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#ダンジョン
麗太
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――――――――――――
――――――イブ、――ちゃん!
――――レイブお兄ちゃん!
「…………う、うーん、ペトラ、か?」
レイブが正気を取り戻した時、最初に視界に入ったのは見慣れた漆黒豚猪、ペトラの大きな鼻先越しの不安気な表情であった。
続いて意識の中心となったのは、こちらも馴染み深いニーズヘッグ最後の生き残りのガナリ声である。
『グガァッ♪ 漸く目覚めたかレイブぅっ! グガァ♪ ガッガッ♪』
慌てて半身を起こしたレイブ。
周囲を見回した彼には気を失う前と比べて、はっきりとした変化が二つ見て取れたのである。
一つは自らの右掌に乗り、ついさっきまで励ましの言葉を掛け続けていてくれた魔神、アスタロトの不在、消失であった。
今一つは心配そうに自分を見つめるペトラと、余裕ぶった振りをしながら横目でこちらの様子を窺い続けているギレスラに共通した変化である。
両者とも失ってしまった筈の角、ペトラは巨大な巻き角、ギレスラは他の竜種では見られない額の前方にせり出した尖角が何も無かったかのように元通りになっていたのである。
――――ああ、そっか…… 子供の頃、死に瀕した俺達が生きて来れたのは…… 神様、アスタさんの…… アスタさん……
少し俯き加減になったレイブは目視する事無く、当然のように再生されていた自身の左腕に右手を回すと、深い感謝を顕す様に静かに擦り続け始めたのである。
涙を流したり嗚咽を漏らす事こそ無かったが、僅かに震えながら左手を抱くその姿は、常のレイブが決して見せない種類の物であり、ペトラとギレスラとてそれだけで自分達が意識を失っている間に尋常で無い事態が起こり、その結果がレイブの心に影を落としているのだと察することが容易であった。
暫くの間、無言のままでレイブを見守っていた兄妹であったが、やがて、変化が見られない長兄に対して、酷く遠慮がちでは有るもののペトラが声を掛けたのである。
『あのね、レイブお兄ちゃん、実はアスタロトさんが見当たらないのよ、いなくなった時の事、アタシもギレスラお兄ちゃんも倒れていたみたいで見ていなくてね、どこに行ったか判らないのよ…… ねぇ、どうしようか?』
この言葉を聞いたレイブは、一層深く首を項垂れて擦っていた左腕を激しく揉みしだきだす。
そのまま何の答えも返さないレイブに代わってギレスラがおどおどとしているペトラに話し掛ける。
『まあ良いじゃないかペトラ…… レイブとてまだ目が覚めたばかり、判らない事ばかりだろうよ…… なに、アスタロトさんの事なら心配要らんだろう! 何しろ別格の魔神様だっ! その内、ひょっこり顔を出すだろうさっ!』
『う、うん…… えっ? ええぇっ!』