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泡沫
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紫倉 紫
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아 오 _ 🐷🐶
「今日はちょっと行きたいところがあるからこの辺で」
彩花にそう断って、本日の三限講義を終わり、午後から空いた時間で大学ダンジョン近くの中古武器防具のディスカウント店「セカンド・エッジ」へ来た。大学ダンジョン周りでは一番品ぞろえが良く、試し振りもさせてもらえる優良店舗だ。
さて、どこから見たもんかな……とりあえず剣から見て回るか。剣も、一本50000円からのまるで剣道場の竹刀置き場のように無造作に鞘に入ったまま置かれている物もある。試しに一本手に取ってみると刃もそれほど曲がったり反れたりしておらず、まともな状態に見える。それでもこの値段ということはなんやかんやいわれがあるとか、実際には見た目ほど切れないとか、そういう都合があるんだろうな。
もう少しお値段のするところで10万円クラスの物を見に行く。ここからはやはりお値段がするのと、レアリティみたいなものがあるのか、そこそこ切れそう……という品物が並んでいる。俺が愛用している山賊刀もこのラインナップの中にあった。これも値段からしたら充分お高いものであることには違いないのだが、値段と武器の性能は必ずしも一致しないのがこの探索者業界での話らしい。
「今日のイチャつきがお預けになった理由は新しい武器の購入だったわけね」
ふと気が付くと、彩花が目の前にいた。つけてたのかな、だとしたらかなりの心配性だな。
「なんだ、浮気を気にしてついてきたのか? 」
「そういうわけじゃないけど、私より新しい武器のほうが大事だと思われるとちょっとイマイチ納得が付かなかっただけよ。でも、本当は浮気じゃなくてよかったと思ってるわ」
「愛想を尽かされて別れることはあるかもしれないけど、俺から彩花を振るようなマネはできないかな。理由もないし」
恋愛初心者にとってはスライムと思って恋愛経験値を積ませてもらうつもりだったのが、いつの間にか起き上がって仲間になりたそうにこっちを見ていて、仲間にしたらレベルが上がって頼もしい仲間になってた彩花である。俺から振るなんてもったいないことはできない。
モンスター爺さんもいなければ、別れるを選択することもできないのだ。わかれるなら彩花のほうから言い出さない限り俺は手放すつもりはない。何より、ダンジョン探索の立派な相棒としても付き合ってくれている彩花だ。ここまでレベルが上がった人材を野に放っては逆に危ない気がするので俺が或る程度カバーしていかないと。
「で、武器を探しに来たわけだが、できれば剣がいい。他の武器だと取り回しや学び直しがあるし、【剣術】のスキルが勿体ないことになるからな。できるだけ覚えたスキルは活かしていきたい」
「なるほど。たしかに幹也ぐらいスキルを重ねてると勿体なくはあるわね。また別のスキルを覚えてどんな武器でも扱えるようになる、という方法もあるけど」
「それはやり始めるとキリがないからなあ。器用貧乏になりそうだから、できるだけ【剣術】だけで済ませておきたいところだ。なので予算30万円ぐらいで良いものがないかちょっと調べにきた」
「なら、別に私をのけ者にしなくてもよかったんじゃないの? 私が見た目を選んであげるわよ」
そうなるからあまり連れてきたくなかったんだよな。見た目よりも性能と握り具合と長さの調子を主に見たい。なので判断基準としては、値段、持ち運び、そして見た目の順番だ。価格が30万円以内というのは絶対外せない。これが経費にできるかどうかで税金が数万変わってくるのだ。
所得税と住民税で15%分の税金がかかるとしても、45000円の費用が浮くかどうかの瀬戸際。これを捨てずにいい感じの武器が手に入ればいいな……と思うところだ。45000円ぐらいすぐ稼げるとはいえ、節約できるところはしたい。一月分の食費以上の金額が違ってくるのは大きい。
ふむ……20万円ぐらいのラインナップを見ると、中古でその値段ということは新品だとより高い値段、ということになる。ということはものによっては60万円ぐらいの値段の武器が潜り込んでいる可能性があるということか。そう考えると堅実に物の良さを見ていく必要があるな。鞘の豪奢さや見た目の良さではなく、実用性のほうでそれだけの値段を付けられている物の選別が必要になってくるな。
さて、どこを見ればそれが分かるのか……とりあえず見た目のよろしくない系の武器を色々探してみるか。見た目が良くなくても高いものは、セット装備かもしくは古い装備だが切れ味や性能がしっかりしている物、もしくは借金のカタに流れてきたものあたりだろう。
借金のカタに流れてきたなら、少なくとも借金分の価値はあるわけで、それだけでも30万の金額をきっちり含んでいるので、中古とはいえ金額分の価値はあると考えられるだろう。しかし、見た目はしょぼいほうがいいのは確か。見た目で金額を判断されるなら見た目よりも性能で判断される方が確実にいいものだと考えられるな。
「これなんていいんじゃないの、赤い鞘で目立つし、中もキレイに刃が整ってていいと思うんだけど」
彩花が適当に予算内から選んできた一本を持ってくる。赤い金魚模様のような見た目をした、派手っ派手の奴を持って来た。うーん、見た目に10万円分ぐらいとられてるような気がするな。その分安くならんだろうか。
彩花から受け取って、刃筋を見る。確かに曲がったりはしてないようだし、しっかり研いであるので一見して問題ないように見える……が、さすがにちょっと目立つな。
「うーん、見た目分だけ高い気がする。実用性優先で行きたいから見た目はしょぼくていいんだ。むしろうんとぼろくてそれでもこの値段かよ、みたいなのを探しておきたいな」
「ぼろくてもいいのね? 汚いぐらいぼろいのと、持ち歩くには問題ない程度にぼろいのとだとどっちがいいの? 」
「さすがに今にも壊れそうなのは別として、持ち歩いてても年期入ってるなーぐらいの奴で頼む」
彩花にあまり期待はしていないが、それでも一人の目で全部片っ端から見回るよりは早く見つけられるような気がする。彩花には引き続き色々と探してもらいつつ、こっちはこっちで切れ味の良さそうなものを探しておこう。
二、三本小脇に抱えて、素振りスペースを貸してもらう。どれも見た目はほどほどにぼろっちいが、刃筋の確かさとまだ研ぎ切っていない充分な刃の厚み、それから、その刃の厚みがある分だけ重さがある。山賊刀と違い長さがあるので重心も変わる。【剣術】のスキルのおかげで、山賊刀を振り回すときに近いような動きに補正されてくれているのは助かるところだな。
後は……実際の切れ味か。こればかりは切ってみないとわからないからな。切れ味試し用の藁束は一回3000円らしい。微妙に高いのがアレだが、実際に切ってみて試すのがここ、というなら買う前に調べられるのも含めて便利ではあるか。かといって、いくらでも試してすべての藁束を切り飛ばすわけにもいかない。そこまでの予算がないわけではないが、確実に使えそうなものを見繕っていこう。
まだそれほど使い込まれておらず、研ぎに出されていないため肉厚で先端に重心のある一本の剣を選び出す。刀……となるとかなりの値段になるが、似たような形の剣となるとそこまで値段は上がらないらしい。やはり、刀が一本一本鍛造されているのとは別で、剣は鋳造品が多いから……などという理由もあるのだろう。
刀でも安ければ30万の予算内で買えるものがある。ただ、相当研ぎに出されているのか、かなり肉のほうは減ってしまっていて、長くは使えないだろうと見当がついてしまうものもある。ただ、ぶっちゃけ使ってる間に30万円以上の稼ぎを手にすることができるならそれでいいので、まずは使い倒すつもりで一つ買ってみるのもいいかもしれないな。いざとなったらこっちには魔法もあるし。
よし……ここは30万円未満の刀に一つ手を出してみよう。素振りを終えて、一本良さそうな剣を見繕うと、そのまま刀のコーナーへ行き日本刀の値段を調べて、ギリギリ予算内で買える品物を見繕う。
すると、店のほうもわかってやっているのか、税込み29万8000円というきわどい価格で何本か刀を並べておいてくれてある。
後は目利き次第、ということなんだろう。俺に目利きができるのかはともかくとして、目利きのポイント解説動画は見てきているので、見るべき場所と馴染ませておくべきところ、いずれ馴染んでいくところ、と三点に分割してそれぞれ刀をみていく。
「幹也、これはどう? 」
彩花が嬉しそうに持って来た刀は、お値段が25万円だったが鞘がピンクで出来ていてとてもファンシーなイメージを持つ刀だった。まだキティちゃんの柄が付いてるほうがマシかもしれない。
「パスで」
「えー」
「だから鞘の派手さとかはいいんだってば、実用性重視。ぼろくても触って壊れない程度ならよし、で、切れ味と肉厚さと重心位置があまりぶれないことが第二条件。その刀は多分抜けばわかるけど……結構すり減ってるから鞘で誤魔化してる感じだ」
「かわいいのに」
「可愛さとかいいの。男の子は実用性か見た目重視かどっちかに振り切って買うところなんだ。今回は実用性」
彩花はしぶしぶ剣を戻しに行った。その間に決めてしまうか。手持ちの剣は一本絞り、残り二本ほどこの30万円ギリギリの中から選んで、そのうち一本を自前の武器として扱う。それでいいんじゃないか。
さあ、鞘が地味で出来るだけ目立たない奴で、刃の肉がしっかり残っている物……と一つ一つ見ていくと、条件に合った刀が一本だけあった。しっかりと重みがあり、それでいて振り回すには重いというほどではなく、それでいて手に馴染む感覚がある。これは早く使い込んでしまえばものになるんじゃないか。
早速素振りコーナーで振らせてもらった後、藁束を用意してもらって試し切り。【剣術】レベルのおかげもあって綺麗に振り切って藁束を切ることができた。よし、これにしよう。
ふと、値札を見ると、|烏丸《からすま》という銘が入っていた。烏丸か……小烏丸にあやかって付けたんだろうか。だとしたらお前の名前は気に入った。京都の地名にも烏丸ってあったはずだし、そっちの可能性もあるな。何にせよ、烏丸、お前が今日から俺の相棒だ。しっかり戦ってくれよ。
会計を済ませて彩花にもう買ったぞ、と声をかけると、真っ赤な縞模様の鞘をした日本刀を抱えていた彩花が残念そうにしていた。だから、そういう方面じゃないんだってば。
コメント
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読み終わりました!武器探しって、つい見た目で選びたくなっちゃうけど、幹也くんの実用性重視のスタンスがすごく彼らしいなと思いました。彩花さんがピンクの鞘や派手な刀を持ってくるシーン、ほんと「やっぱりそう来るか…」って笑っちゃいました(笑)。最後に「烏丸」って銘の刀を選んだのが、なんか縁を感じさせてグッときましたね。これからの活躍が楽しみです!