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✧ とあるノベルアドベンチャーゲームを参考にしています。主に語句、舞台。
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竜崎。流河。名探偵。
L。
事件解決の為なら暴力も、監禁も、躊躇うことなく行う男。
高校生活もそろそろ終わると言うそんな日々の1月初旬。今日裁く犯罪者を決めておかなければ。と、日常と化しているどうだっていい事を考えていた時。編入生がやってきた。
こんな時期に…。きっと誰もがそう思う事だろう。多少校則が自由だからと言って、ほとんどの生徒はきちんと制服を着ている。勿論、制服にアレンジを加えたり、ネクタイの色を変えたりする生徒は多かった。幾許校則が緩いと言っても、目の前の流河旱樹を名乗る人物のファッションは高校生とは言い難い風貌であった。
流河 「流河旱樹です。僅かな2ヶ月間ですが。よろしくお願い致します。」
流河旱樹と名乗る男は、まるで借りてきた猫のように静々としていて、それでいてまた凛としていて、相反する2つの特徴が、教室に存在する人間の頭を錯乱させる。
先生も触れ難いようにしていたが、そんな指導者の大きな口から信じ難い言葉が発された。
先生 「月君と同じで、全教科満点入学だ。」
教室中がざわめく。
無論、僕だって驚いた。全教科満点、1位。同じ人種。 驚愕、呆然、自分と同じ頭脳のレベルを持つ人間が居た事や、それがこの目の前にいる変質者なのが僕に生まれた感情を増大させている。
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1日経って、授業中の流河の妙な振る舞いが垣間見られた。
講義でも大胆にPC操作を行い、昼休みには購買で大量のケーキを購入し、食す。
そんな光景を見ている、自分がいる。つまり、僕は無意識的に”流河旱樹”の行動を観察している。
放課後が迫った授業後。
ふと、尿意がしたから便所へ行った。密閉された男子トイレ。 外からの女の笑い声。ぼそ、ぼそ、と流河旱樹の話をしていた。
ムカつく。例の、黒い大学ノートで、殺してやってもいいかもしれない。自然とそう思う僕が僕の中に存在していた。
靴の踵を潰して歩く軽やかな音が出入口付近から聞こえた。
目が痛くなるほどの白さ。体も、服も。
髪と、目の下に造作されている隈も、こんなにも黒いというのに。黒と白が一つに溶け合っている流河の姿を見つめる。
夜神 「あ……」
流河 「こんにちわ。」
夜神 「確か、流河だよな。」
そんな事、今更聞かずとも、分かりきっていることだ。でも、会話が続かない。流河旱樹と話してみたかった。
奇妙で、不気味で、静々とした。人を寄せつけない人間。
きっと仲良くなれると感じた。どこにでもいる高校生じゃなくて、僕らは頭がいい。相手のレベルに合わせて会話をする必要がないのだ。
流河 「夜神月さん。」
流河 「同じ首席として貴方に興味がありました。」
夜神 「本当か、僕も、流河に興味があったよ。」
瞬き3回分の沈黙が鏡の前に流れる。
流河 「……なぜ私が、こんな時期に編入してきたか分かりますか?」
夜神 「知らないよ。検討もつかないね。はは。」
流河 「私は、実はキラ事件の捜査をしているんです。」
なに!?そんなの、そんなの。
僕に立ちはだかる敵が、L以外にも存在する事実に、恐慄く。流河の話し方は、僕の精神を逆撫でして、流河が僕に向ける視線は深い意味が籠った、淡々と話す唇に比べ、熱意を持って見つめる眼差しの乖離。
流河 「私が今から話す事を、絶対に誰にも話さないと誓っていただけるのなら、キラ事件に関する重大な事実をお話することが出来ます。」
夜神 「いいよ、誰にも言わない。なに?」
必死。今の自分に1番当てはまる言葉。
驚きや恐れも全て飲み込んだこの感情。僕はこれらを隠すために必死なのだ。なのに、今から重大な事を言われるだなんて、溜まったもんじゃない。一々勿体ぶる流河と、それに怯えている僕。鏡の前2人は見つめ合う。
流河 「私はLです。」
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流河が、L。
僕の、僕の最大の敵。キラ。L。互いに殺し合い、分かち合うことのできない存在。流河と僕は、永遠に分かち合うことが出来ないのだ。
そして、Lがここで潜入捜査を進めているのなら、疑われているのは確実に僕だ。
数秒前から、全く動いていないのに、僕と流河の間に、虚空の亀裂。
夜神 「わ、悪い。衝撃で……」
僕の中の、目の前の流河旱樹の印象が崩れ、Lへと化ける。眼前の不確かな男と、進むことの無い時間。そして、無力感に没落する、僕。
L 「無理もないですよ。そして、月くんの頭脳はとても優れている。」
夜神 「だから……?」
L 「協力して頂きたい。捜査に。」
無理だ。Lと鏡前で会ったほんの数分での話に含まれている情報量の多さ。
流河は、Lは、きっと僕を疑っている。疑ってこの高校に入り、疑いを見極める為に、捜査へと招請した。皮肉な話だと思う。僕は、流河に興味を示したが、流河は、僕を、容疑者としか頓着していないのだ。虚しさ漠然とした沈鬱に苛まれる僕を、Lが嘱目している。
夜神 「…その、やっぱりまだ心の整理が出来てなくて……返事は明日でもいいか?」
L 「勿論です。急にすみません。」
夜神 「……じゃあ、明日の放課後。旧校舎の空き教室に来てくれ。それまでには、答えをだしておく。」
L 「わかりました。可能であれば、連絡先を教えてください。今後の為に。」
夜神 「ああ……」
L 「私の事は流河ではなく、竜崎とお呼びください。では。」
さよなら。
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竜崎が帰った後、僕は明日訪れる筈の旧校舎の空き教室に1人佇んでいた。
僕は、キラ。犯罪者を裁き、優しい心を持つ者が生きやすい世界にする。神。
終わることの無い昼と夜の狭間。夕日に照らされ血塗れになる教室。僕はこの地球で何万人を殺し、嬲り、陥れたのだろう。
教卓に立ち、ふと窓辺を覗く。銀に煌めくフレームと反射が共鳴するガラスからは、僕が幾多と通った中庭が視える。僕は数ヵ月前、ここで黒いノートを拾った。ついこの間の事の筈なのに、遠い昔の様に感じる。
そんな事を考えて、後ろに振り向く。大きな黒板の真ん中で、チョークを握り、塗板に滑らす。黒板に板書する特有の感覚が僕の存在を仄めかす。
僕が黒板に綴った、【正義】
道徳、倫理、法律にかない、人間の在るべき姿。僕は、完璧でないこの世界を許せなかった。殆どの人間は正しく在ろうとしているのに、極少数の悪の愚行で人間の努力が儚く割れてしまう。パリン、パリン。必死で積み上げてきたかけがえのないものなのに。こんなにも簡単に壊されてしまう。僕はそんな光景を何度も見てきた。やはり、僕が裁き続けなければ。でも、竜崎を僕の手で裁ける気がしないのだ。奴は僕の精神を握り、心を揺らす。でも……。
夜神 「……もう帰ろう。」
僕はここに存在してはいけない。神になるのなら、犠牲は仕方がない。こんな事で、こんな場所で、戦慄を掛け巡らせている様じゃ駄目なのだ。
僕は、神でないと。
後ろに憑く、林檎を強請る死神と並び、僕は帰路へ向かう。
さよなら。
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家に帰り、食事をしても、勉強に勤しんでも、入浴しても、背後に居る怠惰な死神とゲームをしても離れる事の無い此程の出来事。瞼の裏に鮮明に刻まれ、思い出す度に僕の脳を焼く。
竜崎が学校に来た理由は間違いなく僕で、僕を監視しキラとしての容疑者として僕を見ていた。深夜2時40分、未だ僕は眠れずに心中の脅威に怯えている。
14時間後、綺麗な夕空の下、僕は煩悩塗れの汚濁な思想に呑まれる。きっと、Lの様な思想には戻ることが出来なくなるのだ。いや、もう戻れない。
リューク 「面白い事になって来たな。ライト。」
煩わしい程に纏わりついている禍々しい飛行物体が僕に語りかける。全く面白くなどないのだ。
夜神 「……」
別に、こいつとの沈黙は不快では無い。寧ろ、ずっとこの死神と話す方が気が滅入る。 僕は飲み込まれたんだ、超現実に。
死神が居ても、どれだけ人を殺せても、たったノート1冊で世界を変えられても僕はそれが当たり前として受け止められるようになった。
1+1が2の様に、青と赤を混ぜると紫になる様に、不可思議が平凡と化すように。
夜神 「僕は神としてダメだな。」
リューク 「?」
夜神 「アイツを殺す時、絶対に僕は躊躇う。殺し切れない。」
リューク 「ククッ、ライトにもまだ”人間らしさ”はあったんだな。」
強ち、間違ってはいないのかもしれない。
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次からL月要素出します🎶
pixivにも載せようかと考えておりますので、その時も何卒宜しくお願い致します。
いいねコメントも是非💭