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同じ夜。
アパートの机にノートを広げていた悠真は、視線を文字に落としながらも、思考は別の場所にあった。
(……亮の妹、咲)
脳裏に浮かぶのは、笑顔で夏祭りの夜に浴衣を揺らしていた姿。
体育祭で真剣に走っていた横顔。
何気ないしぐさまで、どうしてこんなに鮮明に思い出してしまうのか。
「……っ」
悠真はペンを置き、額を押さえた。
(妹ちゃん、って呼んできたのに。俺は、何を考えてるんだ)
ただの親友の妹でいるはずだった。
だけど、胸の奥に生まれてしまった感情は、その枠には収まらない。
窓の外に目を向けると、冷たい風に揺れる街灯の光が滲んで見えた。
そのざわめきは、もう誤魔化せそうになかった。