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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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桃視点→青視点
「まろのことが好きなんだけど」
一世一代の告白をした俺は、俯きがちだったところを目線だけ上げた。
上目遣いに相手を見据え、返答を待つ。
一瞬言葉を失った目の前の男は、それでもすぐに微笑を浮かべた。
「ん、俺も」
優しい声音が耳に届く。
「え」と目を見開いて、俺はようやく顔を上げた。
想いを伝えたいとは思っていたけれど、受け入れてもらえるとは思ってなかったから。
夢でも見ているのかと思いながら、大きく瞠った目でまろを見つめる。
「まろ…」
ほんとに?と言いかけた瞬間、目の前のまろは「なーんて」と苦笑い気味に吐息を漏らした。
「カメラどこ? どうせ隠し撮りしとるんやろ?」
続けたまろの言葉に、俺はさっきとは別の意味で戸惑いを隠せなかった。
「え…? カメラ?」
「カメラちゃうん? じゃあボイレコ? どうせドッキリやろ? 趣味悪〜っ」
笑いながら、まろは辺りをキョロキョロと見回す。
「そりゃ俺も前りうらとそういうドッキリないこに仕掛けたけどさ。同じ内容でやり返すなよ」
もう大分前の企画のことを思い出したのか、まろはそう言いながら周囲の机やソファの後ろなどを探る。
「あれ、ないなぁ」なんて間抜けな声を発するまろの言葉に、俺はもう一度顔を伏せた。
「……あるわけないじゃん、そんなもん」
呟くように言って、思わず唇を噛む。
「……もういい」
そのままくるりと踵を返して、部屋を出る。
「え、ないこ!?」
慌てて呼び止めようとするまろの声を遮断するように、俺は音を立ててドアを閉めた。
別に、両想いになれるなんて思ってなかった。
まろが俺をメンバー、相棒、家族…それくらいにしか思っていないことは分かってたから。
でも、肥大しすぎたこの想いを一人で抱えるのは辛くなってきて、伝えるだけ伝えたかった。
2人の関係が目に見えて変わるわけではなくても、自分のこの想いをなかったことにはしたくなくて。
ただそこに確かに存在した証明にと、まろ自身に伝えたかっただけだった。
なのに、まさかドッキリだと思われるとは思ってなかった。
この想いを、「なかった」ものとされることが1番辛いのに…。
それからろくに、まろと顔を合わせることはなかった。
ミーティングやら練習やらで同じ空間に居合わせることはもちろんある。
でもそれだけのことで、2人になることは極力避けた。
単純に告白した後の気まずさのようなものもあったけれど、何より悲しかったから。
「ないこ」
ある時、まろが声をかけてきた。
いつもならさっさと部屋から出て行ってしまう俺を、なんとか捕まえようとしたらしい。
ミーティングが終わった後のことで、俺が行動を起こすより早かった。
「…っ俺、次の会議急ぎだから…っ」
近くに散乱していた資料をかき集め、俺はそのまま部屋を飛び出す。
まろがどんな顔で話しかけてきたのかなんて、見る余裕すらなかった。
こういう活動をしていると、いつドッキリを仕掛けられるかなんて疑心暗鬼になるのも分かる。
でも…なにも覚悟を決めた人の告白を、そんな風に決めつけることないだろ?
悔しすぎて涙すら出てこない。
唇を引き結び、俺はぐっと胸の痛みに耐えるしかなかった。
会議室を飛び出して自分のデスクのある部屋に戻ったのはいいけれど、仕事も手につかない。
まろには「急ぎ」だと言ったけれど、次の会議なんて本当は入っていなかった。
ただやるべきことはたくさん残っているので、忙しいのは本当だ。
自分に弁解するようにそう言い聞かせながら、俺は次の仕事に必要な資料を取り出そうとした。
「…あー」
さっきの会議室に、その一部を忘れてきたみたいだ。
…どうしよう。
取りに戻るのも嫌だなと思ったけれど、物思いに耽っている間にあれから30分近くもの時間が経過していた。
いつもならメンバーはもう帰っている頃だ。
もう誰もいないだろうと思い、俺は重い腰を上げた。
鈍い足取りでさっき来た道を戻る。
会議室のドアに手をかけたところで、中から微かに声が聞こえてきた。
くすくすという笑い声と、囁くような小さな声。
何を話しているのかは分からないけれど、誰かがまだ残っているらしい。
まろじゃなきゃいいなと思いながらドアを引き開く。
そしてその先に見た光景に、俺は大きく目を見開いた。
「……っ」
「ない…こ…」
こちらを振り返ったまろが、驚いたように声を失う。
そして椅子に座ったそんなまろの膝の上には、向かい合うように座ったほとけの姿。
俺がさっきドアを開けた瞬間、2人の顔は極至近距離に近づいていた。
もう後数センチで唇が重なり合いそうな距離。
「…ごめんっ、邪魔した…っ」
開いたばかりだったドアをバッと乱暴に閉めて、俺は駆け出す。
…そうか、そうだったんだ。
「全然…知らなかった…」
まさか2人がそういう関係だったなんて。
「不仲」なんて配信上のビジネスで、本当は仲が良いことは知っていたけれど。
まさかキスするような…お互い想い合ってるような関係だとは思ってなかった。
「はは…俺、バカみたいじゃん」
俺の告白はドッキリだなんて思われたのに。
告白すら、まともに受け入れてもらえなかったのに。
逃げ出した先は普段誰も通らないような非常階段。
重いドアを閉めて、俺はうなだれるようにそこにもたれかかった。
ないこと話がしたい。
そう思っていたけれど、あの日から俺は避けられっぱなしだった。
声をかけても逃げられる。今日も例外ではなかった。
「ないこ」
ミーティングを終えて声をかけるけれど、
「…っ俺、次の会議急ぎだから…っ」
慌てて俺の前から走り去ってしまう。
…次のミーティングなんて入ってないやろ。
これでも一応ないこの予定を把握している俺は、内心でそう呟いて吐息を漏らした。
「いふくん、ないちゃんに何かしたの?」
あにきやりうらがさっさと帰っていき、会議室に残されたのが俺といむしょーの3人になった時。
ほとけが遠慮や気遣いの欠片もなくそんな声を投げかけてきた。
「は?」
不機嫌そうに眉を顰めて振り返る。
だけどそんな俺の圧なんて何でもないかのように、ほとけは首を竦めた。
「だってないちゃん、めっちゃいふくんのこと避けてるじゃん」
ここ数日ずっとそうだったので、周りが気づいてもおかしくないかもしれない。
「あんなにいふくんのこと好きなないちゃんが全力で避けるなんて、よっぽどだよね」
そう言ったほとけは、「ね、しょーちゃん」としょにだを振り返る。
「…は? なんて?」
問い返した俺の声に、ほとけは目を丸くして振り返る。
「『全力で避けるなんてよっぽど』?」
「ちゃう、その前」
驚きを隠せずに言った俺に、ほとけは「あぁー」と声を出しながらニヤリと笑う。
「いふくんもしかして本気で気づいてなかったの? ないちゃんの気持ち」
「え、あんなに分かりやすいのに!?」
しょにだまで元々大きな目をこれ以上ないくらいに見開いて驚いていた。
「…分かるわけないやん、そんなん…」
椅子に座ったままの態勢で、俺はがくりと肩を落とす。
「で、そんなないちゃんに何したのさ」
「……て…」
「え? なんて?」
消え入りそうな声で答えた俺の言葉が聞こえなかったらしく、ほとけは少し不機嫌そうに強く聞き返す。
「…告白されて、ドッキリかと思て…」
「え! まさか冗談扱いしたの!? 人の決死の告白を!?」
ほとけの遠慮ない言葉が刃のようにグサッと突き刺さった。
「いや、だって考えてみろや。ないこやで!? あのビジュやで!? え、何で俺!? 本気なわけないって思うやん」
「しょーさん…これは重度のヘタレですねぇ」
「ヘタレやねぇ」
「〜っお前らなぁっ」
わざとらしく内緒話をするかのように、こそこそとこちらを批判する2人を睨みつける。
それを物ともせず、ほとけは肩を大きく竦めてみせた。
「いふくんは根性というか度胸というか自信というか…色々足りないよね」
「うっせ」
舌を出した俺に、ほとけは何かを思いついたように急に表情を明るくした。
…嫌な予感しかしない。
「よし、チキンレースしよう」
「はぁっ?」
意味の分からない提案に、俺は思わず今日一番の大声を出した。
「しょーちゃんちょっとそっちで証拠動画撮ってて」
しょにだを少し離れた場所に待機させ、ほとけは許可も断りもなく俺の膝の上に乗る。
しかも向かい合う形だから、極至近距離で。
「いふくんの根性と度胸を養うためだよ。キスしそうになった時に、先によけた方が負けね」
「意味が分からん」
「はいスタートー」
こちらの抗議なんて汲みとろうともしないほとけの掛け声と同時に、しょにだが録画ボタンを押す音が聞こえた。
いつもより近い距離で視界に映る、水色の髪と瞳。
だんだんと近寄ってくるその整った顔が、こんなバカな遊びのくせに真顔になるものだから思わず俺は吹き出してしまった。
「はいーいふくんの負けー」
いつからにらめっこになってん。
いつもふざけたテンションの奴が急に真顔になって笑わずにいられるわけがない。
動いた俺に嬉しそうに言うほとけはそう負けを宣告した。
「いやちょっと待てや。笑ろたけどよけてはないやろ!」
「えー負け認めないの?」
「いむくん、もう一回だけまろちゃんにチャンスあげよ」
…しょにだ、お前も相当おもしろがっとるやろ。
「しょうがないなぁ。じゃあ第2回戦ね。はいスタート!」
瞬時にまた真顔になるほとけ。
それを睨むように見つめ返すと、今度は変顔をしてきた。
…だから、何でにらめっこになっとんねん。
チキンレースちゃうかったんか。
文句は内心で転がして、俺はそのまま微動だにせず耐えた。
やがてほとけの手が俺の頬に触れる。
チキンレースだったことを思い出したのか、だんだんと顔を近づけてくる。
椅子に縫い付けられたように俺は動かなかったけれど、ほとけはどんどん距離を詰めてきた。
後数センチ…いや、数ミリで唇が触れそうになった…その瞬間だった。
ガチャ、と部屋のドアが開く音がした。
驚いて俺たちは3人同時にそちらを振り返る。
そこにいたのは目を大きく見開いたないこだった。
「……っ」
俺と、目の前のほとけを視界に映して絶句する。
「ない…こ…」
名前を呼ぶのが精一杯だった。
俺が何かを言うより早く、ないこが身を翻す。
「…っごめん、邪魔した…っ」
乱暴にドアを閉めて出て行くないこ。
それを見てほとけが慌てて俺の膝の上から下りた。
「待って! ないちゃん…っ」
「俺が行く」
ほとけをぐっと押しのけて、俺は急いでないこの後を追った。
すぐに後を追ったつもりだったけど、ないこはどこにもいなかった。
別の会議室、社長室、社員のワークフロア、休憩室…どこを見ても姿がない。
外に飛び出したとは思えない。でも他にどこが…?
そう思いかけて、ふと思い当たったところが一つだけあった。
(非常階段…?)
普段ならほとんど誰も行かないような場所だったからこそ、今ならないこがいる気がした。
重い扉を開くと、そこにうずくまったピンクの髪を見つけた。
「…ないこ」
見つけたことに安堵して、呼びかける。
ビクリと肩を揺らしたないこは、それでも顔を上げることはなかった。
「話、聞いてほしいんやけど」
うずくまるないこの前に片膝をついて、俺は目線を合わせようとした。
顔を上げないから目は合わないけれど、それでも。
「…っ」
聞きたくないということなのか、ないこが首を横に振る。
そのピンク色の頭に手を伸ばした。ビクリと震える体。
髪をそっと撫でると、抵抗したり振り払われたりするような素振りがないことに少しだけホッとした。
「この前は…ほんまにごめん。ドッキリやとか言うて」
ピンク色の髪を梳くように何度も何度も撫でながら、俺は続ける。
「ないこが…ほんまに俺を好きやとは思わんかったから」
あの時、傷ついた顔で「もういい」とないこが言うまでは、きっと他のメンバーの誰かも協力しているようなドッキリだと思って疑わなかった。
「ごめん。でも嬉しかった」
そう言葉にした瞬間、ないこがまたピクと反応した気がした。
「でもさっき…ほとけっちと…」
「あれはちゃうって…! ほとけとしょにだの悪ふざけで…!」
「…しょうちゃん?」
眉を顰めたないこが、そこでようやく顔を上げる。
整いすぎた綺麗な顔が俺を見つめ返した。
「…ないこ、さっきしょにだもおったこと気づかんかったん?」
「……」
ほとけと俺のところしか見えていなかったのか、ないこはピンクの瞳がこぼれ落ちそうなほど驚いていた。
「ほとけとはチキンレースしとっただけで…」
…何で俺がこんなアホみたいな弁解しなあかんねん、と、内心でここにはいない水色への不満を転がす。
「しょにだが動画撮っとったから、見てもらえば分かるけど」
言った俺の言葉に、ないこは少し考えるように目を伏せた。
それから小さく首を横に振る。
「いい。チキンレースだとか本当はしてないだとかだとしても、まろと誰かがキスしそうな距離だったのはもう見たくない」
少し目線をずらして言うないこの言葉に、俺は自分に対するため息が漏れそうだった。
こんなないこの言葉を、何で最初から信じてやれなかったんだろう。
ドッキリだなんて思いこんで、ありえないなんて決めつけて。
「…ないこ」
顔をぐいと引っ張り、こちらに向けさせる。
そしてそのまま唇を重ねた。
「ほんまにするんは、ないこだけやで」
両手で冷たいその頬を包み込むと、ないこの目が少し潤んだように見える。
一瞬目を伏せた後、まっすぐ俺を見つめ返した。
「もう一回、して」
掠れた声で甘えてくるないこの言葉に思わず笑みが漏れた。
「ん、えぇよ」
囁くように返事をして、手をないこの後頭部に添えて引き寄せる。
薄く開いた唇で、さっきよりも深い深いキスをした。
コメント
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これ私大好きなんですよ〜💕ほんとに大好きでずっと待ってました✨🐱くんがまあ悪いよねwそれで拗ねてるというか悲しんでる🐶ちゃんも可愛い😻