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#極道
鷹槻れん

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修太郎さんはそんな私をご覧になられて、ご自身も何故か泣きそうな……この上なく辛そうなお顔をされて……。
私の涙を拭うように目尻にそっと口付けてから、再度謝罪の言葉を述べていらっしゃる。
でも、それでもどうしてもこれだけは言わないといけないという風に、
「日織さん。お願いですから今後二度と……高橋にだけは近づかないでもらえませんか?」
そう、懇願なさった。
「――そうでないと僕は……」
そこで一旦言葉を区切られると、下着を持ったままの私の手をそっと包み込んで、「――そうでないと僕は……嫉妬でまた同じことをしてしまいそうで怖いんです」と、とても苦しそうに心情を吐露なさる。
私は、修太郎さんがどうしてそんなに高橋さんのことを警戒されるのかが理解できなくて、苦しげな表情をなさる彼を、思わずじっと見つめてしまう。
でも、修太郎さんにそう言われて思い返してみると、今までも彼は私が高橋さんと二人きりで話したりしていると、邪魔をなさりにいらしていたことに思い至って――。
私自身、お話がしやすいからと高橋さんに頼りすぎていたことを反省する。
あれでは修太郎さんを不安にさせて当然な気がした。
(でも、修太郎さん、それは誤解なのですっ)
「修太郎さん、高橋さんは私に許婚がいることをご存知です。……それに、それを差し引いても……彼は私のことを妹ぐらいにしか思っていらっしゃらないと思います……」
高橋さんには妹さんがお二人いらっしゃるらしくて……と続けようとしたら、ギュッと抱きしめられてその先の言葉を封じられてしまう。
「例えそうだとしても……。僕が、嫌なんです」
私を強く抱きしめたまま、しぼり出すようにそうおっしゃる修太郎さんの声は小さく震えていらした。
それに気付いた私は、思わず彼の背中に腕を回して抱きしめ返すと、「分かりました」とお答えしてしまっていた。
下心など微塵も感じさせない、とても優しい高橋さんには申し訳ないけれど、私にとっては修太郎さんのほうが大切で……。その彼を苦しませてしまうというのなら、そうならないように努めたい。
トン、トン……と幼子をあやすように修太郎さんの背中を柔らかなリズムをつけてゆっくりと叩きながら、そんなことを思う。
そしてこの時には理解できなかったけれど、私は修太郎さんが、どうしてそんなに高橋さんのことを気にしていらしたのか、後になって知ることになる。
***
「あの、修太郎さん……」
ややして、私を抱く修太郎さんの腕の力がほんの少し緩むのを感じた私は、恐る恐る彼から身体を離して、修太郎さんのお顔を見上げる。
そんな私の視線を受け止めてくださる修太郎さんの表情は、先ほどよりは幾分穏やかで。
「私、やはり下着を身につけたい、です……」
たとえ濡れていて心地悪かったとしても、履いていないよりは気持ち的にかなりマシな気がした。
そこまでは恥ずかしくて言えなかったけれど、多分私の言わんとしている意図は汲んでくださるはず。
そう思って彼の顔を見つめると、修太郎さんがほんの少し逡巡なさるような素振りをなさった。
この期に及んでも、まだショーツを身につけないままに仕事をしろと言われてしまったらどうしようかと思いながら見つめ続けていたら、不安で視界がゆらゆらしてしまう。
「日織さん、下着をお履きになられたとしても……。今日は僕から離れず席にいてくださいますか?」
私と同じぐらい不安そうな顔をして、修太郎さんがそうおっしゃったとき、私は正直驚いてしまった。
「……修太郎さん、それってもしかして」
そのお顔を拝見して思ったことを口にしようとしたら、その言葉を遮るように、「はい。恐らく今、日織さんが思っていらっしゃるとおりです」とおっしゃるなり、顔を横むけてしまわれる。
私が思ったとおりだとしたら。
修太郎さんが私に下着を身に付けさせたくなかった理由は……私が恥ずかしがって席を余り立たなくなることを期待なさったから、ということになってしまう。
でもそれって……。
修太郎さんはバツが悪そうに私の両目を彼の大きな手で覆うようにして視界を奪われてから、
「単なる独占欲と嫉妬心です。……恥ずかしいので……もう、見ないでください」
そう、おっしゃった。
私は彼の手の隙間からちらりと見えた修太郎さんが、お耳まで真っ赤にされているのを見て、年上のはずの修太郎さんのことを……。私にあんな恥ずかしいことを強要なさったはずの修太郎さんのことを……。不覚にも、とても愛しい、と思ってしまった。
自分でも信じられないけれど、たったそれだけで……つい今し方されてしまった、修太郎さんからの恥ずかしいあれやこれやを許せてしまうような……そんな気さえして――。
本当はもっと怒って困らせて……彼に反省をうながしたほうがいいのは分かっているのに。
好きになってしまった人に対して、私は自分が思う以上に甘々なのかもしれない。
コメント
2件
修太郎さんはやきもちやき(笑)
ああ、もうもうもう……! 修太郎さん、不器用すぎて可愛いすぎますよ……! 😭💕 嫉妬で下着を隠した理由を「独占欲と嫉妬心です」って真っ赤になって告白するところ、完全に持っていかれました。年上で余裕あると思わせておいて、実は日織さんに必死で、怖がってる——そのギャップがたまらないです。それに気づいた日織さんが「愛しい」と思って許しちゃう流れも、恋愛における甘さと弱さがすごくリアルで、胸がぎゅっとなりました。次回、高橋さんとの関係性に何か秘密がありそうな伏線も気になりますね……!