくれているようなスノードーム

らっだぁと俺の約束のスノードーム。



pn 「ありがとう」



贅沢な豪邸に住むだとか、好きなものだけを食べて過ごしたいだとか、充実した日々を過ごしていくとかそんな人生を彩るための願いじゃなくて


ただ彼のそばで生きたい。


これは俺にとっての最低限の愛情で、最上級のわがままだ


…………………………………………………*

〈radao side〉


ーーー死ぬのが怖い?


自分で言っておきながらも甚だ馬鹿らしいことを口にしたと思った。

だって当たり前じゃないか、死ぬことが怖くないなんてこの若さで言われてしまった方が困る


でももっと困ったのは俺がぺいんとを手放すことができないということ。

手放したくない、そばにいて欲しい、先に逝かないでほしい

でもそんなの伝えたら彼をより苦しめることになってしまうだろうから言わないし、言えない





冬は俺にとって特別なものだった。


春も夏も秋も、ひとりでいても別に寂しいとは感じない。

風が草木をくすぐって姿を見せるから

動物たちが息をしているのを感じれるから

日差しの暖かさと体温が交わっても熱くなるばかりだから

でも冬は木は葉が元に戻るのを静かに眠って待つし、動物たちは呼吸音すらも隠してしまうし、日差しを浴びても体温は冷えていくばかりで取り残されたように思えてくるから


そんな気持ちを彼が一人で抱えないように、俺が隣にいるって、少しロマンチックに二人だけの世界をこのスノードームに封じ込めたんだ


あの時、君がそばにいてくれたように


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