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昼下がりの教室は、
ざわざわとした空気に包まれていた。
黒板には
「体育祭 団体種目 リーダー決め」
と、大きく書かれた文字を前に学級委員が言った。
海琴「それじゃあ、まずハリケーンのリーダを
男女1人ずつ決めます。」
クラス中の視線が宙に浮き、
誰も口を開こうとしない。
面倒事は避けたいー…… そんな空気が 重たく漂う
影役「田仲やればー?笑」
修哉「はぁ?なんで俺やねん笑笑」
笑い混じりの 押し付け合いがはじまる。
だけど 誰1人、前に出ようとはしなかった。
「じゃあ俺やるわ。」
静かな空気を断ち切るように、
隣席から男の子の声がクラス中に響いた。
彼は友達に背中を押されるでもなく、
苦笑いしながら言った。
一舞「誰もやらへんなら 俺すんで?」
その明るさに、教室の空気が 少し和んだ。
海琴「じゃあ 男子は一舞で決まり。」
再び 沈黙が訪れる。
女子達は顔を見合わせては そっと目を逸らした。
海琴「紫鶴ちゃん やってみいひん?リーダー」
紫鶴「えっ、いや 私は…」
不意に名前を呼ばれ、私の肩が小さく震えた。
戸惑って 俯いていると
クラスの視線が一斉に集まっていた。
紫鶴「わ、私は……」
断ろうとした声は 教室のざわめきにかき消された。
影役「いいんちゃう?どーせ誰もやらへんし」
影役「転校生やし、ちょうどいいやろー笑」
軽い調子の言葉が飛び交い、
逃げ道を塞いでいく。
紫鶴「はい、…やります。」
その返事に、教室は再び ざわめいて
不安混じりの声が 背中に突き刺さった。
そんな中 唯一柔らかいが届いた。
一舞「よろしくな」
男子リーダーとなった 隣席の彼が、
にこりと こちらを見ていた。
私は、少し戸惑いながらも微笑み返した_
放課後の教室は、
夕陽に照らされて 柔らかな橙色に 染まっていた。
他のクラスメイトたちはすでに帰路につき、
残っているのは机を前に 向かい合う私と一舞君だけ。
一舞「…でさ、まずはみんなで 足並みを
揃える練習から始めたほうがいいよな。」
一舞君はノートを広げ、簡単な図を書きながら言う。
ペン先が紙の上を走る音が、
静かな教室にやけに大きく響いた。
紫鶴「うん。最初から速さを意識すると、
きっとバラバラになるから」
一舞「おー、ちゃんと考えてるやん。」
彼が少し茶化すように笑うと
私は 少し視線を落とし、
唇に影のような笑みを浮かべた。
紫鶴「…でも」
紫鶴「みんなの輪に、うまく入れるかな。」
その言葉に、彼は少しだけ黙り込んでいた。
彼は何も言わず、不安そうな私を
ただ見つめているだけ。
一舞「大丈夫やで、俺もおるし。」
彼は優しく笑って 言った。
それは、お日様の明かりのように暖かった。
私はやがて、わずかに頬を染めて
紫鶴「うん…!」
と だけ答えた。
一舞「紫鶴って 足速いん?」
紫鶴「いや、全然だよ笑」
一舞「50m走何秒?」
紫鶴「8.11くらい……」
一舞「はっや笑 まぁ俺には敵わんけどなー」
紫鶴「いつか超えるから。」
一舞「どーやろな。」
教室の外では、虫の声が聞こえ始めていた。
静かな放課後に残された私達の影は、
並んでゆっくりと長く伸びていく。
名前の変更点などがございますので、
第1話のプロフィール一覧を もう一度ご覧下さい。