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サイド トキ
深夜のネオン街をただ歩く。その灯りにどこか安心感を覚えてしまっているのは何故だろうか。そして、いつ頃からそう思うようになったのか。
なるべく早くあの子たちの元に戻るつもりだったのに、随分と仕事が長引いてしまった。
今は母さんも入院しているし、アイツもいないので急ぐ必要もないのだけど、いつもの癖でつい薄暗い路地裏の近道を歩いてしまう。
そのときだった。
……泣き声?が聞こえる。しかも、多分子どもの。
目を凝らすと、少し向こうにうずくまっている少女を見つけた。
「えっと、大丈夫?お父さんやお母さんは?」
瞬間、ビクリと少女の肩が跳ね上がる。怖がらせたかな、と思ったけど、少女は直ぐに何かに気づいたようにまた顔を伏せた。
「……大丈夫だよ。パパとママは死んじゃったけど。ユズもモンダイジだから、頑張れるもん」
死んだ?!
いや、それよりも……モンダイジ、だって?
改めて目の前にいる少女を観察する。
ぼろぼろになった服に、色褪せた桃色の帽子。そして、見覚えのある大きな瞳と顔立ち、茶色の髪。団長さんとよく似ている。
「ごめん、君の名前教えてもらってもいい?」
「?ユズ?ユズはユズだよ。キノ ユズユ」
キノ……団長さんと同じ名字だ。やっぱり、モンダイジ団と関係があるのか?
でも、僕が六人目だって団長さんが言っていたし……僕も知らない団員がいないとも言い切れないけど……。
「えっと……とりあえず、僕の家に来てもらってもいいかな?ご飯とか、お風呂とかあるから」
「……知らない人について行くなってママが言ってた」
しっかりしてるなぁ。まあ、これじゃ僕の方が誘拐犯になるし、しょうがないかと苦笑する。
「ユズユちゃんは知らないと思うけど、僕もモンダイジ団の一人なんだ。団長さんやタエさんに助けられたんだよ」
「ホント?!」
「はい。簡単なものだけで悪いけど」
「全然!……久しぶりにこんな普通のご飯食べた……!」
……本当に、簡単なものしか出していないのに。
この子は、どれだけ今まで辛い思いをしてきたんだろう。どんな事情があって、路地裏にいたのだろう。
深くは聞かないことにした。そのかわり、僕はユズユちゃんの頭をそっと撫でる。
「今までずっと、よく頑張ってきたね。お疲れ様」
「……ぅ、ふぁああぁんっ……!」
徹夜なんてあの頃に比べたらずっとマシだ。
その日はずっと泣いてるユズユちゃんのことを慰めていた。