春
別れと出会いの季節
俺にとっては最期の出会いになる
「 やぁ 、戸田 」
眼鏡をかけた知的男子風 、漣が控えめに手を振る 。
「 誰だっけ 」
冗談混じりで言うと
「 隣の席の漣なんスけども」
と頬を膨らませて可愛らしい 。
昔 、この桜の木の下で出会ったことを覚えていないようだ 。
小学生の頃 、この桜の木の下で
お前としたキスは無いものにされているらしい 。
「 俺さ 、小学生の頃 この桜の下でキスしたんだ 」
そうわざと言ってみた 。
「 マセガキじゃねぇか 」
その言葉そっくりそのまま返してやる 。
お前からキスしてきたくせに 。
あの時の潤んだ瞳は今でも俺を乱してくれる 。
「 まぁ、俺もしたことあんだけど 」
「 え 」
「 家の前で 、ツインテールに結んだ可愛らしい女の子」
俺じゃねぇのかよ 。
「 なぁ 、こっち見ろよ 、何怒ってんの ?」
そう言われてムッとした顔をして振り向いた 。
ちゅ
小学生の頃聞いたあの音が耳に飛び込んでくる 。
それと同時にお前の潤んだ瞳が俺を見る 。
「ばーか 覚えてねぇわけねぇだろ 」
口を離す時 、眼鏡が当たり 、
カチャと音を立てる 。
「 だって、ツインテールの女の子とキスしたんだろ ?」
「 は? 戸田覚えてねぇの? 」
「 何をだよ 」
「 それ遊びでツインテールした時の戸田のこと 」
「 ははぁ?」
記憶から抹消したあの、ツインテールの俺がポンと頭にインプットされた 。
そして、俺のことを抱きしめ 、愛おしい顔でキスしてきた 中学生の漣の顔も。
「 もっかいしとく ? ツインテールで」
「 馬鹿じゃねぇの ?」
この出会いは 、人生で最初で最期の出会いである 。
この桜の木の下は 、俺ら2人が恋をした濃いピンク色の花だった 。
4月
end
コメント
1件
初コメ失礼します! 天才ですか神ですか!? もう脳みそ欲しいです タイトルとかセンスありますよ フォロー失礼します🙏