烏野に敗れた試合の数日前3年生の引退が告げられた。驚いて何も言えなかった。どの部活だって引退は珍しいことではない。絶対にある。しかし、早すぎる。まだ一緒にやりたいのに…俺が固まっている中でも淡々と話は続いて、次の主将が俺だと告げられた。訳がわからなかった。なんで俺なんだって。
烏野に敗れて、3年生の引退が決定となった。でもまだやっていたかった。俺が最後のあのボールを繋いでいれば…まだやれていたかもしれない。なのになんで誰も責めないんだ。最後に茂庭さんは次は全国に行け!と言った。頑張ろうと思った。しかし、聞いてしまったのだ。3年生の本音を。
「まだやりたかった。」「引退したくない。」
それを聞いて泣きそうになった。ぐっと堪えたけど。移動してバスに乗るまで、軽く1時間30分くらいの時間があった。その時間でミーティングや最後の3年生の言葉を聞く。しかし、あれを繋げなかった俺にそれを聞く資格がないと思った。ミーティングの場所に移動中俺はこっそり列を抜けた。
列を抜けて歩いている時、我慢していた涙が溢れて止まらなかった。すれ違う人には見られるし、とりあえず人気の少ない所に行こう。そう思い、人気の少ない非常階段に近くに行った。
二口 「くっヒック …くそ…」
しばらくそこにいるといきなり話しかけられた。
及川 「あれ?君伊達高の二口君?だっけ」
二口 「そっすけど」
なんでここにいるんだ。
及川 「大丈夫?なんで泣いてるの?」
二口 「試合に負けたから」
及川 「あーそういうことか。なんで?みんなで泣けばいいのに」
二口 「負けたの…俺のせいなんで…あの時あれを落とさなければ…‼︎」
及川 「後悔が残るってことか。」
二口 「俺のとこ今回の試合で引退なんです。今まで以上に頑張って練習したのに…」
及川 「そっか。」
二口 「俺、こんなんだから中学でも上手くやれてなくて、でもあの人達は違った。後輩って理由だけで笑って許してくれた。不作なんて言ってる人もいたけど絶対違う。あの人達は強かった。優しかった。信頼できた。もっと一緒にやっていたかった。」
涙はずっと止まらない。溢れて止まらない。
及川 「バレーボールが好きな人ほどできる限り長くやっていたいって思うよ。」
二口 「うちの3年生はバレーが好きじゃなかったていうんですか…」
及川 「違う。好きじゃなかったら3年間なんて長い間プレーできない。不作だって言われても続けられたんだ。好きだったと思う。でもまだやっていたいって思いを殺してまで君達に託したかったんじゃと思う。俺は、わがままだよ。まだあのチームでやっていたいから、引退できずにいるんだ。攻めるなんてできる訳ないよ。きっと二口君が頑張っていたのを知ってるんだ。見てるんだ。」
二口 「だけど…俺は…くっ…悔しい。最後くらい…恩返し…したか…った。こんな俺が次の主将なんて無理だ。茂庭さんが居たからこそ強かったチームで…俺が…弱くしたら…」
いつまで泣くんだろ。もうやだ。他校にまで迷惑かけてさ。
及川 「不安だよね…でもさ誰だって最初は不安なんだ。俺だって不安だった。でも…さバレーは個人競技じゃない。1人で出来るのはサーブくらい。あとは点を取る時のスパイクだってセッターがいないと決めれない。主将だって同じだよ。頼っていけばいい。俺だって助けてもらった。」
二口 「きっと俺は茂庭さんみたいな主将になれない…まだ引退して欲しくない…大好きなのに…俺が生意気だったから。」
及川 「探してる」
二口 「は?」
及川 「君の所のチーム君の事探してた。」
二口 「え…」
及川 「黙って抜けてきたんでしょ?」
二口 「…」
及川 「素直に話してもいいんじゃない?俺が言えるのはこれだけ。」
すると遠くから3年生が俺を呼ぶ声が聞こえた。それだけでも涙が逆に溢れてきた。止めたいのに。
茂庭 「はぁはぁ…二口‼︎やっと見つけた…」
鎌先 「二口ィ‼︎勝手に居なくなんじゃねぇよ‼︎」
笹谷 「心配したんだからな‼︎」
及川 「じゃあ俺も戻ろうかな。あっあと二口君言いたいことあるって」
二口 「ちょっ…」
茂庭 「及川ありがとな」
及川 「抱え込んでるみたいだから話聞いてあげてね」
及川さんが去ってから3年生は俺の方を向いて茂庭 「二口…」
二口 「ごめんなさい…俺…頑張ってやったけど、届かなかった。」
茂庭 「うん。」
二口 「引退だってして欲しくないです。まだ一緒にやりたい。こんな主将じゃダメだってわかってるのに、不安です。俺が…主将になったことで、先輩が俺たちに託した期待を壊してしまうかもしれない…先輩達が大好き…なんです…」
茂庭 「二口が頑張っていたの知ってる。チームを大切に思っているのも。だからこそ俺達は二口が主将がいいって思ったんだ。」
二口 「ヒック…くっ悔しい…最後くらい恩返ししたかったのに…まだ何も返せてないのに…」
茂庭 「俺達はお前に色々もらったよ。」
笹谷 「いっぱい泣け。今は。それで前を向け。」
鎌先 「できない奴を主将に選ぶ程俺達の目は腐っちゃいねぇよ」
と言うと抱き締めてきた。いっぱい泣いた。一生分の涙を流したと言っても過言ではないくらい。
茂庭 「お前なら大丈夫」
次期に泣きすぎたのか、いつのまにか寝てしまった。次に目を覚ました時は鎌先さんにおんぶされていた。目の前にはチームメイトがいた。
不安な時は頼れと言ってくれた。
俺はいいチームにも先輩にも恵まれたと改めて実感した。
コメント
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二口のストーリーめっちゃ好きです!フォロー失礼しますm(*_ _)m