テラーノベル
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一人でトツトツと歩いていく。楽しい気分なのに、何も考えていない気分がする。不思議だな。
歩く道はハッキリとしてるのに、ぼーっとした風景。綺麗だなって、思うのに、”綺麗”がわからない。
鼻歌を歌ってみる。何の曲かはわからないけど。小さいメリーゴーランドの馬に乗って、目を閉じてみる。
嗚呼、楽しいなぁ。
ピンクの風景に身が包まれて、胎内のような安心感。眠たくなる。
おかあさん、
口がはくはくと動くが、声は出ない。でも、喋れてる気がして、嬉しかった。
たのしい。たのしいね、
独り言のように、譫言のように、莫迦のように。でも、それがたのしかった。
もどりたい
何に?
わからない
そっか。
全て独り言。ひとりぼっち。かなしいな でも楽しい。
めめ、
声が聞こえる。何も音は無いのに。その人の声だけ。いつの間にメリーゴーランドはなくなっていた。
めぇめ、めめ、めぐろ
はっきりとまではいかないが、ぼやけた、霧のかかったような……
めめ。
ハッとした。ハッキリと、ハッキリとした声で、背後から。
振り返れば、長身の男の子。
めめ、
手を差し伸べている。
めぐろ、
前から声がした。誰かも分からないのに、知ってる人だった。
めめ、いかないで、こっち、こっちだから、
そっちへはいっちゃだめだよ。きて、こっちに、
2人に挟まれ、手をさしのべられる。
男の子より、”あっち”の方が安心した。黒髪のこれまた長身の男。
男の方へ踵を返した。
めめ…
背後から聞こえる男の子の声が、か細くなった気がした。そのまま歩こうとしても、足が進まない。仕方なく、振り向く。
男の子の目から、綺麗な涙が落ちていた。きらきらしていて、とても魅力的な。
嗚呼…だめだな、
その子を放っておくことが出来なかった。今すぐ、抱きしめて撫でて、大丈夫だと言ってやりたくなった。
後ろから声が聞こえたが、もう頭には入らなかった。
「大丈夫だよ」
やっと、音になった気がした。
コメント
2件
なんか、、、最高すぎて、気づいたらいいね100にしてた😿👍🏻