「あなたは素敵です。私なんかに……なんて言わないで下さい。僕は、穂乃果さんに片思いできるだけで幸せなんです。シャルムにいれば、ずっと一緒にいられるし。たとえ、弟みたいにしか見てもらえなくても……それでも僕は……」
素敵なセリフに、胸が熱くなる。
「ごめん……。私、どう言ったらいいのかわからないけど、本当に自分に自信がなくて、だから、輝くんの告白もまだ信じられなくて……」
「どうしてですか? 穂乃果さんは本当に可愛いです。自信持ってほしいです」
「か、可愛いくないよ。自信なんて……そんな簡単に持てないから」
「僕だって、自分に自信なんてありません。毎日、悠人さんみたいなキラキラした人を見てたら余計に自信なくします。でも、穂乃果さんは違う。僕にとったら、穂乃果さんはとても可愛くて、優しくて、素敵で、一緒にいるだけで癒されて……。こんなにも誰かを好きになったのは、本当に初めてなんです。あなたが僕の人生の中に入ってきてから、ドキドキしたり、不安になったり、でも、本当、毎日が楽しくて、幸せなんですよ。僕は、穂乃果さんのおかげで、自分に自信がないことも少し忘れられるんです」
長い長い輝くんのセリフは、まるで恋愛映画のワンシーンのようだった。
自分はテレビの向こう側にいるただの視聴者で、他にヒロインがいるように思える。
でも……これは映画じゃなく、現実なんだ。
輝くんの告白にまだドキドキして、体中に熱いものが駆け巡ってるのを感じる。
だけど……何だか胸が苦しい。
私、輝くんのこと、好きだけど……
やっぱり……弟みたいにしか……思えない。
ごめん……輝くん、ごめん。
「ありがとう。輝くんの気持ち、本当に嬉しいよ。でも、私、今は美容師として1人前になりたいって思うし、恋愛は……」
「大丈夫です。あなたを苦しめるつもりはないし、一緒に仕事できるだけで、今は……充分ですから。本当は……自分の気持ちはずっと胸の中にしまっておくつもりでした。でも、今日偶然出会って、自分でもわからないけど……告白したいって思ってしまって。困らせてごめんなさい」
「困らせるなんて、そんなこと思ってないよ。本当に嬉しいの……ありがとう。とにかく、今は一生懸命仕事頑張るね。輝くんも、一緒に頑張ろ。ごめん、今はそんなことくらいしか言ってあげられない」
輝くんは、何度も首を横に振った。
「大丈夫です……本当にすみません。じゃあ、僕、行きます。また、明日……」
輝くんは、後ろを振り向かず、駆け足で私から離れていった。
複雑な気持ちでマンションに戻ると、遅くなるはずの悠人がもう帰っていた。
「おかえり。お疲れ様」
「あ、悠人……お疲れ様。今日は早かったんだね」
「急に仕事が延期になった。本当は、まだやることがあったけど、穂乃果に早く会いたくて」
悠人は、私に近づいた。
何だかドキドキする。私は、目の前まできた悠人をゆっくり見上げた。
「何かあった?」
「え? どうして?」
「ソワソワしてる」
「……してないよ。別に」
嘘つくの、本当に下手だ。
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