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「わーすごい!!でっか!!」
俺は凪野蒼。今日は、俺の所属している組織…マジカルシークレットの任務で、この豪華客船『マリンプリンセス』に乗り込むことになった。正直とても楽しみなのだけれど、任務つきだしなぁ…普通に楽しみたかった。
さすが8月の朝…暑すぎる。
「な、凪野くん」
「あ、はい!!」
後ろから名前を呼ばれた。高い声だ。
「えっと…科が違うから一緒に仕事することはあんまりないかもだけど…よろしくね!」
「水梨…うん。頑張ろう」
「…それにしてもすごい船…私こんなの初めてみた。3泊四日かぁ…イポクリジーアの人たちも乗っているんでしょ?私と同じ誘惑科だとか」
「そうだね…頑張らないと」
「うん!」
水梨も気合いが入っているようだ。
そして、どうやら今回の任務は科ごとにまとまって行動をとるらしい。もちろん、その先頭をとるのは各科の教官たちだ。たとえば、俺のところはひらりさん。ひらりさんは、結構人をまとめるイメージがあるから、安心ができる。
まぁ、俺の家の壁をぶっ壊した前科もあるんだけどね…直してもらったけど。
「死ぬなよ、蒼」
「わっ!フェルマータ!いや、確かにちょっと心配だけどさ…いざというときはもちろんフェルマータが俺を守…」
「守るとでも思ってたのか?自分の身は自分で守る、これ常識」
「えぇ…」
フェルマータって常識あったんだ…
「蒼くーん!フェルマータ!そろそろ出発するよー!!」
「あっ、はーい!」
俺たちは、船に乗り込んだ。
「はーぁ…ちょっとー?全員いる?」
「さっきマジカルシークレットの奴と喧嘩してたのは教官ですよね?こっちはずっと前から全員いますよ」
「…エイジ…生意気な口聞かないのっ!さ、いくわよ!」
一方、イポクリジーアたちも、船に乗り込んだ。
「あの、これだけ人数がいるってことは、殺し屋の人たちって、結構人数いるんですか?」
「え?ああ…殺し屋の奴らは10人ほどの組織だ。でもこれだけの合同任務っていう理由は、やっぱりイポクリジーアの奴らだなぁ…あいつらは、私たちとは違う部類の魔法使ってくるし」
岸さんが嫌そうに顔をしかめた。
違う部類の魔法…?どういう意味なんだろう?
「まぁ、戦っていればわかると思うよ。さ、ここで掃除科とはお別れだ。ひらりのとこ行きな」
「あ、はい…」
しっしっ、と岸さんはあからさまに嫌そうにする。それはいくらなんでも酷くないですか…??
反対に、水梨は俺に小さく手を振ってくれている。
一方、俺たち普通科は、会議室のようなところへ連れてこられた。
「いい?聞いて。各科ごとに、具体的な仕事内容を確認する。まず、この船は20階建。それで6つ科があるから…普通科は1〜3階。魔法科は4〜6階。誘惑科は7〜9階。拷問科は10〜12階。殺人科は13〜16階。最後に、掃除科は17〜20階をそれぞれ担当する。なんかね、殺し屋たちは上にたくさん潜んでいるみたい。私たちも必要とあらば上へ行くわ。で、各自部屋は自分が担当している階の中の一番上。私たちは3階ね。部屋は男女別で私たちは2部屋。あとで行くから」
確かに、ひらりさんの説明だと、上へ行くごとに強そうな科になっている気がする…殺人科とか、掃除科とか。おっかなそうなの。
「医療班は10階にいるわ。主に博士理生が担当する。私たちは…そうね。まぁ殺し屋たちが真っ昼間から人を襲うことはないだろうし…夜までイポクリジーアの見張り。で、夜になったら殺し屋を見つけ出し、始末。昼間のうちに検討をつけておこっか。あと、2日目の夜は舞踏会があるから…あ、正装はこっちで用意してあるから。綺麗で動きやすそうなもの。そこで殺し屋を見つけられればいいけどね…」
なんか…怖そうだな…。やっぱり楽しいばかりのただの旅行じゃないってことか…
よし!頑張らないと!!
「はーい、ここが部屋ねー」
さっきひらりさんが言っていたように、部屋は男女別で二部屋。俺は、遥人さんと同じ。
まぁまだ1日目の朝。まずは荷物整理をして部屋で少しくつろぐ程度…
「あ、凪野は初めての大きな仕事だっけ?」
「あ、はい」
「たまに…年に数回あるんだよな、こういうの。前は豪華ホテルに潜む…いや、昔のことを掘り起こしても意味ないか。あの時は大変だったなぁ…」
「何があったんですか?気になる…」
「いつもの破壊魔法でホテルは半壊。岸さんはいい掃除ができたって言ってたけどなぁぁ…岸さんは、教官じゃ新参の方だから…って都月さんに庇われてたけど、あれは流石に…うぅ、思い出しただけで頭が…」
「あ、もう大丈夫です…」
聞かないでおこう。深掘りするのは可哀想すぎる。
でも半壊は、さすがにホテルの人も気の毒そうだな…
俺より先に荷物整理が終わった遥人さんは、しばらくベッドに寝転びながら、天井を見つめていた。
「そういえば今回の任務、誘惑科は変装をしてるんだっけ?凪野、誘惑科に仲良い奴いたよな?」
「あぁ…いますけど。なんで変装?」
「ほら、あそこの教官がイポクリジーアの人と喧嘩するからとか…まぁ理由は色々あるけどさ…あそこの科って、美少女しかいないよなー…」
「まぁ、誘惑科だし」
「そっか…」
遥人さんは天井を見つめたまま、あくびをする。
次の瞬間。
「おい蒼ー!!俺を鞄から出せっ!!」
「わっ!フェルマータ!!ごめんごめん…」
「凪野、それ何?使い魔?」
「誰が使い魔だよ…どっちかっていうと蒼が俺の手下…」
「ああああああー!!!えっと、あ、相棒的な??まあ気にしないでください…」
「誰が相棒…」
「もう黙ってて!!」
てかさっき手下とか言いかけてたよね!?フェルマータ俺のことそんなふうに思ってたの!?
「イポクリジーアの奴らの中に…あいつもいるんだよな…」
「あいつ?」
「そう、あれはまだ、俺が…」
イポクリジーアにいた頃の…
「?」
「いや、なんでもない…二度寝しよ」