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第7話:助け船
涼架side
若井くんに素っ気なく断られたショックで、私は楽器店の前で肩を落としていた。
頭の中で彼の「…なんで?」という声が何度を反響する。
綾華が私の肩を抱き、心配そうな顔をしている。
「涼架、大丈夫だよ。若井くん、絶対迷惑なんて思ってないから」
綾華の優しい言葉に、私は顔を上げずに頷いた。
「でも…あんな態度、初めてだよ。やっぱり、私、ダメなんだ。」
「違うって!ねぇ、涼架、ちょっと聞いて!」
綾華は、私の体を揺さぶり、無理やり顔を上げさせた。
「あのね、あれはね、若井くんが照れてただけ!急に涼架みたいな可愛い子に二人きりで誘われたら、あの不器用な『狼』くんは、どうしたらいいか分かんなくなっちゃうんだよ!」
「照れてた…?」
「そう!元貴くんが言ってたでしょ?若井くんは不器用なだけだって!だからさ、私は考えた!」
綾華は、パッと明るい笑顔になった。その表情は、まるで新しい作戦ボードを描き終えた監督のようだ。
「いきなり二人っていうのが、若井くんにはハードルが高すぎたんだよ。だったら、どうすればいいか?」
「え…どうすればいいの?」
「四人で行くんだよ、夏祭り!」
綾華の言葉に、私は理解が追いつかない。
「よ、四人って…誰と?」
「私と元貴くん、それと涼架と若井くんの四人!元貴くんが一緒なら、若井くんも安心できるでしょ?それに、私たち二人がいれば、若井くんの不器用さが爆発しても、全部フォローできるし!」
突拍子もない提案だったが、綾華の自信満々な様子に、私は少しずつ希望を見出し始めた。
「でも…大森くんまで巻き込むのは、悪いよ…」
「いいのいいの!元貴くん、涼架のこと、めちゃくちゃ気にかけてたし!それに、元貴くんは若井くんの唯一の親友なんだから、親友の幸せのために一肌脱いでくれるよ!」
綾華はそう言うと、スマホを取り出した。
「え、今から大森くんに連絡するの!?」
「当たり前じゃん!鉄は熱いうちに打て!……もしもし、元貴くん?うん、あのね、涼架と若井くんのことで、超緊急で、四人での夏祭り計画を立てたいんだけど…」
綾華は、電話越しに大森くんに、若井くんの素っ気ない態度と、四人での夏祭りへの参加を熱烈に交渉し始めた。
私はただ、その様子を息を飲んで見つめるしかなかった。
数分後、綾華は満面の笑みで電話を終えた。
「はい、交渉成立!元貴くん、快くOKしてくれたよ!『若井の不器用さは俺の責任だ、全力で協力する』って、また変な男気を見せてくれた!」
「そ、そんな…本当に大丈夫かな…」
「大丈夫!元貴くんが若井くんを説得してくれるから!これで二人きりのプレッシャーはゼロだよ!涼架は、夏祭りに着ていく浴衣のことだけ考えとけばいいの!」
綾華の強引で、でも温かい優しさに、私の胸は満たされた。
私は、若井くんに断られたことで、私の「花」は枯れてしまうかと思ったけど、綾華の「友情」という水のおかげで、また生き返ることができた。
「ありがとう、綾華。私、頑張るよ」
「よし!それが聞きたかった!この夏は、絶対に涼架を『花』にして見せるから!」
綾華は胸に手を当て、誇らしげにしていた。
次回予告
[親友からの誘い]
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コメント
3件
綾華ちゃん天才かよ!? 夏祭りでこうなるのかな…? と予想するのもまた楽しい…
綾ちゃん!ナイスすぎる!
あやちゃんナイス!夏祭り楽しみ〜!