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電界 Λバレット
はあ、と溜め息が漏れた。三波春華は刺激のない毎日に辟易としていた。学生の朝は早い。6時半。制服に着替える。窓の外を見る。霞む心とは対照的に、頗る綺麗に晴れ渡っている空が限りなく続いていた。
留年することなく無事に進級できたが、これから2年間、やっていける自信が無かった。仲の良い友達は皆別クラスへ行った。それでいて、苦手に感じていた人は全員同じクラスに残った。始業式の後、誰とも話さなくなった。性格も塞ぎ込みがちになった。去年までの鮮やかな日々は見る見るうちに色褪せていった。
鞄を肩にかけて家を出る。徒歩通学。夏は熱波に曝され、冬は凩が襲ってくる。一番つまらない通学手段だ。小石に蹴躓いた。周りを見る。誰もいない細い道。蹴った石がコロコロ転がる音が聞こえた。そして右に逸れて枯れたみぞこに落ちた。今日もいい事はないだろうと思った。俯いて、再び歩き出す。
瞬間、爆音が空から聞こえた。けたたましく響き、何にも例えることの出来ない謎の音であった。春華はびっくりして空を見上げる。謎の飛行体が群を成して飛来してきているように見えた。戦闘機のようだが、何かが違う。その時は幻覚でも見ているのだと思った。そして花火の終わった後のような残響音が聞こえた。春華はキョロキョロと辺りを見回し、学校へ急いだ。
校門に着くやいなや、生徒が騒ついている。引き返してくる生徒も中にはいた。
「何あれ!?」
「ねえ、あれ見た!?」
どうやら幻覚では無かったらしい。横にホワイトボードが置いてあり、そこには手書きで「体育館に避難して!!」と書いてあった。春華は焦るより先に安っぽいSF映画にありそうな展開だなとただ淡々と感じていた。しかし、先生達が
「中に入ってください!」
と急かしてくる。何が起こっているのかさっぱりだったが、言われるがままに体育館へと走った。