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Tetra・Origin 〜白銀の黎明〜

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Tetra・Origin 〜白銀の黎明〜

31 - 第二十八話 皇都血戦 4 Side Rinon

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2023年07月22日

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皇国の専属傭兵にて、鋼糸使いのリヴァル。やはりあの時、アリアの攻撃から逃れていたか。

それにしても、何か様子がおかしい。

……まさか、ブーストドラッグの類でもキメているのだろうか。


「悪いけど、君に構っている暇は無いんだ。お暇させてもらっても良いかな」


私が絡みついていた鋼糸を断ち切り、アリアの後を追おうとすると、


「ま、待てェ! あの女に博士は危害を加えるつもりは無い!」


「……どういう事?」


確かに、戯神はアリアに攻撃はしていなかった。とすると、やはり私とアリアの分断が目的だったか?


「博士はあの女、アリアンロード・アウグストゥス・アウローラと二人きりで話したいと言っていた」


「博士っていうのは、先程の戯神の事?」


私がそう問えば、リヴァルは首を傾げた。


「戯、神? 博士は博士だろう。

……ソレよりぃぃぃ!! んな事よりぃぃぃ!! 俺は、俺はぁぁぁ!! お前を愛しているうううう!!!!」


「はあ? キミは何を言っているんだ? やはり何かキメているのか?」


完全に思考がおかしくなっている。明らかに錯乱している様だ。

それに……愛だって? 今までそんな事、異性に言われた事は無かったけど、初めて言われたのがこんなイカれた相手だとは、少しショックだな。

とはいえ、あまりこんなところで時間を掛けたくは無い。


――やはり、リヴァルを倒してからアリアの方へ向かうべきか。


「銀嶺! 俺はお前を愛している。愛しているんだぁぁッ!! だから……」


リヴァルの背後から、ラバースーツを着た男達がぞろぞろと現れる。が、何か様子が変だ。


「死ねェェェッ!!!」


「ッ!?」


ラバースーツの男達が宙に浮くと、私に向け一斉に銃を構えだした。

リヴァルの異能。不可視化した鋼糸で、男達を傀儡人形にしているかもしれない。


(あれだと仮に、操られている者を斬っても、肉体ではなく肉片を操ればいい訳だから、操作に支障はきたさないか……? となれば、狙うは糸か、それともリヴァル本人か)


私は蛍火嵐雪を脇構えに構えると、全身に命気を纏う。

私が臨戦態勢に入ったと見たか、ラバースーツの者達が一斉に引鉄を弾き、銃弾の雨が降り注ぐ。

銃撃の音と同時に私は強烈に踏み込むと、殺到する銃弾と入れ替わるように一気に間合いを詰めた。


――歩法、瞬。またたき


またたく間にリヴァルに肉薄すると、私の動きを察知していたのか、凄絶な笑みを浮かべながら鋼糸を振るってくる。


「ヒハハッ! お前がそう動くのは読めていたぞ。これも愛のなせる技だな!」


「さっきから、気持ち悪いんだよね! 君さ!!」


私は地面をスライディングして滑り込み、鋼糸を回避すると共に、リヴァルの足元を薙ぐように太刀を払う。

リヴァルは脚から鋼糸を撃ち出し、太刀と足首の間に糸を張り、太刀が鋼糸を切断していく僅かな抵抗を受ける間に跳び上がると、私の斬撃を紙一重で回避した。


私は斬撃の勢いを使い身体を回し、宙に舞ったリヴァルに向けて上段蹴りを放った。

私の動きに反応できていなかったのか、リヴァルの脇腹を蹴り飛ばし、邸宅の中へ吹き飛ばした。


「今の手応え、身体に鋼糸を巻きつけていたか」


筋肉よりも硬く締まったものを蹴りつけた手応えを感じ、やはりリヴァルは私の動きを予測している様な攻め方をしている気がした。


リヴァルを蹴り飛ばした邸宅を見ていれば、背後から傀儡達が銃撃を繰り出してきた。


「一息つく暇もないな」


私は転がり込む様に銃弾を回避し、リヴァルを吹き飛ばした邸宅の中に入り込んだ。


その瞬間、暗い邸宅の灯りが一斉につき、内部が明らかになる。


「ようこそ花嫁。我がゼルヴァ邸へ」


私の視線の先には長いテーブルがあり、その上には数々のご馳走が置かれ、エントランスの奥には、何故か白のタキシードに着替えていたリヴァルが手を広げている。


私に蹴りとばされ、ここに私が入って来るまでに急いで着替えたというのか? ……やはり、イカれている。


「私がもし、此処に入って来なかったら、この妙な催しも寂しい事になってたんじゃないの?」


太刀を霞に構え、視線と共に鋒を向けるとリヴァルの唇は、にたり。と弧を描いた。


「来るさ。必ず来る。だって俺達は愛し合っているのだから」


「君のそのノリ、いい加減に辞めてもらっていいかな? こっちまで頭がおかしくなりそうだ」


私が不快を表し、眉を歪めるとリヴァルは傍らにあった純白のウェディングドレスに手を這わせた。


「どうだ? お前に似合いそうだろう。お前達が皇都に来ると知り、急ぎ作らせた物なんだ。このドレスの胸元のレースは鋼糸で編まれている。俺に心を捧げた……という暗喩だ。中々の趣向だろう?」


「私の話を聞いていたのかな? 止めろと言ったんだ」


私が殺気を叩き付ければ、リヴァルはやれやれといった感じで立ち上がった。


「思った通りなかなか素直になれないようだな。やはり、一度屈服させ女のよろこびでも与えてやれば、少しは素直になるのだろうか……。そうだ! 初夜はこのドレスの上で過ごすとしよう。お前の聖なる血の花で純白のドレスの薔薇を染めようじゃないか」


ぞわぞわと背筋に寒気がおこり、全身に鳥肌が立っていく。

本気で言っているとすれば、イカれているのに加えて相当な変態だ。


「あぁ……! もう、気持ち悪いなぁ!」


肌が粟立つ感覚を振り払い、私は命気を練成する。


「行雲流水・命斬一刀」


私は、白銀の命気と苛立ちを太刀に纏わせ、上段に大きく振りかぶった。

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