テラーノベル
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月明かりだけが白く差し込む深夜の練習室で、ふみのりは一人、フロアの上に座り込んでいた。
「……っ、ふぅ……」
誰もいなくなった空間に、浅い呼吸音だけが響く。頭の中には、うまくいかなかった振りの確認事項や、リーダーとして背負うべき言葉、グループの未来についての思考が渦巻いていた。完璧でいなければいけない、みんなを引っ張らなければいけない——そんな思いが強くなればなるほど、心の中に冷たい重石が積み重なっていく。
最近はろくに眠れていなかった。メンバーの前ではいつも通りに笑い、明るく振る舞っていたけれど、内側では限界の音がパチンと音を立てて弾け飛んでいた。押し殺していた感情が、喉の奥をぎゅっと絞めつける。膝に顔をうずめた瞬間、溢れ出た涙が練習室の床にポタリと落ちた。
一度こぼれた感情は、もう止められなかった。声を漏らさないように歯を食いしばるけれど、身体の震えは収まらない。全部を一人で抱え込み、暗闇の中に放り出されたような孤独感に押し潰されそうになっていた。
その時、静かな部屋にカチャリとドアの開く音が響いた。
「あれ、やっぱりまだいた……ふみくん?」
足音が慌ただしく近づいてくる。顔を上げられないふみのりのすぐ隣で、衣類がすれ合う音がして、誰かが床にしゃがみ込んだ。ふみやだった。忘れた上着を取りに戻ってきた彼が、うずくまる人影に気づいたのだ。
「ふみくん……どうしたの、大丈夫?」
いつもより少し低い、けれど器の大きな穏やかな声。ふみのりは必死で涙を拭おうとしたが、視界は滲んだままで声も出ない。
「ごめん……なんでも、ないから……先、帰って……」
絞り出した声はかすれ、しゃくりあげてしまう。隠し通すことなんて不可能だった。ふみやはそれ以上何も聞かず、ただ静かにふみのりの肩に手を置いた。そして、ゆっくりとその体を抱き寄せるようにして、隣に座り直した。
「なんでもなくないでしょ。いいよ、もう無理して笑わなくて」
ふみやの手のひらから伝わってくる温もりが、ふみのりの固まった心をゆっくりと溶かしていく。
「いっつも一人で全部背負おうとするんだから。俺たち、仲間でしょ? BUDDIESのリーダーはふみくんだけど、ふみくんを支えるために俺たちがいるんだよ」
背中を優しくトントンと叩くリズムに合わせて、ふみのりの涙は堰を切ったように溢れ出した。声を殺すのをやめ、ふみやの肩に顔をうずめて、子供のように声を上げて泣いた。苦しかったこと、不安だったこと、怖かったこと。具体的な言葉にはならなかったけれど、涙としゃくりあげる声のすべてを、ふみやは黙って受け止めてくれた。
どれくらいの時間が経っただろうか。部屋を包む静寂の中で、ふみのりの呼吸が少しずつ落ち着いていく。
「……ごめん、服、濡らしちゃった」
「そんなのどうでもいいよ。ちょっとは楽になった?」
ふみやが覗き込むようにして笑う。その笑顔には、いつものやんちゃさではなく、深い優しさが満ちていた。
「うん……なんか、すごく軽くなった」
ふみのりは目元を赤くしながら、小さく息を吐いた。一人で暗闇を走っていると思っていたけれど、振り向けばいつだって一緒に走ってくれる仲間がいたのだと、心から実感していた。
「よし、じゃあ帰ろ! 今日はもう何も考えずに寝るの」
ふみやが立ち上がり、ふみのりに手を差し伸べる。その手をしっかりと握り返しながら、ふみのりは深く頷いた。
「ありがとう、ふみや」
「お互い様でしょ。ほら、帰ったら美味しいものでも食べて寝よ!」
夜の街へと踏み出す二人の足取りは、練習室に来たときよりもずっと確かで、温かいものになっていた。
コメント
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ふみのりのリーダーとしての孤独とプレッシャーがすごく伝わってきました…。誰もいない練習室で一人泣くシーン、胸が締め付けられるようでした。でも、そこにふみやが戻ってきてくれて、何も聞かずにただ隣にいてくれたのが本当に温かくて。「無理して笑わなくていい」って言葉が、彼女の全部を認めてくれてる感じがしてぐっときました。BUDDIESってグループの絆、これからもっと見てみたいです。