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微量
「Broooockどこ行くの?」
「ん〜散歩?」
「え、俺も行く」
「いや、ちょっと…」
「は?」
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事故から人を助けて少しばかりの歓声が聞こえたのは嬉しかった。その時だけは優越感に浸っていた。…が。
助けた相手が女性でそれもまぁまぁ美人。しかし性格に難あり。
「とても、優しい方なのね。連絡先交換したいんだけど…私LINEやってなくて……」
なんて言われたしその時はいやな奴だと思われたくないし、優越感にひたひただったからかるい気持ちで交換した。それが間違いだったけど。
それから数日間。食事のお誘いがメールで来る。それも毎日、深夜に。気が狂いそうなほどには来る。断ったら鬼電が待ち受けているから結局自分が折れて面白くもない話しを聞きながら夜の暗い道を歩く。
「やぁ、」
「来てくれたのね…今日は私を愛してくれる?」
彼女の隠語でもあるこの言葉。
「今日はちょっと…なぁ、」
聞き飽きたのに
「……………いつもそうよね」
逃げたいのに
「ほんとに私を愛しているの?」
僕には到底無理そう
➵
最近Broooockの様子が変だと思っているのは俺だけではなく、Nakamuもきんときもスマイルまで変だと思っているようで、
でも明らかに前とは何か違う。
口数も減ったし、どっか遠くを見てたり、落ち着かなかったりするような感じがする。
なのでNakamuと観察することにした。
Nakamuならリーダーだし、一緒に騒げるやん?笑笑
それにしても静か。何もしないままずっとスマホ見てる。たまに歪んだ顔を見せる。深夜に1人で出かけていくのも見た。1人で外に行くのはワイテルズの中であんまいないし、Broooockなんか行こっていう方だったのに…。
「隠し事かな」
「まぁそうだろ」
「胸糞悪」
「悪い方じゃないといいけど」
___________
あぁうるさい…。
1回無視してからというもの電話が鳴り止まない。耳障りだと電源を切ればワイテルズとの連絡が取れなくなるし。どうしよもできないのが苦しい。助けてほしい。でも
僕が女性相手に怯えているなんて聞いたら皆はそんな奴なのか、なんて見下してくる。それが怖いから知られたくない。
深夜に撮影することも多くて皆の注目を浴びずに外に出ることができない。
完全なる昼夜逆転のような生活のせいで起きてる間は電話の音、寝るときも悪夢に魘され眠れなくなりストレスがたまる一方。
「今日の動画おっけ?」
「まぁいいんじゃん?」
「じゃこれでいいんじゃない?」
「ちょっと俺でかけてくるわ」
「……………どこに」
「えっ…と散歩」
「ふーん…」
出た瞬間、外の空気が嫌になる。これからまたあんな女のところに行って楽しくもない会話して…。
あぁなんか情けないな、ぼく。
いつからこんなに、なったっけ
➵➵➵➵
何を隠してるんだ?
なにも思い浮かばん…………
「なにめっちゃ考えるやん笑笑」
「いや流石におかしいでしょ…笑」
「あぁ…Broooock?」
「なんかずっとそわそわしてる感はある」
皆にこう思われてるのになんで何も言わないん?お前がそんなに悩む理由なんなんだ?
「あいつが何も言わないのが1番ムカつくわ笑」
↛↛↛↛↛↛↛↛
Broooockの顔が日に日にやつれている。
毎日会っていると細かい変化に気づきにくいけど、ずっと食事をしている所を見ないし、なんなら吐いてるときなら見たし、スマホを俺らの前で触らなくなったし、寝てないのか隈も見たこと無いくらい濃く刻まれてる。顔色も悪い…。とゆうかBroooock自体見なくなったなぁ。
部屋にいるだろうし、行ってみるか…
「Broooockー?」
「きりやん…?」
「入っていい?」
「うん」
「な、Broooock…?」
明かりがついてないから暗くね?なんて軽い言葉をかけて電気つけたら顔色が悪すぎる。表情が硬くて、ヘラヘラ笑っている。不気味に。
「ぼくこれからでかけるからすぐ済ましてほしいんだけど…」
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「やあ、」
「今日こそ愛してくれるわよね……?」
「今日も、ちょっと…」
「いつもそうよね」
あぁ…怒ってるな
雰囲気変わった…
なんかこんなことしてるならもういっその事死んだ方が楽なんじゃ……生きてるからこんな事に巻き込まれてるんじゃない
「あの仲間が原因なの?」
「あの友達がいなかったら私に集中してくれるの…?」
「それなら殺せばいい?あいつらを殺して、私と貴方が2人で、幸せに…!!!!!」
「違うから、手出さないで」
「無理よ…私は貴方としか幸せになれないの!!!そうしたのは貴方よ…助けてくれたじゃない………!!!!!」
「………もう帰りたいよ」
「私も準備しないと…♡」
あぁ…もう帰りたい…。
ほんとに殺されたらどうしよう。
涙がとめどなく溢れてアパートの玄関前でずっと右往左往したまま何もできない。自分のせいでワイテルズが殺されるかもしれない。自分のせいで。
こんなことを知ったら嫌われる、だろうな
お前のせいだ、って責め立てられてその上皆死んでしまう。
あぁ、もうなんで僕皆に会っちゃったんだろう。
あぁ、もう死にたいよ…。
誰か…殺してよ……
許して欲しい。心の底から謝るから。あわよくば、このままの関係でずっと馬鹿してたい。皆で笑ってたいけど……。
家の中に入りたくない。入れない…こんな情けない奴あんな空間にいられない。いては、いけないのに、欲してるのはなんでなの。
ずっとスマホが鳴っている。ずっと俺を呼んでいる。そこに載っている女の名前が自分の画面に写っている。その事実がまた自分の首を絞めている。もう事故を装って…死んでしまっても…。
「Broooock」
なんで
「どこいくの」
こんなときにNakamuの顔を見れてしまう?
「さんぽ?」
泣きたくなるから
「きりやんに聞いたよ。体調良くなさそうって」
「そっか…」
何も言わないで
「じゃあね」
「忘れ物あるんじゃない?」
あるわけ無いだろ。スマホと財布があれば今夜も………………
ポケットの震えがない。
電話がなっていないはずはない…。
「……」
やばい。
そっとNakamuの方を向くと手には俺のスマホ。
「さっきまで………」
焦る。Nakamuの手の中にある僕のスマホはずっと震えている。止まることを知らないようにずっと。Nakamuが名前を確認する。
「やめて…」
「Nakamu…」
嫌われたくない。こんな奴だと思われたくない…。友達やめたくない…。
もっと笑ってたい……。
泣き崩れる。情けないのはわかってるし、きもがられてももう…なんでもいいや…。
多大な迷惑をかけてしまった友達には関わらない方が相手のためであるはず。こんなやつが友達なんだったんだ、って皆がそう言われちゃう
「………ごめんなさい」
土下座して謝るから
「許さなくて、いいから…」
そのまま気を失った。
次に見えたのは暗闇。唯一見えるのは一筋の光…ではなく1人の女。
冷静になってみれば警察に行けばなんとかなったんじゃないか。
きりやんとか鍛えてるきんさんの力にあの女が勝てるとは思えない。
心配するほど弱くなかったのかな…?
死んだ、のは僕だけ…?
しんだのかどうかもよくわからないけど
前も後ろも右も左もわからない。どこをさがしても自分だけ。怖いなぁ…。
もっとNakamuの甘党エピソード聞きたかったし、きりやんとドライブも行ってみたかった。きんさんとももっと話したかったし、スマイルとももっと実写動画撮りたかった。
一人になると頭に浮かぶのはワイテルズのこと、メンバーとの思い出ばかりで、やっぱり涙があふれる。
まぁ別に僕居なくてもワイテルズやっていけるしな。Nakamuときりやんとか仲良いしさ。
そろそろ日を跨ぐ。
楽しかったな、
もうさよならだけど。
➵ ➵ ➵
「ぅ………」
「…………………クッソ」
変な夢見たな、アイツ起きたかな。
てかさよならってなに?なんで過去形で楽しかったなんだよ…。死んだらボケ枠どうすればいい?
6人いてワイテルズなんだろ。
Broooockがいなくなったらワイテルズは終わると思ってる。
あの日。Nakamuの眼の前で血を吐いて倒れたBroooock。その時は手も足も震えていて虚ろな目を閉じぬまま、ボソボソと何かいっていた。
それからずっと眠りっぱなし。起きたことなんか無い。望ましいあの瞳と目が合わない。ほんとはもう死んだんじゃないかって不安に耐えるために皆で寝たり、思い出話したりしてきた。でも全員顔が曇りっぱなしで、笑顔が減った。
Broooockの状態も不安定で隈も残ってるし、ガリガリのまま。
「今日も行くか」
「早いうち行っちゃお」
「……起きてるかな」
「そうだといいね」
お前がいないとこんなに会話がぎこちなくなるのを知らないだろうな。
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あぁ…飽きたな。
止まることを知った涙はもうずっと流れていない。かと言って、不安があるわけでもないしこのまま死んだら、とか思っているわけじゃない。
なんならこのまま死んでほしいまである。ワイテルズは今どうなってるかな、伸びてるだろうな色んな企画やってるもんね。
戻りたいな
でも許されないよね。
ごめん、皆ありがとう。
「は…」
「………」
「なんで………………」