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「触らないでっ!」
私が声を出すとは思っていなかったのか、少しビクッとした池田の前から体を横へずらして立つ。
「最低……」
父はそうして触ってもいないのに痴漢扱いされ、その嘘を主張した遥香の婚約者が私のお尻を触るなんて……どういう因果関係なのか。
この男も遥香と一緒に堕としてやる。
「帰るわよ。真奈美、しっかりと私の後ろを歩きなさい」
池田に気を取られていたので、バッチリとメイク直しをしてきた遥香が私に命じたことに気づくのが遅れた……
「トロトロしないで、さっさと私の荷物を運びなさい!」
遥香の甲高い叫びは、近くの売り場にいる人たちの視線を集める。
池田もニヤリと私を見たけれど、私はさっきまでのように彼らのかかとを見て歩くつもりはなかった。
こんな最低な人間に負けない正義はあるのよ。
私はそこから駐車場までの間、顔を上げて歩いた。
遥香は以前、電話で友達に言っていたように、私を自分の存在価値を示す道具としたいのだ。
百貨店の大荷物を持たせて付き従わせる者と、付き従う者。
そんなことでしか存在価値が示せないなんて、本当に魂が腐っている。
こんな二人と密室で同じ空気を吸うのも嫌だわ……
そう思い車の中で、私はエプロンの上で両手をぎゅっと握りしめると、1秒でも早く中園邸へ到着することを祈った。
そして、車が中園邸へ到着すると
「部屋まで運びなさい、真奈美」
言われなくても分かっているのにわざわざ言うことで
「はい」
と従う者がいることの優越感を感じる腐ったお嬢様に
「承知いたしました、遥香様」
と丁重な返事を返した……のではなく、私は奴隷を演じる。
満足そうな遥香と、じっと私を見た池田に続いて入った玄関ホールで目に入ったのは、螺旋階段の手すりにもたれかかるようにして腕を組み、私たちを待ち構えていた篤久様だった。
「池田さん、中園の家政婦を使わないでください。彼女の仕事は他にあります」
「お兄様、そんなことを言うためにわざわざ待っていたの?」
遥香がそう言ったけれど、篤久様は池田だけを見ている。
「池田さんの使用人ではありません」
「私の荷物を持たせているのよ?それに、真奈美は誰かにこき使われるのが仕事なのだから、誰が使っても同じこと。そんな怖い顔することじゃないわ」
「池田さんにお願いをしているだけです。もう一度言います。中園の使用人を使わないでください。勝手に連れ出すなど、彼女の会社でも問題になります」
丁寧ながらもきっぱりと言った篤久様の声を聞きながら、そう言えば今日は田中さんが来る日だった……と思い出す。
「彼女の上司が今、ここへ来ていますから、池田さんに今後何らかの請求を……」
「すみませんでした。以後、気を付けます」
池田は私や私の会社のことを考えたというよりは、会社の立場上、篤久様に逆らえないからとりあえず謝ったのだと思う。
「二階へは俺が運ぶ」
そう言った池田に触れないように、私はショップバッグを一旦全て大理石の上に置く。
そして
「何をやらせたって私の勝手でしょっ⁉」
と捨て台詞を吐いた遥香が螺旋階段を上がったのを追いかけるように、池田は荷物を持って二階へ行った。
「篤久様……勝手に外へ出て、すみません……」
「いや。問題ない?」
「あ……はい。湿布だけもらってきます」
「また?どうした?」
コメント
7件
この際2人落とすも3人落とすも同じ…まとめて坂道転げて落ちもらいましょう
篤久様、さすがです〜 クズ池田はあれとお似合いだよ、 同じ穴のムジナ、纏めて墜ちろ!!
堕としてやろうぜ…😏真奈美ちゃん😏必ず😏 ってか、池田だっせーぇ( ,,>з<)ブッ 篤久様に逆らえないの?ꉂꉂ(థꈊథ)੭ु⁾⁾いい気味だわ〜!大手ゼネコンの『下』のサブコン。どう足掻いたってあなたも『下』なのよ〜! それに比べて、さすがの中薗篤久👏あれを思いっきりスルー😁凛としててカッコいい✨きっといつもの無表情の顔で言ったんだろうなぁ✨ それにしても、優しい、甘いよね。「また、どうした?」なんて篤久様…好きなんだろうなと単純に思いたいのに、まだ思えませーん😅