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M.S
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#オリジナル
芽花林檎
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「最近勉強ばかりで熱心なことね」
ある日夕食を食べていると、アカネにそうつぶやかれた。
「まあ、面白い分野の話ではあるからな。科学と魔法の相互作用の最先端を走っているという意味では、自分の腕に未来の魔法科学がかかっていると言っても過言ではない。今乗りに乗ってるノリノリ科目であることに違いはないだろう」
「ロリ教授のこともそうだけど、随分気に入ってるようね」
「見てて飽きない人であるのは確かかな。若干ウザいがそこも含めて魅力の内、ということなんだろう」
実際、ウザさがなければ可愛い小動物系であることは確か。見た目も悪くないし婿の成り手はいるだろう。現実にも婿の成り手第一号である朝日奈という男がいる。彼にアフターフォローを任せておけばしばらくは大丈夫だろう。
「さて、今日はちょっと一潜りするかな。また属性魔法を数枚と、ホブゴブリンの銀貨目当てにする」
「明日の講義は大丈夫なの? あんまり遅くまで潜ってると寝坊するわよ……と、明日は一限授業はないんだったわね」
「そういうこと、だからゆっくり自分を見つめ直しながらゆっくり探索してくるさ」
「いってらっしゃい。慣れてるだろうけど、それでも気をつけてね」
「ああ、行ってくる」
そういえば、アカネのダンジョン拡張のほうはどういうところまで進んでいるんだろう。大学ダンジョンで二十層まで潜るまでの間には作られることになるんだろうか。とまあ、今日は一人で探索だから気を付けていかないとな。一応一人で十五層まで潜れるようにはなったが、流石に今から十五層でマジックミサイルを入手してくる……となると時間が足りない。十二層でスキルスクロールを二、三枚手に入れるのが精一杯だろう。
そう思って十層を軽く薙ぎ払いつつ十一層へ向かう。ホブゴブリン相手も慣れたもの。そういえばそろそろ武器も新しいものにしたいな……と思っているんだったな。どうやら高すぎると経費にできないらしく、探索者の装備に関しては三十万までなら一発経費で落としていいらしいが、それ以上の値段の物を経費として認めるには個人事業主として探索者を選ぶ道が必要らしい。
さすがに学生の身分でそこまでは……と思うので、三十万円以内で良さそうな武器を見繕いに今度どこぞの武器屋に行くか、比喩表現ではなく。
防具も、二十層に向かうなら新しいものを見繕う必要があるかもしれない。もったいないからと防具を更新せずにおくと、どこかのタイミングで防具の耐久力を大幅に超えた攻撃を受けて破損して、ついでに取り返しのつかない怪我もする、というのがあるある探索者引退パターンらしい。
さすがに俺も自分の地力があるとはいえ、それに頼って回避ビルドで自分のスタイルを組み上げてはいるものの、限度というものはあるだろう。
実際、十三層から先は防具を変更して、十五層のケンタウロスの攻撃に耐える、というのが一般的な探索者の流れらしく、唯一、回避ビルド……つまり俺みたいに避けて攻撃するような探索者ならギリいけなくもないが安全率を考えるとお勧めしない、と言われている。
十層を抜けて十一層へ。ここから一気に金銭的に美味しいゾーンへ突入する。ホブゴブリンは美味しいモンスターだ。魔石もくれるし純粋に換金するための純銀貨もくれる。そして回避ビルドで最も輝きやすい、動作がそんなに早くない、という点も含めてホブゴブリンは二度目に言うが美味しい。攻撃一回している間にこっちが二回攻撃を仕掛けてそれで仕留められれば儲けもの、といった形だ。
そんな美味しいホブゴブリンを倒しながら次の装備をどうするか、並列思考で考えながら体と頭を別々で動かす。
防具の話だ。モンスターを倒しながら防具もだが、武器の話も考えないとな。山賊刀の使い所は二十層までには終わってしまうらしい。なのでここから先、十六層以降のモンスターを相手にしていくならもう一丁強い武器、高レベルのモンスターの分厚い防御や相手の攻撃を受け止めるに堪えうる装備を持ち歩かなくてはいけない。
防具はまあ、体に合うのがあればそれにするのが一番だとして、武器も考えないとな。いつまでも山賊刀ではリーチの問題もあるが、徐々に曲がってくるし、ケンタウロスを斬りつけるにも若干の硬さがある。そろそろ限界を示してくれているんだろう。
ホブゴブリンぐらいならスパスパと切れてくれるので、今使っている山賊刀は手持ちのサブウェポンとしては充分優秀だろう。欲しいのはメインウェポンだな。
メインウェポン……やはり、つぶしが効くのは剣・槍・薙刀、この辺りだろう。ただ、薙刀は少々長すぎるので狭い場所や相手が小さい場合は取り回しが難しいであろうところがある。
槍はかっこいいが、使い慣れるまでに少々時間がかかりそうだ。長物は、えてして今まで使ったことのない分だけ修練に時間がかかる。やはり、使うなら剣だろう。今の山賊刀もいわば小刀に値するところではあるので、自分を切らないように間合いさえ意識してやれば使い勝手は最もいいものになりそうだ。
後、持ち運びの点でも、槍や薙刀はダンジョンの外でも邪魔になりやすいが、剣なら腰からぶら下げておくか背中に背負っているだけで探索者がいるとは思われるだろうが、暴れるとは思われにくいだろう。探索者の品格を求められるにしても、昔の武士のようにそうそう得物を抜いたりはしない、と見せつける必要がある。
いっそのこと、防具と武器で全部当世具足と日本刀でそろえて、面頬も付けて全身戦場の侍的な空気を出すのも悪くないかもしれないな。彩花はちょっとひきそうだが全身防具としては実績も歴史もある立派なものだ。さすがにお値段は張るだろうが……籠手だけとか胴丸だけとかで部分注文して、細かく経費にして十二分割ぐらいで買えるとお得なんだが、そこまで調子のいいことにはならないだろうな。
ホブゴブリンエリアを越えて目的の十二層まで来た。ここにももう来慣れた。地図が無くても来れるぐらいには通い慣れた。おかげで雷魔法のレベルも今や12。彩花と二人で十五層まで来ている関係上、マジックミサイルもレベル11にまで上がっている。下手な探索者三人分ぐらいの密度の詰まった探索者ができ上がっている自覚はある。
さて……早速エンカウントするのは何色のスケルトンなのかな、と……いた、緑! 覚悟!
全力で近寄って核を割り、魔法の魔の字すら出されない間の素早さで近寄っては倒す。集中して音に気を付けていればスケルトンの接近はある程度予測できる。後はこっそり購入しておいた忍び足レベル2で近づいて、ほぼ目前まで来たところで全力で駆け寄って倒していく。
今日は……あと2時間はここに居られるな。その間に何枚貯まるかわからないが、しっかり貯めこんで、貯まったスキルは後で売ろう。もしかしたら今年の稼ぎは大泉先生より多くなるかもしれないな。しっかりドロップ品である魔石とスクロールを拾って、雷魔法か火魔法なら覚える。それ以外は売る! これで今年は大学生のわりに高額納税者に足が届くことになりそうだ。
イマイチ実感が湧かないが、世の中では800万円稼いだら充分高額納税者に足をかけていることになるらしい。既に700万円ほどの現金収入を得ている俺は、今年は確実に高額納税者になるだろう。彩花に好きなだけ肉まんをおごってやれる御身分になるわけだな。
まあ、その分彩花本人も稼いでしまうことになるから、結城家も扶養家族から抜けるかどうかで一悶着あるだろうから、夏休み前に一通り計算させて、越えてるなら扶養から抜けて税金を納めなきゃいけない、という説明をしなくちゃな。
次々訪れる各色のスケルトンを倒しながら、まだ考え事ができるので、十二層は余裕で潜り抜けられる場所、ということになる。おそらく、十三層のやかましさを除いては十五層まで問題なくいけるし、もしかしたらケンタウロスもソロ撃破ができるようになってるかもしれない。
そうか……防具はケンタウロス君から奪えばいいのか。余ったセット品は売りに出すなりなんなりにして、必要な分だけはケンタウロス装備でそろえていく、というのがお金がかからなくていい感じになりそうか。
よし、防具に新しい可能性を見いだせたぞ。後は武器だな、かっこいい奴。うーん、刀か長剣か。小太刀二刀流なんかでもいいが、自分をうっかり切りそうだからな。下手に小難しいものを選ぶよりも現在の延長上で考える方がいいだろう。
やはり、第一志望は剣だ。そこそこ軽くて切れ味があって、折れず曲がらず伸びにくいならなおさらいい。それ以外だと槍か薙刀あたりになるが、狭い場所だと取り回しが面倒なのがネックだな。
やはり剣か、どんなのがいいんだろうな。やはり中古屋へ行って取り回しやどこまでの重さが自分に馴染んでいるか、そして振り回し具合なども検査させてもらうのが良さそうだな。
◇◆◇◆◇◆◇
十二層で四枚ほどスキルスクロールを手に入れてから十層に向けて帰還を始める。今日のスクロールに当たりがあればいいが、全部外れでも100万円ぐらいにはなる。それにホブゴブリンとシャドウウルフのドロップを足し込めば100万円にはなるだろう。スケルトンもかなりの数を倒したので、今日のスクロールはむしろ少なめなぐらいだ。そういう日もある。
ダンジョンから部屋に戻る。アカネはいつも通りふよふよと浮いている。そろそろ下着を両方付けたほうが体のためにも良さそうな体型になってきた。しかし、合法ロリ曰くノーパンなんだよな。ブラもつけないでそのままなのだろうか。垂れても知らんぞ。
「神様はね、クーパー靭帯は切れないし、垂れたりもしないのよ」
聞き慣れない単語が出てきたので調べてみると、クーパー靭帯とは胸を垂れさせないコラーゲン主成分の結合組織らしい。神様って物知りなんだな、と思うと同時に、アカネはどれだけ大きくなっても垂れないのか……と思わされる。ちょっと想像した瞬間、アカネがにやりと笑ったので、少しだけ悔しかった。
ちなみに、拾ったスキルスクロールは風、風、雷、水だったので、雷は覚えて後は売りに出す予定だ。ますます俺の今年の収入が増えるな。
コメント
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第250話、読み終えました〜!今回はソロ探索で装備や武器のことを考えながら潜る回だったけど、主人公の思考の流れがすごく自然で、一緒にダンジョンの中を歩いてる気分になりました。特に「防具はケンタウロスから奪えばいい」って発想、現実的で面白かったです。アカネとの軽いやりとりも温かくて、でも合法ロリのノーパン発言には思わず笑いました。日常と探索のバランスが絶妙で、続きが気になります!