「しるくどふりーく?」
全く聞き覚えのない単語に俺は思わず聞き返してしまった。
「おい、あんまり大きな声で言うな。なんだ、知らないのか。お前さんはまだ子供だが、もう分別もつきそうな年頃っぽいし、ちょっとヤンチャそうだから知ってると思ったんだが。」
バートンは俺をジロジロ見ながらそう言った。
「バートンのおっちゃん、俺は武田とらき…」
おっとあんまり本名言うもんじゃないよな?
「トラって呼んでくれ」
「トラ?変な名前だな。」
「そうか?で、さっきの『しるく・ど・なんちゃら』って何なんだ?」
「『シルク・ド・フリーク』だよ。名前の通り、いわゆる見世物小屋さ。色んな異形の人間達がサーカスをするのさ。」
「異形の人間って、どんななんだ?」
「俺も実際見た事ねえが、この前露天商からチラシをもらって知ったんだ。すると、客にも知ってる奴がいて聞いてみたらよ。異様に手がデカい奴、めちゃくちゃ食べる大男、身体を自在に変形出来る男、美人の髭女とかいるらしい。」
「へぇ変なサーカスなんだな。でも、面白そうだな。何処でやるの?」
「町外れの古い劇場だよ。ただチケットが無いと入れないぞ。」
「あ、そっか。サーカスだもんな。バートンのおっちゃんは、もう買ったの?」
「そりゃあ買ったさ。妻の分も含めて2枚な。」
「もう売り切れたかな?」
「どうだろうな。あんまり大々的にビラ配りしてる訳じゃないみたいだからな。今行けば帰るんじゃないか?」
「ふーん、じゃあ行ってみっかな。」
俺はバーガーの最後の一口を口に放り込み、オレンジジュースで流し込んだ。
そういやリュウの奴、何処いんのかな?
ま、アイツなら大丈夫か。
俺は俺で楽しませてもらうぜ!
わりぃな、リュウ!
俺はニヤリと心の中で笑った。
「あ、その劇場って何処にあんの?」
そういえば俺土地勘無かったわ。
「紙に書いてやる。ちょっと待ってな。」
バートンはまたカウンターの奥に行き、劇場までの行き方を描いたメモ紙を渡してくれた。
「ありがとう。バートンのおっちゃん!行ってくるわ!」
そう言って俺は席を立ち、バートンに手を振って別れようとした。
「待て」
俺はガッと腕を掴まれた。
「お勘定、忘れてないか?」
……。
そういや金ねぇわ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!