Na「ん…。」
ゆっくりと目を開ける。
Na「夢…じゃない。」
燃え盛る炎と焼き焦げた野原。
きんときが着せてくれたであろう外套を脱ぎ捨てる。
Na「俺は…。どうしたらいい…の。」
俺だってみんなと一緒にいたい。
Na「あそこ…。」
“最期”に思い出の場所に行こう。
Na「ここに来るのも…もう終わりか。」
ガラガラに崩れた白尾城。
Na「ここでみんな出会ったんだっけ。」
俺が仲良くしていた5人を引っ張って、国を作った最高の仲間。
Na「また。6人で笑い会えたら。」
叶うはずのない願いを口にする。
すると、
??「お願い聞いてあげるよ。」
Na「え…!?」
幼げで可愛らしい声が、どこからが聞こえてくる。
??「君はボクに感動を与えた。」
??「そのごほーびに、お願いを1個だけ叶えてあげるよ。」
Na「願いって…。それに君は?」
??「あ、いっけない自己紹介が遅れたね。」
??「んー、ボクは神様のはしくれって事にしておいて。」
Na「神…さま?」
??「そう、…さあ、願いはなあに?」
Na「願い…。」
その言葉で頭に浮かんだのは、
最高の仲間である5人の姿。
Na「俺の。」
Na「俺のたったひとつの願い事は…。」
Na「仲間のBroooock、シャークん、きんとき、スマイル、きりやんを生き返らせること。」
一瞬の沈黙。
??「…ごめんね、そのお願いは叶えてあげられないかも。」
Na「…ッ!なんで!」
??「“代償”がいるの。」
Na「え?」
??「生き返らせるには“代償”が必要になるんだ。」
Na「━━━━━━━━━━━なんだ、そんなことか。」
スッと息を吸う。
Na「我!白尾国総統Nakamuの命を差し出し、幹部Broooock、シャークん、きんとき、スマイル、きりやんの命をこの世界に還らすことを願います!!」
凛とした声が響きわたる。
??「…君は、それでいいんだね?」
??「せっかく守られた命を。」
Na「いいんだ。」
Na「元々、俺の命はいづれ散るはずだったんだ。」
Na「俺のちっぽけな命ひとつで、あいつらが生きれるなら喜んで差し出すさ。」
??「…分かった。君の決意じゅーぶんに受け取ったよ。」
??「その願い、叶えてあげる。」
刹那
世界が霞み始める。
水中に沈んでいくような息苦しさ。
でも、どこか心地よい。
Na「みんな、俺のわがままに付き合ってくれてありがとう。」
Na「大好きで最高のメンバーだったよ。」
━━━━━━━━━━━━━━━さよなら。
みんなは、俺の分まで━━━━━━━━━━━。
意識が暗転する。
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
きんとき視点
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
??「…き。…と、……きんとき!!」
kn「…えっ!?」
いきなり耳元で叫ばれて、一気に覚醒する。
…あれ、俺寝てたっけ。
kn「なに、しゃけ。」
sh「…これ、どうなってんの?」
いつもより低いシャークんの声。
不思議に思って、辺りを見回すと。
kn「なに…これ…!?」
崩れ落ちた城下町。
焼けこげた森林。
sh「…俺も目が覚めたら、ここに居たんだ。」
sh「何があったかは…わからない…ッ!」
グッと唇を噛み締める、緑の彼。
kn「大丈夫。俺もわからない。」
kn「しゃけ1人で背負わないで。」
sh「…おう。」
kn「…まずは城に行って、彼等と合流しようか。」
口数少なく城へと向かう。
そこには。
Br「あ、シャークん!きんさん!」
kr「ほんとだ。おーい!!こっちだ!!」
sh「ぶるーく…!きりやんっ…!」
崩れた城の前で大きく手を振るのは
黒衣をはためかずきりやんと、長身で赤い白尾を揺らすBroooock。
kn「あれ、スマイルとNakamuは?」
kr「俺はぶるーくと一緒だったけど…。」
kr「…これ何があったの?」
kn「俺らもわかんないんだって…。」
Br「…あ!あれスマさんじゃない!?」
そう言って指さす先には
sm「悪い、遅くなったか。」
少し眉に皺を寄せ、難しい顔をするスマイル。
sh「…なかむは一緒じゃないの?」
不安そうに言葉を漏らすシャークん。
不安に思うのは当然だろう。
Nakamuは俺らの大事な仲間で、中心的な存在なんだから。
sm「…何を言ってるんだ?」
kr「はぁ!?」
sm「なかむ、そこにいるじゃないか。」
Br「えっ!?」
そっと指を指す方を見ると
そこには。
まるで存在することを隠すように、崩れた瓦礫の影に座り込むNakamuの姿。
kn「なんだ、居るじゃん。」
各々が、ホッとするように表情を緩ませる。
Br「なかむ〜!みんな揃ったよ〜?」
kr「はぁ…。なにがあったか全くわかんねぇから、ちゃんと話し合うぞ。」
呼びかけられても、ピクリとも動かない水色の彼の姿に不安が募る。
kn「なかむ…?」
急いで駆け寄り、頬を触れた時
kn「つめた…ッ!?」
sh「…え?」
氷のように冷たく、人の暖かさを感じられない。
kn「…ッ!」
脈を測ろうとして、手を取る。
kn「…あ……。」
sm「きんとき?どうした…!?」
視界がグラグラする。
耳鳴りが酷い。
kr「おいッ!…きんとき!?」
Br「きんさんッ!?大丈夫!?」
kn「なかむ…ッ!なかむッ!」
━━━━━━━━━━━━なんで、息してないの。
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
きりやん視点
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
心に穴が空いたようだった。
Nakamuが死んだ。
sh「ど…いうこと。」
Br「うそ…。嘘って言ってよ…ッ!」
sm「…。」
目頭が熱くなる。
シャークんは、微かな嗚咽を漏らす。
Broooockは、きんときにしがみつき声を上げながら大粒の涙を零す。
スマイルは、背を向けているが肩を震わせる。
kn「なんで…!なんで死んでんだよバカ!!」
kn「お前の夢はなんなんだよ…ッ!」
空白の時間が流れる。
kn「━━━━━━━━━6人で、誰もが幸せに暮らせる国を創ることだろ…ッ!!」
kn「まだできてねぇだろッ!」
kn「起きろよぉ…ッ!」
Br「…僕まだお礼言えてないよ…ッ!」
Br「言わせてよ…。」
sm「…俺だってまだ、話したいことあるんだよ…ッ。」
sm「先逝くなよ…ッ!」
sh「またたくさん喧嘩して…、仲直りして!」
sh「もっと遊びたい…ッッ!」
sh「帰ってこいよ…ッ!!」
kr「また馬鹿やって…!騒いで!」
kr「もっと笑いたい!!」
kr「帰ってこいよ……!Nakamu!!!」
その言葉を最後に
司会は真っ白に染まった。
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
きんとき視点
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
ポカポカとした暖かさと優しさが混じったような光で目が覚める。
kn「ここどこ……。」
辺りには、気持ちよさそうに眠る4人。
煌めきを帯びる緑の芝生。
辺り一面に咲き誇る赤と紫の花々。
奥に見えるのは青色の海。
黄色く輝く太陽。
それを包み込むのは、水色の空。
Br「なんなのここ〜?不思議すぎなんですけど〜?」
sh「平和だな…。」
sm「…。」
kr「どこだよここ…。」
きりやんとBroooockは、驚いたように声を上げる。
シャークんは、ぐいと目元を乱暴に拭う。
スマイルは辺りを警戒しているよう。
??「やあ、来たね。」
WT-Na「!?」
弾むような声が響いて、思わずそちらを向く。
そこには、真っ白なローブを被り
顔こそは見えないが、くるんと跳ねる髪が銀色に輝く。
━━━━━━━━━━でもそれが“人ならざるもの”だと、すぐに認識できた。
幼い少年の背から、白いしっぽが覗いていた。
sh「てめぇ、誰だよ。」
いつもより低いシャークんの声。
??「僕は…。神のはしくれだよ。」
kn「神…?」
??「そ!それでね、君たちに用があってここに連れてきたんだ。」
Br「用って…!?」
??「お、背の高い君は勘がいいみたいだね。」
sm「お前、なかむに何をした…!!」
珍しく声を荒らげて、怒りを表すスマイル。
??「ちょっと待ってよ、君たち勘違いしてるよ。」
kr「は?」
??「君たちは、僕がなかむくんの命を“僕の為に”奪ったって思ってる?」
kn「そう思っていて何が悪い。」
??「違うよ〜w」
??「なかむくんはね……。」
??「 自 ら 命 を 差 し 出 し た ん だ よ 。」
kn「なかむが自ら…!?どういう事だよ!」
??「そっか、君たち覚えてないんだね。」
??「思い出させてあげるよ。」
冷たい声が言葉を紡ぎ終え
白のローブを被った少年は、スイと右手を動かした瞬間
kn「ッッ!!」
ダムが決壊したように記憶が流れ出してくる。
kr「そうだ…俺たちッ…。」
sh「なかむを…置き去りに。」
??「そう。なかむくんは己の命を引き換えに、君たちを生き返らせた。」
Br「うそ…。」
sm「あの…!お人好し…ッ!」
??「でも。ボク、いい話を聞いたんだ。」
??「なかむくんは君たちのことを“大好きで最高のメンバー”だって教えてもらったんだ。」
kn「ッ!」
??「なかむくんを。」
??「生き返らせてあげる。」
え?
kr「おい、それは本当なのか!?」
Br「ほ、ほんとに…!?」
??「でも、その前に。」
??「ボクとひとつだけ。」
??「ひとつだけ約束して。」
sm「約束…?」
??「━━━━━━━━━助けられる範囲でいい。」
??「人々を幸せにして欲しい。」
??「それだけ。」
??「さあ、早くみんなを返さないと。」
少年は再び、右手を振る。
すると、急に意識に霧がかかる。
??「またいつか、話そうね。」
意識が暗転する直前。
少年のフードがぱさりと落ちる。
??「ボクの名前は━━━━━━━━━━━。」
暗転
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
きんとき視点
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
パチと目を開ける。
kn「ッ!なかむ!!」
彼の手を取る。
sm「なかむ…!」
Br「起きて!!」
sh「おい!…起きろよ!!」
kr「おい!みんなそろったぞ!!」
kn「俺たちはここに居る。」
kn「帰ってきて…!!」
WT-Na「Nakamu!!!」
その声に応じるように
Nakamuの頬に赤みが戻ってくる。
Na「……ん。」
長いまつ毛が震え、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
綺麗なアクアマリンの瞳が揺らめく。
Na「あれ、俺…。」
kn「なかむッ!!」
ぎゅっと抱きしめる。
暖かい。
生きてる。
ただ、その実感が欲しかった。
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
Nakamu視点
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
大好きで、安心出来る声が聞こえた気がした。
??「なかむくん。」
Na「あ、君は。」
??「君の大事な仲間が呼んでるよ。」
Na「え?…でも。」
??「ボクの事は気にしないで。」
??「さあ、行っておいで。」
━━━━━━━━━━━ボクの大切な…。
トンっと背中を押され
意識は遠のいた。
眩しい。
Na「……ん。」
ゆっくりと目を開けると、深海のような蒼い瞳が俺を捉える。
kn「なかむッ!!」
そのまま抱きつかれる。
耳のそばで微かな嗚咽が聞こえる。
まわりには
メガネを取り、ゴシゴシと乱暴に目を擦るきりやん。
長い袖で涙を隠すBroooock。
唇を強く噛み締めるスマイル。
怒ったようで、安心したような顔をするシャークん。
ああ。
━━━━━━━━━━━━帰ってこれたんだ。
kr「なんで、俺らのために自分の命やすやすと渡してんだよ!!」
kr「…心配するだろバカ…!!」
Br「まあまあ、やんさん。そんな怒んないであげてよ。」
Br「なかむ。心配かけて、不安にさせてごめん。」
Br「これからは、死ぬまで一緒だから。」
sm「すまなかった。」
sm「1番、お前が辛かっただろう。」
sm「……よく頑張ったな。」
sh「…怖かった。」
sh「俺が経験してきた、どんなことよりも。」
sh「帰ってきてくれてありがとう。」
Na「みんな…。」
kn「ほんと馬鹿。」
kn「でも、ごめん。君を1人にして。」
kn「もう、離れないから。」
みんないる。
大好きな仲間が。
Na「俺こそ。」
Na「帰ってきてくれて…ありがとう…!!」
Na「おかえり!!みんな!!!」
WT-Na「ただいま!!」
みんなで肩を寄せあって笑う。
それだけで、幸せだった。
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
??視点
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
??「よかったねぇ。また笑えて。」
足元で笑い合う6色。
プラプラと足を揺らす。
??「少しでも恩返しができてるといいけど。」
??「期待してるよ。」
??「ボクを生み出した君たち。」
??「あーあ。もう時間切れかなぁ。」
??「またね。」
白い尾がゆらりと揺れる。
そこには、誰一人もいなかった。
𝙚𝙣𝙙 .
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
あとがき
。.ꕤ………………………………………..ꕤ.。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
いやぁ、この話はリア友とご飯に行ってる時に思いついた話なんですよね。
ちょうどWT様のメンバー限定でバンド動画を一緒に鑑賞していた時の曲の一部から、この話が出来ました。
なんの曲で、どんな歌詞から生まれたのかわかった方は、是非コメントにて答え合わせしましょう。
この話にでてきた、白いローブの少年。
誰でしょう。
この少年が言うには、『代償がいる』らしいですけど、全員生き返ってますよね。
なんででしょう?
此方も合わせて考えてみてください。
では、そろそろ締めましょうか。
ここまでお付き合いしていただきありがとうございました。
いいね、コメントしてくださるとモチベとなります。
ここまで読んでくださった貴方に最大の感謝を。
凛花
コメント
15件
初コメ&フォロー失礼します この話、フォロワー限定じゃないから、TERANovellを入れてなかった時に何回も見てた。(調べた)もうね、この話が好き過ぎて❤とか、押したいぐらいだった。本当に、沢山見てるのに遅いコメントごめんなさい。これからも頑張ってください。まじで、この話好き。あと、最後の少年は、ワイテル君だと思います。理由は、ワイテルズに居るのはワイテル君もだから。
初コメ失礼致します 小説すごく良かったです! 感動させられちゃいました、、、! 少年はワイテルくんですかね?ワイテルくんもしや自分を犠牲に、、、 あと曲って虹色の戦争ですか?最後の部分が「青色の空に神様が〜」の歌詞と似ている気がしたのですがどうでしょうか、、、 最後に改めて、本当にいいお話でしたありがとうございます!