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izw×fkr
izw視点
九月八日。
俺はいつも通り会社のドアを開けた。
『お疲れ様でーす』
福「おつかれ、伊沢、来たんだ」
『あぁ、まぁな』
『来る人が少しでもいるなら俺も来ようと思ってな。』
福「伊沢は、大切な人と過ごさなくてよかったの?」
『ふくらさんも来てんじゃん』
そう、今日、世界が終わる。
八月某日。
地球に隕石が近づいているというニュースが報じられた。
現代の技術ではどうにもならないらしく、真っ直ぐ地球に向かっており、避ける方法はないらしい。
衝突した時、地球は爆発して、地球上の生物は全て死滅するらしい。
報じられた時は大変な騒ぎだった。
死に急ぐ若者を中心とした人々が、罪のない人々を巻き込んで騒ぎを起こし、勝手に死んでいった。
しかし、じきにそれも収まり、二、三週間後には穏やかに最期を迎えようとする人々だけが残った。
そして今に戻る。
須貝さんや河村さんは家族で過ごしているらしい。
鶴崎や山本、東兄弟は実家に帰省しているとか。
オフィスに残っているのは俺とふくら、そして何人かの社員だ。
撮り溜めした動画を地球最後の日だというのに広辞苑片手に校閲している。
それでも何人もが昼を過ぎると帰っていく。
8時をすぎた頃には残っているのは俺とふくらさんしかいなくなっていた。
『みんな帰ったけど、ふくらは帰らないのか?』
福「伊沢こそ。」
「最後の瞬間、俺と一緒でいいの?」
『いいに決まってるだろ、ほら、残りの動画あげようぜ。』
照れ隠しのようにそうやってパソコンに目を落とす。
出来る限りの動画はあげ終えた。
福「この、八人でのクイズの動画、23時55分からプレミア公開しようか」
『でも24時には…』
福「だからね。
この動画は20分間。
最後まで希望は失いたくないし。」
そう言って微笑むふくらの顔は儚くて、消えてしまいそうだった。
23:55
【地球最後の日】QuizKnockメンバー全員でガチクイズ大会!
プレミア公開が始まった。
いつもより明らかに見ている人は少ない。
それはそうだ。
それでも、1人で過ごしている人は意外といるらしく、ぽつぽつとコメントがつく。
[最後の日まで動画出してくれるのさすがQuizKnock]
[今までありがとう]
[最後の日までお疲れ様です]
[楽しい学びをありがとう]
そのコメントを見て目頭が熱くなった。
続けることはできなかったけれど、やってきたことは無駄じゃなかった。
ふくらの方を見る。
ふくらも珍しく目元を押さえていた。
23:58
プレミア公開は続いている。
暗い部屋で、大きなスクリーンの前のソファに座る。
いつもみんなでプレミア公開やメンバーのテレビを見ていた場所でふくらと2人だけで座る。
動画をなんとなく眺めながらふくらに話しかける。
『…エントロピーってさ。』
福「どうしたの、急に」
『簡単に言うと、ものが自然に、元の状態には戻らなくなっていくってことなんだ』
福「……うん」
『今の世界みたいだなって』
『人がいなくなって、街が止まって、今まで当たり前だったものが、どんどん元には戻せなくなってる』
福「じゃあ、俺たちも?」
『……どうだろうな』
『少なくとも、今日を知る前の俺たちには、もう戻れない』
23:59
『俺が今日ここに来た理由、分かる?』
『最後にふくらさんと過ごせたらいいなって』
福「俺も」
『え、』
福「言えばよかったね 」
「変に秩序を守っちゃったね」
『そう、ね。』
気づけば距離は縮まり、そして、0になった。
画面の中ではみんなが笑い合っている。
これを撮ったのは6月。
まだ世界が終わるとは知らなかった頃。
10周年のスペシャル企画だった。
23:59:50
窓の外はありえないくらい眩しかった。
世界が終わる。
俺はふくらを抱きしめて、目を覆った。
彼が最期に見るのは俺の顔でいい。
エントロピー:物理学における状態量の一つ。物質やエネルギーが取り得る微視的な状態の多さを表す指標で、孤立系ではエントロピーが減少することはなく、不可逆な現象では増大する。
つまり、自然の中では、ものは整った状態から、より散らばった状態へ変化しやすいということ。
コメント
2件
好き...大好き...愛してます...\(^o^)/
最後の動画プレミア公開、エントロピーの話、そして「言えばよかったね」……もうね、泣いたわ。あおさん、この静かな終わり方めっちゃ刺さる。izwがふくらさんの目を覆うシーン、ずるいよ。ずっと忘れないエピソードになった🔥
130
#bl
あお
214
#問答打
あお
895
ごま油ぬりぬりんちゅ
675