※ノベル「俺だけの」のスピンオフです!
長いですがぜひそちらからお読みください!
今年は例年より雪が多い。
世間は少しずつ浮き足立ち、街並みが鮮やかに彩られる。
その街並みにほど近い大きな一軒家にyaとurがいた。
バカをやりつつ、口喧嘩しつつも仲良く暮らしている。
「ぅおー!!」
ドタドタドタドタ!バァン!
「おぃyaくん起きろ!寝坊だぞ!」
「ンァ…!?、、マジかよ!urお前なんで起こさねーんだよ!!」
「俺も今起きたんだよ!!」
yaとur、朝に弱すぎる2人は揃って寝坊した。
今日は出かける予定がある。
jpとttの家で、少し早めのクリスマスパーティー兼jpの誕生日会をするのだ。
「ねぇyaくん、俺のマフラー知らねぇ?」
「これか?ほら」ポイ
ポフ
「…あ、…ごめん」
ふとした時にやってしまう。
urは左目が見えない。
その左側からマフラーを投げてしまい、顔面に被せてしまった。
urは気にしていないようで、yaの失態にもいつも通り、笑顔だった。
「お!ありがとう!」
足早に準備し揃って家を出る。
駅へは歩いてすぐだ。
スッ
「…いつもありがとな、yaくん」
「?なにが?」
yaはurと歩くとき、必ず左側につく。
もうほとんど無意識な習慣となっていた。
urが私用で出かけるときも必ず付き添おうとする。
はじめこそ少し煩わしくも思えたが、2人で駄弁りながら歩くのも悪くない、と最近は感じていた。
しんしんと雪が降り、吐く息は白い。
あまりの冷え込みに2人はコンビニに入った。
「お前ココア?お子ちゃま〜♡」
「うっさ」
ドリンクをレジに出すと、見知った店員がおずおずと声をかけてきた。
「あ、あの、、時々来られますよね、、、ずっと気になってました、、、。よかったら、これ、、」
「え、おれ?」
「…」
女性店員はurにかわいらしいミニレターを渡してきた。
多分、LINEのIDとかなんか書いてあるんだろう。
urはニコニコしながら受け取った。
「まいったな〜♡また女の子に声かけられちったよ♡」
「…中身知ったらドン引きされるだろうけどな」
「なになに〜?もらえなかったからって拗ねちゃって♡」
ガシガシと頭を撫でられたyaは憮然とした表情をしていた。
(別に、ほしくないし…)
じゃあこのイライラはなんだろう?
器が小さいのは自覚しているけど、今は別に拗ねる場面じゃなくないか?
モヤモヤを抱えたまま30分ほど電車に揺られ、とある駅で降りた。
道中にあった洋菓子店で予約していたケーキを受け取り、まっすぐ白いマンションへ向かう。
インターホンを鳴らすとすぐに扉が開き、jpとttが揃って出迎えてくれた。
「いらっしゃ〜い!」
「寒かったやろ?はよ中入り」
「おじゃましまーす、、ってすげー!」
「うぉ、これほんとお前らがしたの?」
テーブルからはみ出しそうな程のご馳走が並んでいる。
挨拶もそこそこに、パーティーが始まった。
yaはコーラ、urとjpはハイボール、ttは梅酒。
1時間も経てばアルコール組は出来上がっていて、ttに至ってはjpの膝枕で寝ていた。
「…でさぁ、外来リハビリの担当の人が綺麗でさぁ〜♡」
「しかも人妻なんだよ〜燃えるねぇ〜♡」
「人妻ぁ!?だめだめ、絶対手ェ出しちゃだめだよ!」
「わぁってるよ!でも向こうから来たなら止められないよね〜♡」
近況報告の流れで、urは調子に乗ってモテ自慢を始めた。
リハビリスタッフの事はyaも知っている。
悔しいけど、本当に綺麗で聡明そうな、urにお似合いの女性だ。
コンビニ店員のあの子も、大きな目と赤らめた頬で手紙を渡す様子はすごく可愛らしかった。
「…」
「…yaくんはどう?最近?」
jpはトロンとした目でyaを見た。
「俺は…別に、普通かな」
「ふつう〜?なんか元気ないように見えるけど、、」
「そいえばさっきさぁ、俺だけ女の子に声かけられて」
「相手されなかったからってこいつ、ずっと拗ねてんだよ」
「そうなの?」
「(イラッ)拗ねてねーようぜーな。勝手に妄想すんなバカが」
「ほら拗ねてるでしょ?子どもなんだよ全く」
「子ども扱いすんな!」
「まぁまぁ喧嘩しないで。tt起きちゃうよ」
「ぅ〜jぁpぁ〜、、みず〜、、パイナップル食べたい、、アメリカンドッグも、、」
「ほら起きちゃった。とりあえず水飲んで」
「コンビニ行こうよurりんっ。yaくんはttよろしく!」
jpはttをそっと膝から降ろし、めんどくさがるurを引き摺るように買い出しに出かけた。
「…クソur」
拗ねてるのもわかってる。
でもなんで拗ねてるのかはわからない。
urは女の子大好きだしモテるのは周知の事実で、俺には関係ないはずなのに。
「…yaくん」
「tt大丈夫?」
ttはむくりとこたつから起き上がり、梅酒を一口飲んだ。
「大丈夫、全然酔ってへんよ。yaくんが不機嫌なの最初っからわかっとったし、その原因は絶対urだから。鈍感なjpごと外に出そうと思って酔ったふりしてた」
「…さすがだね。」
「俺、よくわかんないけどイラついてんだよ。」
「urに煽られてイラつくのもあるけど、、それだけじゃない気がする」
「それあれやん、やきもちやろ」
じゃがりこを摘みながら、さも当たり前、という口調のttはあっけらかんに答えた。
意外な答えにyaの声は思わず裏返る。
「やきもちィ?俺が?誰に?」
「yaくんがurに。イライラするのはurに近づく女に。」
「お前わかりやすいんだよなあ。なんでurはわからんのやろ」
ttは呆れたようにため息をつく。
yaは益々わからなくなった。
「???」
「どゆこと???」
「ま、お前はもっと自分とurに素直にならなあかんな」
「コンビニはすぐそこやし、2人もそろそろ帰ってくるやろ。 とりあえず楽しもうぜ」
ttはニッと笑った。
理解が追いつかないya は頭上にはてなマークを浮かべていたが、ttお得意の盛り話や冗談を聞いているうちに、先ほどのイライラが少しずつ晴れていくのを感じていた。
「ただいま〜!tt大丈夫?」
「yaくんも留守番ありがとー!」
「「おう」」
「ほらyaくん、大好きなななちき買ってきたぜ〜」
「えー!urお前ナイスすぎんだけど!」
笑い合い、語り合い、ご馳走もたくさん食べて、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
「ほんとに帰るの?泊まってけばいいのに」
「冗談言わないでよ。ttさんはもう俺ら見えてないんだよ?」
「jぁp、、♡はよベッドいこ、、?♡」ギュ
「tt飲み過ぎだろ、、」
「tt、、♡じゃあ、2人とも気をつけてね!」
「へいへいご馳走様、おやすみバカップル」
「jpさん、ttさん、ありがとう!」
「きぃつけてなぁ〜、、♡」
終電に合わせて2人はjp達の家を後にした。
昼間よりも冷たい風が2人の間をすり抜けて行く。
「…」ブルッ
「大丈夫?」
「さむ…」
「yaくん、こっち向いて」
フワッ
urは巻いていたマフラーをyaの首にそっと巻いた。
微笑みながら、yaの頭をあやすように優しく叩く。
「痩せっぽちなんだから、体は大事にしろよ」
「はぁ!?お前余計な、、、!」
(もっと自分とurに素直にならな)
素直…
「…」
「…ありがと」
「どーいたしまして!さ、終電行っちまうぞ!」
冷たい風を避けるように、2人の距離は少しだけ近づいていた。
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