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しまった……二人を堕としてやると強い決心をしながら、篤久様の池田へ対峙した時とは全く異なる表情と言葉
“問題ない?”
に思わず、弱いところを出してしまった。
「どんくさくてすみません…やっぱり大丈夫です」
一気に険しい表情になった篤久様は、サッと私を上から下まで見ると
「向う脛……腫れているな。どうした?」
こわーい顔で私を見る。
「ぇ…っと、車に乗り慣れていないので、ちょっと打ったみたいです」
「……」
「大したことはないので、外の掃除の続きを…」
「湿布してからな」
私が言い終わる前にそう言った篤久様は
「昼食も済ませてから、続きをしてください」
と添えた。
「え……どうしたの、桑名さん?」
ワンピースの裾から覗く湿布を見て、田中さんがキッチンの椅子から立ち上がって私を座らせた。
「大丈夫です、打ち身なので」
「外出を伝える間もなく、桑名さんが遥香様たちに連れ出されたみたいだって、運転手さんから篤久様に連絡があって、篤久様から私にも連絡をもらったの」
「……その通りです。今、篤久様が池田様へ注意してくださったので、今後は大丈夫です。すみませんでした」
「桑名さん、ここでいい?住み込み希望のまま、他を探す?」
「いえ。やっと慣れてきましたから……広瀬さんたちとも、ご主人様たちとも」
「そう?でも桑名さんがそう言っても、次に私の目に余るようなら勤務先の変更を考えます」
それは困るのだけれど……
「わかりました……」
会社としては当然のこと。
もう私にはあまり時間はないのかもしれない。
昼食後、外の掃除の続きを終えてから、道具を元に戻そうと裏へ向かう。
「真奈美」
帰るところだったのか、池田の声がして振り向くと、彼はキョロキョロと周囲に誰もいないことを確かめるようにしながら歩いて来た。
私は戻そうとしていた箒を両手で持ち、胸の前で構えると
“この男も堕とすために頑張るわ”
と心の中で気合いを入れた。
「ちょっと気になって調べた」
「何が気になりましたか?」
「真奈美」
いきなり何を言っているのか、この男は……
「どうして嘘をついた?」
まずい……この男にここで会った日よりも状況が悪くなっている。
「嘘……?」
「親、離婚していないだろ?川辺真奈美のままなのに、どうして桑名と名乗っている?」
耳から聞こえる音と、ねっとりとした視線が不快で、私の思考は停止した。
「何か理由があるんだろ?」
「……」
「偽名、黙っておいてやるから俺の愛人になれよ、真奈美」
「はっ?絶対に嫌ですっ。そんなのならない」
「頭を使って生きろよ。真奈美の父親、冤罪事件の被害者だって?」
池田……どこまで調べた?
「だから高校生の時からバイトしてたのか?頭が弱いのは親子揃ってか?」
「何を言ってるの……?」
「普通は事件になんて巻き込まれないだろ。バカは遺伝するんだな」
許せない……親のことを馬鹿にされるのは、私にとって一番の苦痛よ。
「そんな顔するくらいなら、大人しく俺の愛人になれよ」
「バカと言ったり、愛人と言ったり、アナタは何がしたいの?」
遥香が起こした冤罪事件だとは知らないようで、ほんの少し落ち着いた私は、腐った池田の真意を聞きたいと思う。
「俺、人生でフラれた経験って真奈美だけ。生意気だよな……ほんと」
「だから?」
「見た目はいいし、愛人にして飼ってやろうかって」
「それはフラれた腹いせですか?」
「否定はしない」
コイツも魂が腐っている。
私は箒が折れそうなほど、強く両手を握った。
コメント
8件
池田も坂道転げげ落ちろ
調子に乗るなっ‼️‼️‼️クズがって💦💦💦いう場面よね‥通常は‥けど‥まぁ様作品は違うのよね‥どの角度からくる? ウフフ‥楽しみ♡
怒りで震えるー😠😠😠 本当に魂が汚れてる、もうガマンしないで欲しいです😣😣😣