コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰のことを話しているのか分からなかった。あの、泣き虫だけど、誰かのために涙を流すほど優しくて、笑顔が天使のようなあの子は、もう、いないのだろうか…
会いたいと願っていた______彼女には、志乃には、会えない…?
目が覚めたら昨日引っ越してきた新しい僕の部屋だった。
身体を起こして、外を見る。外はもう真っ暗だった。スマホの電源を入れて今の時間を確認する。
もう日にちが変わっていて、夜中の二時だ。
学校の出来事を思い出して、胸が張り裂けそうになる。
「ヅ…」
我慢していた涙がとうとう星の目から静かにこぼれ落ちていく、大切な人を失った悲しみが僕の中を支配していく。今にも張り裂けそうな胸を抑えて、もがいて、もがいて、大声を上げながら泣いた。
僕は、昔、この町で交通事故に巻き込まれて生死をさまよった。
この町じゃ充分な治療が受けられないと判断した親は、僕を連れて東京のでかい病院に連れて行った。
十歳の頃に交通事故に巻き込まれて、十五になった誕生日の後日に目を覚ましたのだ。
それまでずっと眠っていた。眠り続けていた。
起きた後も何があったのか、なんで自分は病院のベッドの上に寝ているのか。混乱状態だった。
僕は、生まれてから、交通事故に合うまでの今までの記憶を無くしてしまった____。
自分は誰なのか、ここはどこなのか、目の前で涙を流しているこの人達はいったい誰なのか。なにも、なにも思い出せなかった。
僕のために泣いてくれているこの人たちのことを思い出してあげたい、必死に頑張った。
昔の写真も見たし、色んな人に会った。
だけど、記憶が戻ることはなかった。
ただ、わかったのは自分が “一条星” と言う名前だけだった。
入院している時はただただ苦痛の日々だった。
退院前日に親から話があると告げられ、午後は中庭にもリハビリにも行かないで病室で待っていた。親が病室に入ってきた時は驚いてしまった。
親に驚いたのではない。親の後ろから一緒に入ってきた息を呑むほど綺麗なはくはつの美少女が一緒だったことに驚いた。
その少女を見た途端頭に痛みが走った。そのまま倒れ込むように寝てしまった。
僕が起きた頃にはもう夕方だった。
横にはさっきの少女が座ってこちらを見ていた。
思わず自分の気持ちから「し、の?…」気づいたらその名前を呼んでいた。
僕が言った言葉に驚いたようにどこかへ走って行って親を連れてきてくれた。
その時から僕は自分の力で一部の記憶を思い出せた。
そう、幼なじみの市ノ羽志乃のことを思い出したのだ。泣き虫で、誰よりも優しくて、僕の初恋の相手。生まれつきの白い髪というので気味が悪いと、呪われた悪魔だと言われ、親に捨てられた志乃。
でも僕はその髪が悪魔だとは思わない、むしろ、天使だ。太陽の下を歩くとその髪が反射して光る綺麗な志乃の髪、それはまるで天使そのものだと思った。
志乃は、神の祝福を受けた子なんだよ。と昔志乃に言ったことがあった。その時の志乃も、今のように綺麗な瞳から大粒の涙を流しながら泣いていた。
いつも志乃が泣くのは誰かのためだった。だからか、志乃の周りには自然と人が集まっていた。
志乃は人に愛されるために生まれてきたんだなと勝手ながらに思っていた。