「んー…あと1分だけ…」
「しっかりしてください教官ーっ!!」
遡ること半日前。
「はぁ…あれ?マジカルシークレットの奴ら、全然いないじゃない。海にでも流されたのかしらぁ…」
イポクリジーア誘惑科教官、静野魅麗は、敵を探すため、あたりを見回していた。
「でも、まぁ私たちは人数がちょーっと少ないとはいえ…こっちには毒使いのエイジもいるし?ま、大丈夫よねー」
「そういう油断がいけないと思うんですけどぉ…」
魅麗はその言葉を無視し、そのままずんずん船内を探索する。
そして、白髪の少女とすれ違った。
「…」
白髪の少女は、紫色の瞳で、きゅっと唇を結んでいた。その顔は無表情のまま、スカートを翻し、歩いていく。
その隣には赤髪の可愛らしい少女と、愛嬌のありそうな金髪の少女。
「…!」
どうやら、魅麗は何かを感じ取ったようだ。瞬時に3人組の元へ駆け出す。
一方、白髪の少女視点。
「えーと、ツノと尻尾を隠して、と…さ、行くわよ」
「は、はい…」
なんと、あの3人組は、変装をした彩、水梨、倞だった。
ウィッグを被り、アイコンタクトをしていると、別人に見えてしまう。特に彩は普段のツノと尻尾を隠しているため、今の見た目は普通の人間である。
そして、魅麗が3人を追いかけ出したとき。
(気づかれたか!!あいつあんなに勘が鋭かったっけ!?私の変装は完璧だったはずなのに…!)
「待ちなさい!!」
「だーれが待つか!そう言われて待つ人はいないんですぅー!!」
べー、とさっきの無表情はどこにいったのか…といわんばかりに彩は全速力で逃げる。
「水梨ちゃんたちはあっちに行って!!二手に分かれましょう!」
「はいっ!」
彩は右へ、他の二人は左へ行く。
「…エイジ。彩のことを追っておいて。私はまずあの二人を追う」
「了解」
…と、二人は同時に駆け出す。
「…あれ?えーっと…どなたですか?」
彩は、自分を追いかけてきた者が、魅麗でないことに少し驚く。
「えっと…エイジといいます。うーん…とりあえず死んでください」
「え?」
「教官大丈夫かな…」
「一人で走っていっちゃったけど…」
後ろに誰もいないので、半分歩いて会話をしていた水梨と倞。自身の教官は、あまり戦闘が得意でないことを知っていたため、心配をしていた。
「でも教官のことなんだからー…どうせ敵に踵落としでも食らわせてるんじゃ?」
「たしかに…」
と思い、安堵していた。
「あれ?悪魔って毒効くんでしたっけー?」
「うーん…?わかんない」
「…じゃあためしましょっかー」
「ん?なぜそうなる!?」
うーん…とエイジは考える素振りを見せる。次の瞬間。
「それにしても私、眠いのよねー。あの二人に任せて私、部屋で寝てればよかったかも」
「…あ。別にあなたを殺せとはいってないし…それに、まだ昼間なので、堂々と殺るわけにはいかないですし…睡眠の毒でも盛りますか」
「毒魔法〈ヴェレーノ〉では戦いはまた夜に。お互い誘惑科の実力を試しましょっか」
「え…?」
次の瞬間、彩の視界は歪み、眠りに落ちていったのだった。
「教官!教官ー!!死なないでー!!」
「いや多分これ…寝てるだけだと思うんだけど」
「え?」
二人は、彩を心配し、彼女が行った方向へと向かった。
そしたらこの様だったのである。
「とりあえず部屋まで運ぼ?」
「うん…」
「しっかりしてください教官ー!!」
「ん〜…あと1分だけー…」
「これ完全に寝てるね」
「いやでもこのまま永眠ってことも…」
「いや寝言言ってるんだから大丈夫でしょ」
たしかに、寝言をいいながら死んでいく人は見たことがない。
「とりあえず、教官一人置くこともできないし…誘惑科は夜まで待機だね…」
と、水梨は電話をかけ、現状報告をする。
そして、日は沈み、殺し屋たちが動き出す、夜が始まる…
掃除科と殺人科は、もうすでに動き出していた。
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