「由一、配信でもする??」
「いいよ〜、何すんの?」
「んー、ゲーム実況でもする?」
「おけ、パソコン準備してくる」
みんなが翔の入学式に行っている間に尚人と2人で配信をする事になった。
そう、俺たちはYouTuber。
基本はゲーム実況とか、雑談とかをしてる。
「久々だな、由一と2人の配信とか」
「そうだねー、俺大体亮くんとやってるから」
「メンバー全員の動画、また撮らなきゃなぁ〜」
「やっぱそれは翔の入学祝いとして全員の配信でもいいんじゃない?」
「メンバー全員の配信ってあんまりやった事ないけど?」
「まぁね..慶一郎さんと亮くんも忙しいし」
慶一郎さんと亮くんは、俺たちの為に働いてくれている。慶一郎さんが立てた会社だから、俺達もたまに手伝ったりする。…そんなに出来ないけどね。大学生で起業って、本当に凄い。
「おっしゃ、準備出来たぁッ!」
「よし、Xにも投稿しといたからもう付けていいよ、なおすけ。」
「おっし、はじめよかー」
それぞれの呼び方も配信用にして、開始ボタンを押す。
配信を見てくれているリスナーさんからコメントが来る。
尚人と一緒にエペをやっているうちに初めの頃を思い出す。
「もうすぐ1年記念かぁー…」
「早いな…」
「…しみじみw」
「あははw」
〜約1年前〜
「全員来たけど…?」
心配そうに俺の顔を覗き込む慶一郎さん。
孤児院でいつも一緒にいた5人を、慶一郎さんの家に集めてもらった。
「ありがとう慶一郎さん、」
「どうしたの?由一から集めるとかあんま無いじゃん」
「いや、ちょっと相談があってさ」
何から話せばいいのか分からなかった。
こんなに大きい話をする事も無かったから。
喉の奥がキュッと閉まる感じがした。
「あ…の….」
これ以上言えなくて。上手く話せる気がしなかった。そんな時、
「…そんなに焦らなくても大丈夫だから、な?」
亮くんがそう言ってくれた。ふっと緊張が解けて、話し始めることができたんだ。
「…俺ッ…YouTuberになりたいんだッ…」
予想外な俺の言葉に皆キョトンとする。
「そりゃまた…急だな」
「どうして?」
まずは否定されなかった事にほっとする。
「俺…やらなきゃいけない事があるんだ」
「それは言えないのか?」
「…うん…ごめん」
「…」
納得がいかない顔で黙る尚人。
そりゃそうだろう。理由も言わないのに突然YouTuberになりたいなんて言い出したら。
「そんな簡単に賛成は出来ない…かな」
「…うん」
「お前にはそんな金ないだろ?そこんとこ…」
「…俺が出す」
「え…?」
俺を諭そうとする慶一郎さんの言葉を遮ったのは、亮くんだった。
「…由一にはちゃんとした、機会を与えるべきだと思う。…費用なら、俺が出す。俺も働いてるから多少なら出せる…」
「え…?いや、俺が自分で働いて…」
「お前まだ高校生だろ」
「でも…」
流石にお金を出してもらうのは申し訳なさすぎる。なんでそこまでしてくれるのか…。
「まぁ…亮がそこまで言うなら反対はしない」
「ねね、俺らも一緒にやるのは駄目なのー!?」
「…え?」
翔がソファから身を乗り出して言う。
「え、ちょ、俺そんなすぐに始める気は無かったんだけど…」
「俺も…由一がやるなら、ちょっとやってみたいかも…」
「廉まで!?」
あまりそういう事をやりたがらない廉までそんな事を言い出す。
「じゃあ俺も俺も!もちろん亮もやるよな!?」
「…わかったわかった、俺もやるから」
「慶一郎さんは…?」
きゅる、と上目遣いで廉が慶一郎さんの事を見る。
「あ”ぁー、もう、良いよ、やるやる。」
翔と尚人が歓喜の声をあげる。
「…良かったな、由一」
ふっと笑ってくれた亮くん。
「…ありがとうッ」
この人のおかげで今の俺があると言っても過言では無いと思う。
この出来事から1年。
今、俺たち6人のグループは、登録者数70万人の有名グループになっている。