「……」
「「「……」」」
とても気まずい。
じっとこっちを見る3人が何を考えているか分からず自分の指先を見つめる。
「トラゾー」
不意に声をかけられてほんの一瞬返事をしそうになって思いとどまる。
「……」
下手に声を出せば何を言うか分からず首を横に振る。
喋りたくないという意思表示だ。
『本音を言わないトラゾーに、どうにかして本音を言わせよう』
そんな突拍子のないことを言い出したのは誰だったか。
一体どこで入手したのか分からないものを飲まされた。
怒りを通り越して呆れてしまう。
「…(コレ、ホントに本物なんだろうか…世にはプラシーボ効果と言われるものがあるし。散々本音を言わされた後に実は砂糖水でした、とか言われたらぺいんとに肩パンしそうだ)」
そもそも元凶である人物たちに対して何故こちらが素直にならなければならないのか。
「……」
一周回ってまた腹が立ってきた。
むっとしたのが顔に出ていたのか、クロノアさんが申し訳なさそうな表情をした。
「……」
意地でも喋ってやらねぇ、とぷいっとそっぽを向く。
「ぅぐ…っ」
誰かが呻いた。
「……」
と、不意に誰かが動く気配がした。
「⁈、ひっ…⁈」
そう思っていたらツッと顕になっている首筋を撫でられる。
バッと前を向くと、にっこり笑う青髪の人がいた。
らっだぁさんに首筋を撫でられたのだ。
慌ててそこを押さえて彼を睨む。
「っ…!」
「可愛い〜」
「らっだぁさん…!」
「真っ赤じゃん」
「ぺいんとうるさい!」
これ以上ここにいてはマズいと思い、距離を取ろうと後退ろうとしたら腕を掴まれた。
「ぅわっ」
掴んできたのはクロノアさんだった。
「クロノアさん、離してください…っ」
嫌な予感がする。
言いようのない恐怖感に襲われる。
「こわぃ…ッ」
ハッとして口を覆う。
「…へぇ、トラゾー怖いんか」
「(俺のバカ!)」
近寄るクロノアさんの肩を押し返そうとした。
「(この人、弓道やら合気道してたから体幹強ぇ…!)」
「トラゾー、俺のこと怖い?」
押し返そうとしていた手を逆に取られてぐっとクロノアさんの方に引かれる。
「!」
「嫌い?」
ぽすりと体を預ける形になった。
「嫌いなわけないです…ッ」
「じゃあ好き?」
耳を撫でられてびくりと肩が跳ねる。
「み、耳、やめ…」
「どうして?」
「擽ったい…から、です…」
ざわざわとよくない感覚に襲われる。
「ふぅん?」
「、⁈、ひゃう⁈」
耳の形に沿うようにクロノアさんの長い指が這う。
「感じてるからじゃないの?」
いつもなら違います!と叫ぶのに口は違うことを言っていた。
「そうです…ッ、…っぁ…?」
「トラゾー、耳感じるのかぁ」
顔を上げると3人は嫌な顔で笑っていた。
「っっ!」
ヤバいと思った時には3人に捕まっていた。
「はな、してください…!」
「いつも嫌とかやめてとかしか言わないトラゾーに、もっととか言わせてやりたい」
「(それが目的かよ…!)」
キッとぺいんとを睨みつける。
恥ずかしさで爆発しそうになってる俺の目は涙でぼやけていた。
「それ、逆効果だかんね?」
「煽ってんなー」
「そういうの素でするからタチが悪いんだよなぁ」
さっきからクロノアさんは全然手を離してくれない。
「あんたらだから…俺は…!」
やめろと頭の中で思ってるのに、口は饒舌に語り出す。
「あなたらを受け入れてる時点で、気付けよッ!こっちは気持ちよすぎて何も考えられなくなってんだよ!その時点で察しろよ…!嫌ならそもそも、シません!ばかっ!」
なんということでしょう。
あんなに喋ってやるものかと決意固くしていたのに、言ってしまった。
「「「………」」」
「俺がもっと、とか言ったら引くでしょう…ッ」
「「「いや、興奮する」」」
「ほら!……って、え?」
俺の腕を掴むクロノアさんの手に力が入る。
「いや、とかやめて、って言われるのも加虐心煽られて結構クるものあったけど。…トラゾーにもっととか言われたら余計に…」
「!!」
「トラゾーガード硬そうなイメージだもんな。だから、尚更泣かせたくなるつーか、暴きたくなる?」
「⁈」
「まぁ、ギャップなんかな?最後まで抗う感じが堕としてやりたくなるんだよなぁ」
「っ、!」
この人らの方が薬飲んだんじゃないのかと言うくらい普段聞いたことも言われたこともないことを言われる。
「それよか、俺らこんなに愛されてたんだな」
「飲ませてよかったわ」
「ホントにな。俺らには絶対言わないこと聞けたし」
詰められていた距離が更に縮む。
その表情と雰囲気で、先程の嫌な予感が的中してしまったと本気で焦り始める。
「ま、さか……?」
「「「?」」」
いつもの俺なら絶対に言わない。
ただ、もう素直になった方が楽になるのではないのか…そう思ってるのも薬のせいなのだろうか?
自分じゃない自分がいて、勝手に口が開く。
「……ぇっちなこと、するの…?」
絶対に言わない、思ってたとしても口に出したことのない言葉が出る。
「「「クソ可愛♡」」」
「…ぁ、」
ダメだと思った時には天井を見上げる格好になっていた。
「ココは?」
「ひゃぅ、♡、すき、すきです…っ」
「コレは?」
「ふぁっ!、きもち、ぃいれす…ッ」
「コッチも?」
「らいすき、れす…♡ッ」
絶対にトラゾーが言わないような溶けきったようなふにゃふにゃしたような声に、ゾクゾクと背筋が震える。
思った以上の効果だった。
「くろの、あさ、もっと、してくらさ…ひゃ、っぁう!」
「可愛いね、トラゾー。いつもよりもっと可愛いよ」
「ぅれしいです…っ」
ふにゃあっと破顔したその顔を至近距離で見たクロノアさんは自分の口元を押さえている。
「すき、くろのあさん、だいすき♡」
「…俺、もう無理かも」
「もう充分慣らしたし、大丈夫じゃね?」
ナカから指を抜かれた時も高い声をあげて体を跳ねさせていた。
「くらさぃ、くろのあさん…ほしぃです…」
ぎゅっとクロノアさんの首に手を回して猫みたいに擦り寄るトラゾーの腰を掴んだクロノアさんは一気に柔らかくなったトラゾーのナカを突いた。
「ひゃぁああ♡」
「っ、もう、トラゾーに素直になるような薬は、っ…飲ませるのやめよう」
「うん、心臓に悪いわ」
「ま、たまにくらいなら使ってもいいんじゃね?ハート飛ばしまくってるトラゾーもバカ可愛いし」
「ん、ひゃッ、くろのあさんの、おっき…⁈ひン⁈も、ゃっ、おっきくしないれぇ…ッ」
こんなに可愛のが外に出たら危険だ。
マジで。
「くろのあさん、くろのあさ…っ!」
クロノアさんにしがみついてびくりと肩を跳ねさせたトラゾーはイッたようだ。
「ふ…はっ、ん…!」
「まだイッてないからもうちょっと俺に付き合ってね」
「は、ぃ…♡」
「その後にぺいんととらっだぁさんのこと、気持ちよくしてあげてね?トラゾーはイイコだからできるかな?」
「できますッ…いっぱい、きもちく、します…っ」
隣に立つらっだぁの顔は世に出すと犯罪者呼ばわりされそうな表情になっている。
かく言う俺もだろうけど。
「らっだぁさん、ぺいんと、おれ、いいこですか…?」
「トラゾーは素直で可愛いくていい子だよ」
「普段のツンっぽいのも可愛いけど、めちゃめちゃ可愛いくていい子だぜ」
幼なげに笑う顔はこの場には不釣り合いではあるけど、そのギャップが更に俺らの加虐心を煽る。
「うれしぃです…みんなだいすきです♡」
そして薬が切れて我に返ったトラゾーも絶対にバカ可愛いから、今日はずっとベッドからは出してあげられないんだろうなと若干罪悪感を感じる。
ただし、後悔はしてない。
「俺らでいっぱい愛してやるからな」
「はぃッ♡」
おわり
コメント
3件
最高ですねやっぱトラゾーさん受けは尊いんですよ!!! 素直になっちゃったトラゾーさんも可愛いです