コメント
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すみません!!もし良かったらこれの絵描いてみてもいいですか、、!!!?
えええ、smさん何したのか気になる、、、多分父親を、、、だと思うけど!!!!気になる!!!!! いつもいい作品ありがとうございます!!「友達以上恋人未満」から見ていますが表現の仕方が綺麗すぎて、参考にしたりしています、、!!!!
めちゃくちゃ好きです、刺さりすぎます…
※捏造
※流血表現あり
※なんでも許せる方向け
「!」
ガシャン、と食器が割れる音で目を覚ました。
どうやら寝てしまったらしい。先程まで明るかった外の景色もすっかり暗くなっていた。
窓をボーッとみていると、再び食器が割れる音がした。
何が起こったんだ…
重い体を起こすと、耳に入るのは大きな怒鳴り声。遅れて聞こえる、か細い悲鳴。
鼓膜に響く不快な音に顔を歪ませる。
両親が喧嘩をしているのは見なくても分かった。
ベッドから起き上がると、ズキっと頭に痛みが走る。
そういえば、明日は雨が降ると天気予報が言っていた。ならこれは偏頭痛か。
ため息を吐きながら、ベッド横の薬に手を伸ばす。
水を取りに、荒れているであろう1階に行くのも気が引けたから、水なしで薬を飲み込んだ。
充電したままのスマホを手に取る。画面に表示されている時刻は19時だった。
ジャージに着替えながら、スマホやら財布やらをポケットにいれる。
(…今日は一段と激しいな。)
床1枚越しに響く大きな音には目を背け、イヤフォンを耳につけた。
流す音楽の音量はMAXにして、階段を下る。
案の定、リビングは酷い有り様だった。
ベコベコにへこんだ箱ティッシュに、床に散らばる食器の破片、歪んだゴミ箱。
片付けが大変そうだった。
自分で片付けをしないなら、物を壊すのは不経済ではないか。
そんな言葉が頭をよぎるが、口に出すことはできず、早足で玄関へと向かう。
両親は喧嘩に夢中で、靴を履く俺には気づかなかったようだ。
なるべく音でバレないように、父の声が大きくなったタイミングでドアを開ける。
外に出ても、父の声は少し聞こえた。
隣の家同士は割と遠くない住宅街。
父の声や音が聞こえてもおかしくない距離なのに、誰も通報しないんだから不思議なものだ。
ふと、後ろを振り返ってドアを見つめる。
母も父も、互いの愚痴をよく言っていた。
そんなに嫌なら一緒にいる意味なんてないんじゃないか。
早く離婚してしまった方が合理的なのに。
行く宛もなく住宅街を彷徨う。
ファミレスやカラオケの選択もあったが、なんだか気乗りはしなかった。
幸い、今日の気温は2桁。
外を散歩する分には不自由はない。
ピコン、
通知がなった。
見ると、見知った名前が画面に表示されていた。
『今電話できる?暇だからしたい。』
そんなメールが送られてくる。
メールの送信主は俺と同じクラスのNakamuだった。
Nakamuは驚くぐらいお人好しで、人のことを第一に考えるような奴。
俺が家庭の話を誤って口滑らせたときも、見逃さず泣きながら話を聞いてくれた、馬鹿みたいに良い奴。
俺が家庭の話をしてからは、Nakamuと一緒にいることが増えた。
二つ返事でメールを返し、スマホをしまおうとしたとき。
すぐにスマホが振動した。
画面をタップし、応答する。
『…もしもし?』
「うん。」
『今何してんの?』
「散歩。」
『え、いいな!どの辺?』
「駅の近く。」
『俺も行っていい?』
「うん。」
『よっしゃ。』
ガサガサと、機械越しに音が聞こえる。
『10分で着く!』
「5分。」
『むり、8分はかかる!』
そんな声が聞こえて、通話は切れた。
どこで待とうかと周りを見ると、すぐ近くに公園があった。
上に覆い被さる木の葉を払って、ベンチに座る。
「スマイルー!」
ボーッと待っていると、遠くから声がした。Nakamuの声だ。声がしたほうに顔を動かす。
見ると、上下スウェットのNakamuが笑顔で駆け寄ってきていた。
「何分だった?」
「数えてない。」
「えー、なんだよ…」
あからさまに残念そうな声を出したNakamuが、俺の横に座る。
Nakamuは座るなり、お得意のマシンガントークを繰り出した。
あー、とか、うん、とか適当な相槌をうちながら、スマホを触る。
なんとなく、この状態が1番落ち着く気がした。
話を聞くこと30分。
「山登りたくね?」
「…はぁ?」
Nakamuが急にそんなことを言い出した。
「今から?」
「流石に今からじゃないわ、んー…高校卒業したあたり?」
「なんで山?」
「いやさー、この間きりやんと一緒に山のぼったんだけど、思いのほか楽しくてさー」
「じゃあきりやんと行けばいいだろ。」
「いやなんか、スマイルと行きたいなって。」
「…なんで。」
俺の言葉にNakamuは少し考えたあと、笑って言った。
「んー、なんとなく?」
「なんだよそれ…」
インドアだし、体力だってないのに、なんで俺を選ぶんだろうか。
俺というハンデを持つことで、自分をさらに追い詰める気なのか?
やっぱり、コイツの考えていることは分からない。
怪訝な目でNakamuを見ると、そんなの気にしないかのように立ち上がった。
「山登り楽しいし、ハマるよ?」
月明かりに照らされてNakamuの顔がよく見える。
でも、Nakamuの顔を見たところで綺麗とかいう感情が湧くわけでもなく、ただただ変な奴だなと思った。
「…考えとく。」
…その誘いに惹かれてしまった俺も、どうやら変な奴らしい。
Nakamuと別れ、家に向かう。
足取りは重いが、腐ってもあそこが家だからしかたない。
どんなに嫌でも家までの距離が伸びるわけもなく、俺の意思とは反してあっという間に家についた。
…喧嘩は終わったのだろうか。
ドア越しに聞こえる声は今のところない。
ゆっくりとドアを開ける。
緊張のせいか、寒さのせいか、手がかすかに震えていた。
悴んだ手で、靴を脱いでいるとき。
「!」
空気を切り裂くような悲鳴が、リビングから聞こえた。
今まで聞いた事のない、大きな悲鳴だった。
甲高いこの声は、母のものだ。
弾かれたようにリビングへ向かう。
「っ…!」
ドアをあけて目に入った光景に体が固まった。
荒らされた部屋の中央に、父と母がいる。
父は、母に包丁を向けていた。
ドラマみたいだな、と現実を受け止めきれない脳がそう思考した。
父の動きがスローモーションに見える。
父が母に向かって、包丁を振りかざしたとき。
俺は、床に転がっていた灰皿を手に取っていた。
nk視点
「さっむー…」
スマイルと別れたあと、近くのコンビニに行った。コンビニで買った肉まんを頬張りながら、空を見上げる。
星が綺麗だった。
夏より冬の方が星が綺麗とよく言うが、どうやら本当だったようだ。
ポケ〜っと星を眺める。
スマイルにも見せてあげたかったな。
メールしようかな。この空は見ないと損だろ。
ブーッ、ブーッ、
「!」
そんなことを考えていると、レジ袋に入れていたスマホが振動した。
画面を見ると、スマイルの名前が表示されていた。
噂をすれば…!
いいタイミングだと思い、慌てて応答ボタンを押した。
sm視点
「…もしもし?」
『あ、もしもし?スマイル?ねぇ、星めっちゃ綺麗だよ!まだ外いる?』
電話をかけると、相変わらず元気のいい声が機械越しに聞こえてきた。
「…あとで見る。」
『うん、マジで綺麗。絶対見た方がいい!』
「…Nakamu。」
『なに?』
「やっぱ山はきりやんと行って。」
『え、なんで!?』
転がる灰皿、血で濡れた床、もう動かないさっきまで人間だったモノ。
まるで化け物を見るかのような目で俺を見る母。
床に散らばった割れたガラスが照明に反射して、キラキラと光っている。
部屋は驚くほど静かだった。
『えー、俺楽しみにしてたのにー!』
Nakamuの残念そうな声が鼓膜に響く。
愛のない選択は、決して良い結果にはならない。
そんな言葉が、何かの本に書いてあった気がする。
愛なんてものは知らないが、今なら、その言葉の意味が理解できる気がした。
「…ごめん。」
合理的じゃなかったのは、俺の方だった。