テラーノベル
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#ご本人様に関係ありません
#架空のお話
目が覚めた。
今日は何月何日?
わからない。
わからなくていい。
このまま寝室で1日を過ごしてもいいのだが、少し離れたところで充電してある携帯をふと、確認したくなって起き上がった。
誰かからメールが来ていた。
『今日家行くかも』
若井だ。
別に来られて困ることは何一つない。
『おけ』
とだけ返し、また布団に入った。
そして、できるわけもない入眠を試みたのだった。
3時間くらい経ったあとだろうか。
宣言通り若井は俺の家に来た。
傘もささず、びしょ濡れで。
「おま、なんでそんな、、」
そんな風に登場するとは思ってもいなかったので 驚いてしまった。
「もう、おれ限界なんだよ、、元貴のとこに居させて、、」
いつものメールのひょうきんな感じからは想像できない切羽詰まった表情に負けて、しばらく泊めてやることにした。
最初はただの同居だった。
あの切羽詰まっていた若井は一晩添い寝してやるとケロッと元気になり、次の日からは明るく振る舞った。
「もときー!朝ごはん!たべるよ!」
完璧に家事をこなし、ガタガタだった僕の生活を戻していく。
久しく人肌に触れていなかったもんだから、なんだか嬉しくなってしまって。
深夜に酒を飲んで、少しずつ心に溜まっていた毒を抜きあって。
そんな時だった。
「おれ、元貴のこと好き。昔も、今も、ずーっと。
もうおれ、元貴無しじゃ生きてけない。」
薄々気づいてはいた。
振り払わなければいけない。
そんなことはわかりきっていることだ。
それでも、この手を離せなかったのは僕だ。
雨が止んだ夜更け、相変わらず部屋は薄暗い。
今日も何か曲をと椅子に座ったが、思いついた瞬間消えて、思い出せなくなっていく。
今日も無理だった。
寝室に戻り、ベッドに腰掛ける。
ああ、またダメだ。
何かを察したのか、リビングからやってきた若井は僕にビールを差し出した。
「飲む?」
「、、、ん」
若井の体温で若干ぬるくなっている。
プルタブを開ける音が、部屋に小さく響く。
若井は自分のビールを一口飲んでから、ふっと息を吐いた。
「やっぱ、元貴と一緒にいると落ち着く。なんかね、外にいると、心がザワザワしてるんだけどさ、ここにいるときは、、静かになる。」
僕は何も言わずに缶を傾けた。
ああ、苦い。
ビールってこんな味だったっけ。
若井が僕の隣に腰掛けて、肩と肩が触れ合う。
以前していたようなスキンシップよりも、何倍も湿度が高い。
「元貴は?おれが来て、ちょっとでも楽になった?」
そう問う声は優しかった。
でも、その奥に隠れている欲望を振り切れるほど僕は強い人間ではなかった。
「らく、、、、だよ。」
「ひとりよりも、ずっとまし。」
その言葉を聞いた瞬間、若井の目が僅かに輝いたような気がした。
彼はベッドサイドに缶を置いて、自分の手を僕の手と重ねる。
指が絡み合う。
体温も絡み合う。
僕の体温で、若井の冷えた指先がぬるくなっていく。
「なら、よかった。おれ、ずっとここにいる。おれが全部やるから。掃除も、飯も。例え
元貴が曲をかけなくても。
おれのそばにいるだけでいいから、、、」
僕は、目を閉じた。
拒否の言葉が喉まで出かかったが、飲み込んだ。押し殺した。
若井のささくれひとつない指が、妙に心地よかった。
ここ半年、誰にも触れず、触られたくないと思って生きてきたはずなのに。今は離したくなかった。
「若井がいなくなったら、おれ、どうなっちゃうんだろう」
口をついて出た言葉に、若井が息を呑んだ。
次の瞬間、彼の手は僕の後頭部に添えられ、胸の中で抱きしめられていた。
力は優しいのに、どこか必死だった。
「いなくなるわけないじゃん。俺は、もう、元貴のそばから離れられないから。ほんとに、元貴がいないと、おれ、こわれちゃう、、、」
されるがままに、その胸に顔を埋める。
シャツ越しに聞こえる鼓動が、速く、乱れている。
僕の心臓も同じリズムで動いていることに気づき、ぞくりとした。
「俺も……」
声が震えた。
「若井がいなくなったら、たぶんまた、何もできなくなる。
ずっと書けないままになる。
生きてる実感が、なくなる。と思う。」
若井の腕に力がこもった。
僕の伸び切った髪に指を差し入れ、優しく梳きながら囁いた。
「じゃあ、もう離さない。
元貴が俺を必要としてくれるなら、俺は何だってする。
外に出なくていい。
誰とも会わなくていい。
俺だけ見ててくれれば、それでいい。」
僕は目を閉じた。
胸の奥が熱い。
これは依存だと、頭のどこかでわかっていた。
でも、その熱さが心地よくて、逃げられない。
若井の顔が近づいてくる。
息が混じり合う距離。
「、、、、いい?」
若井の声は掠れていた。
僕は、言葉にすることもできずに、わずかに首を振った。
若井の唇が、ぼくの唇にそっと触れる。
最初はただ触れるだけだったキスが、次第に深くなっていく。
舌が絡み、息が乱れ、互いの体温が溶け合う。
キスをしながら、若井はぼくの背中に手を回し、強く抱きしめた。
まるで、
「もとき、消えないで、どこにも行かないで」
と言うように。
僕も、無意識に若井のシャツを握りしめていた。
離したら、二度とこの温もりを感じられないような気がしたんだ。
唇が離れたとき、僕らはしばらく額をくっつけたまま息を整えていた。
若井が、かすれた声で言った。
「これで、、俺たち、繋がれたよね、、?」
何か言いたかった。でも、口が開くだけで声は出なかった。
ただ、若井の胸に顔を押しつけて、小さく頷いた。
その夜、ベッドで体を重ねた。
激しい情事だった。
初めて使うはずのソコは不思議と痛くなかった。
「もとき、もときっ、すき、すき、」
「ああっ、あ、や、んん、わかっ、う、あ、」
「もとき、もとき、あっ、もと、き」
「んんっ、あ、わかい、わか、あっ、わ、かい」
馬鹿の一つ覚えのように腰を振って、
馬鹿みたいに名前を呼び合った。
ただ、互いの存在を確かめ合うように、生きているということを感じるために。
終わったあと、若井は僕を後ろから抱きしめたまま離れなかった。
腰に腕を回し、耳元で何度も繰り返した。
「もとき、すき。
もう、ひとりにはしないよ。
ずっと、俺のそばにいて。」
その腕の中で目を閉じながら、心の中で思った。
離れたくないなぁ。
窓の外では、また雨の音がしていた。
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