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ここはサンタクレス大帝国の皇帝が住まう帝城。(真夜中)


その一室で眠っていた彼女 (勇者) をシロがやさしく起こしてくれたところだ。


「キミを助けにきたんだ」


「あたしを助けに? あたしはこの国の為にって……、あれ、なんでだっけ? 突然連れてこられて怖かったけど、この国の為だからって……、えっ? ええっ?」


暗示が解けて、頭がすこし混乱しているようだ。


「キミはこの国に勇者として召喚され、自在に操ろうとしていた者に強い暗示を掛けられていたようだね」


「暗示……? じゃあお兄さんは信用できるんですか?」


「うん、大丈夫だから。日本にも返してあげられるよ」


「……日本とか言っていますけどお兄さんは日本人ではないですよね?」


「うっ、いや俺はその、転生者だからなんだ。騙してなんかないんだからね!」


「なんか早口になってませんか。怪しいです! 危険です!」


「いや怪しくないから。ホント日本人だったんだから……、ねっ」


「…………!!」


「…………??」


「では問題です。 日本三景といえば、【天橋立】【松島】 もう一つは何?」


「5~. 4~. 3~. 2~.」


「は、はいっ! 安芸の宮島!」


「ファイナルアンサー?」


「ファ、ファイナルアンサー!」


「……正解!」


「では第2問。 ポケ〇トモンスターで道の真ん中でよく寝ているポ〇モンといえば何?」


「5~. 4~. 3~. 2~. 1~」


「は、はい! カ〇ゴン!」


「ファイナルアンサー?」


「ファイナルアンサー!!」


「……ん~。…………んんん~。 正解!」


「では第…/「もう、ええやろっ!」


思わず疑似関西弁で突っ込んでしまった。


サキは「えへっ」っと舌を出している。


コヤツは~~~。






「あたしは雨宮サキ 13歳。シロちゃんヤカンちゃんよろしくね! ええっとお兄さんも……」


「ゲンだ」


「ワン!」


「こちらこそよろしくお願いいたします」


ヤカンが頭を下げながら挨拶すると、サキは驚いたようでポカンとしている。


「へ~、ヤカンちゃんって喋れるんだね。かわいい」


「シロも念話でコミニケションがとれるぞ」


(おそよう!)


右の前足をあげてシロもご挨拶。


「あ、ほんとだ! すごい!」


「それよりも早く着替えろ。出るぞ!」


「は~い。荷物はどうすればいいの~?」


「持っていきたい物があったら全部だせ。インベントリーに収納するから」


「は~い! ヤカンちゃ~んこっちの方も照らしてぇ」


………………


「お、おい、マジか? これ全部か?」


「ん。皇帝さんがね、全部あげるって言ってたから大丈夫だよ!」


ってまあ、姿見 (鏡) はいいとして……、ベッドも、ソファーも、猫足テーブルもか?


そのシャンデリアは止めておけ。シロも手伝うんじゃありません。


……はぁ、もう全部入れてやったわぁ。こうなったらヤケくそだ!






ここで一息入れたいところだが、サキを連れたままあの宿へ戻るわけにもいかない。


そこで俺たちはダンジョン・ハルカへ向かうことにした。


もちろんモンスターが発生しない【ダンジョンリビング】へだ。


前管理者が存在していた【ダンジョンリビング】であれば、何かしら建っているだろうと思ったからである。


それでいざ転移してみたんだけれど……。


――なんじゃこりゃ!


そこにあったものとは、


なんとも昭和臭が漂う【ゲームセンター】が一軒ぽつんと建っていたのである。


【モンテカルロ】とデカデカ描かれた自動ドアが開くとズラリと並んだピンボールが目に飛び込んでくる。店内に足を踏み入れるとBGMには懐かしの【ソウル・ドラキュラ】がかかっていた。奥へ進んでいくと音源であるジュークボックスがあり、隣りには押しボタンがやたらとデカい瓶コーラの自動販売機が置いてあった。


(よく、作り込んであるよなぁ)


感心しながらもさらに進んでいくとダーツマシンやエアホッケーが置いてあり、そして最奥には競馬ゲームを中心としたメダルゲームコーナーが広がっていた。メダル落としゲームの原点であるニューペニーフォール、壁にはレトロなスロットマシーンがところ狭しと並んでいた。


そうかと思えば、駄菓子屋の前に置いてあった10円玉を弾いて遊ぶ【新幹線ゲーム】や、スーパーマーケットの階段踊り場などでよく見かけた電子ルーレットの【ピカデリーサーカス】なんかもあって。ついついポケットに手を突っ込んで小銭を探してしまいそうになるな。


――凄いよなぁ。


これらのゲーム機が張りぼてじゃなくて、しっかり遊べるところが素晴らしい。


(………………)


だけどこれらも、


こちらに呼ばれた者が抱く望郷の念がこうしたものを作り上げたのかもしれない。


孤独だったのかもな。


そう考えると、込み上げてくるものがあって泣きそうになってしまう。


このゲーセンは半永久的に残しておくことにしよう。


そのあとはサキに遊び方なんかを教えつつ、コーラ片手にしばらく一緒に遊んだ。


どのゲーム機も再現度が高く、おかげで楽しい時間を過ごすことができた。


前管理者の話やBGMになっていた音源がどのようにして作られたかなど、そのうちゆっくり時間をつくってハルカに聞いてみようとおもう。


俺たちは【トラベル!】を使ってデレクの町へ一気に戻ってきた。


なお、ダンジョン・ハルカの上に建っていた【教会本部】に関しては、本日から一日一回、大きな地震を起こして教会の建物を崩していき、3日目には建物を跡形もなく破壊。ダンジョン前広場を表にだすようにとハルカに指示を出してきた。以降、ダンジョン前広場に建築物は建てさせない。


地震の余波で帝城や貴族街にも被害が及ぶように調整している。


これを天罰が下ったとおもい悔い改めてくれることを切に願う。






じきに夜が明けたので、客間で寝ているサキはそのままそっとしておいて俺は散歩と朝食を済ませた。


リビングにて帝国での出来事をシオンや慶子に説明していると、メイドに連れられてサキが部屋に入ってきた。


ようやく起きてきたか。もう少しするとお昼の鐘が聞えてくる頃だよな。


リビングに入ってきたサキにシロとヤカンがまとわりついていく。


「おはようサキ。良く眠れたようだね。お腹は空いてないか?」


「……う、うう、ううう良かったぁ。また知らない天井だからあたし不安だったよ~。ううう、うぇ~ん」


ソファーに座った途端泣き出してしまったサキに慶子が寄り添う。


「ううう、あだじずーとひどりで○%△$□#……」、


「うんうん、大丈夫、大丈夫」


サキの背中をポンポンしながら、言葉にならないことばを慶子が聞いてあげているとサキも徐々に落ち着いてきた。


うん、サキのことは慶子に任せておけば大丈夫かな。


俺は王都のツーハイム邸へ伝言を送り馬車の準備をさせた。


今回のことをおばば様に報告する為である。


「今回も良くやってくれたね~。ありがとよ」


おばば様にお褒めの言葉を頂いたあと、デレクの本邸へ戻った俺は終わりなき書類の山とひたすら向き合いながら奮闘……。


終わった頃には既に夜が明けていた。ふぁ~あ。


ふらふらしながら散歩への不参加を表明した俺はそのままベッドへ倒れ込んだ。


そして昼過ぎには起きだし食事を取ったあとは再び仕事にとりかかった。今日の分である。


使っていたペンをペン差しへもどし、ふと窓の方をみれば外はすっかり暗くなっていた。ふぅぅぅ。


仕事は溜めてはいけない。そういうことだな。






そして翌日。


今日は午後からゆっくりしようと、昼までに仕事をかたづけた。


昼食のあとは学校が休みだったメアリーを連れ温泉施設へと向かった。


慶子とサキは朝からデレクの町へ繰り出している。


サキの冒険者登録と買い物だな。


普段町中で着る服のほか、ちょっとした防具なども見てくるそうだ。


そのあとは温泉施設で合流することになっている。


俺はというと、露天風呂に浸かりながらハルの世話をしている。


ハルはヤカンともすぐ仲良しになった。


ふわふわで大きなヤカンの尻尾をハルが掴まえようと追っかけている。


キャッキャ言ってとても楽しそうだ。


すると今度はシロの背中に乗っかり、広い湯舟をスイスイ遊覧している。


見てるだけで癒されるな~。


「あらあら、ハルちゃんと遊んであげてるの? ほんと良いお父さんをしてるのねぇ」


慶子たちが合流してきたようだ。


あれれっ、サキは……?


ああメアリーに捕まってしまったのか。


天真爛漫なメアリーは誰とも仲良くなれるからな。


サキはすっぽんぽんのメアリーに引っ張られて、一緒にスライダーの方へ向かっている。


「それで慶子、サキの様子はどんな感じだった。やっぱり帰りたそうか?」


「そうね~。それが、そこまで帰りたい風でもないのよね~」


ふ~ん。


まあ、せっかくの異世界だし。


その辺はゆっくり考えた上で答えを出してもいいと思うんだよね。こちらには俺たちも居るんだし……。

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