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side…阿部
深澤「あ〜…ねみぃ」
阿部「ふっか、寝癖酷いね…」
寝癖だらけの頭を掻きながら、隣を歩く昔からの幼馴染。
昔からみんなから好かれて、常にみんなの輪の真ん中にいる人。そんなふっかが昔から大好きで、一緒にいる数を重ねれば重ねるほど好きが増えていって。
その好きが恋心に変わっていっていたのも、気付くのにそう時間はかからなかった。男が好きなんて…多様性が進んだ時代でも周りがどう思ってるかは分からないし怖い。
もちろん、ふっかも同性愛のことをどう思っているか分からない。
男同士が付き合うなんて有り得ない、気持ち悪い。なんて思われてふっかに嫌われたら俺はもう前を向いて生きていけないから…本当の気持ちは隠して毎日ふっかと向き合ってる。
深澤「今日一限目なんだっけ」
阿部「多分…数学?」
深澤「えー数学!?」
阿部「うるさい…」
最悪だ…と呟いているふっかの肩に一つの手が置かれる。ビックリして目を丸くするふっかと、その一つの手の正体は先輩の佐久間先輩。うわっやめろよ!と言いながらふっかが振り向いて、佐久間先輩だったことに更にビックリする。
佐久間「ふーかーざーわぁ…」
深澤「うわっすいません!!」
佐久間「にゃははっ!おもしろ〜」
能天気にへにゃへにゃ笑う佐久間先輩…俺はダンス部に入ってないから分からないけど、ふっかがこの前すぐ怒られるしめっちゃ怖いと愚痴っていた。
でも朝こんなふうに先輩の方から寄ってきてるってことは、余っ程ふっかは気に入られてるんだなぁ。うるさい、と少し口が悪くなったふっかでも、どこに行っても人気者なふっかは昔から変わらない。
深澤「おいっ阿部ちゃんいくよ」
阿部「あっ、うん」
立ち止まってふっかと佐久間先輩のやり取りを見ていると俺が来ていないことに気付いたふっかが手を取ってくれて行くぞ、と言ってくれた。…内心すごくドキドキしてる、いやそりゃ好きな人から手握られたら、いや握られてはいないけど…ドキドキするじゃん。
深澤「なんでこんな手、あったけぇの」
阿部「し、しらない…なんで?」
深澤「知らないんかーい、ほらいくよ阿部ちゃんと佐久間」
佐久間「え!俺って先輩だよね!?」
佐久間先輩がふっかを追いかけていって、二人の背中だけが遠のいていく。ふっかの隣に長く居れないのは残念だけど、今はふっかが元気に走り回れているだけで嬉しい。
そして寂しげに離された俺の手には、ふっかの手の温もりがまだ少し残っていた。
俺も小走りで二人を追いかけ校舎に入った。
深澤「はぁ…あの人無駄に走らせんなって話…」
額に汗をうっすらと浮かべて息を切らして肩で息をしているふっか。
いや、幼馴染にこんな感情抱いちゃダメなんだろうけど…妖艶でかっこいい。
黙って見ていると、そんな目で見ないでくれる?と見上げられて言われた。
阿部「別にそんな目で見てないよ」
深澤「やだ♡そんな目って?♡」
阿部「…ははは、うん、大丈夫。」
深澤「ひっでぇ、なんだよ大丈夫って!」
二人で笑い合いながら、教室に足を踏み入れる。
席は隣同士で、この前の席替えで奇跡的にふっかと隣の席になれて一人で舞い上がって一人でドキドキしてた。
~…好きなんだなぁって。やっぱり好きな人と席が隣になれば嬉しいし、たとえ男の人でも好きな人なら手を握られたって嬉しいし、目が合うだけでも好きな人なら嬉しい。
でも態度に出したら最後、バレて終わり…
深澤「阿部ちゃん?」
阿部「どうしたの、ふっか…?」
深澤「いや、なんか…なんでもない」
急に名前を呼んできたことを謎に思いながらもそっぽを向いているふっかを見つめていると、急にこっちに顔を向けてきて目が合った。
阿部「…なんでそんなに、俺の事みるの…」
今にも消え入りそうな声で話すと、俺の顔を今朝の時と同じ温もりの手で包んできた。
恥ずかしさと嬉しさと戸惑いで何も出来ずに、言えずにいるとふっかがふっと笑って
深澤「分かりやすいよ、ほんと…」
阿部「へ…ぁ、なに、え、ふっか…?」
深澤「さぁ、なんだろうねぇ?」
また軽く笑って違う方向を向いてしまった。
…え、なにそれ…分かりやすいって俺の何が。手、取られてドキドキしたのバレた、?
いや、手くらいでバレるわけ…幼馴染だし。じゃあ目合った時かな、いや顔なんてそんなすぐ赤くなるもんじゃない。
でも…普通あんな言い方する?なんか全部わかってますみたいな。
いやいや…そんなわけない…あるわけない。
だけど心の奥には少し期待してしまっている自分がいて、そんな自分が嫌になる…。
でもふっかを思っている自分の心はそう簡単に期待を消してくれなかった。
ある日のこと、いつも通り帰路を歩こうと足を一歩踏み出せば、教室に今日中に終わらせなければ行けない課題を忘れたことに気がついた。一緒に帰っていた友達はそんなの朝でいいじゃん、と面倒くさそうな顔をしていたが俺はそんな訳にも行かず先帰っていいよ、そう声をかけて歩く方向を変えた。
校舎に入り、靴を外靴から上履きへと履き替える。歩いて二階まで向かっているとちらほら先生や居残りをしている人が教室の窓越しに見える。
自分の教室の目前までついてあと数歩。ドアを開けようと取っ手に手をかけた瞬間、教室の中にふっかと佐久間先輩が居た。教室の中から何やら楽しげに話している声が聞こえ、盗み聞きはダメだとわかっているけどよく耳を澄まして聞こえる範囲まで聞いてみる。
佐久間「ちょ、近いっての!!」
深澤「いいじゃん……だめすか?」
佐久間「勘違いしちゃうよほんと…距離感バグってんねお前~」
深澤「…いいじゃないすか」
…何この気持ち、
なんでそんな楽しそうに笑ってんの、距離感バグって、なに…、
ドアを開けることも出来ずに教室から、二人から背を向けた。
…俺、ほんとなにやってんだろうなぁ…、勝手に期待してた自分がバカみたいだ…。
かえろう……
次の日、いつも通りに隣に座ってきたふっかに視線を合わせないまま学級日誌を書く。
ふっかの顔を見ないのは、きっと顔を見たら昨日のことを鮮明に思い出してしまうからで、少しでも現実から目を背けたかった。
深澤「おはよー阿部ちゃん」
阿部「…おはよ」
何も続かない、続くわけない。
いつもなら俺からなんやら話しかけるが、昨日のことからなんとなく話すのを遠慮してしまう。
…いや、 嫌なだけかもしれないけど。
勝手に期待した俺が悪い…けど、少しは俺のこと見てよ。ふっかはあんな楽しそうに笑うんだね、もう全然俺にはあんな顔見せてくれないのに…。
深澤「…なに、なんかあった?」
阿部「別になんも」
それ以上何も言うつもりはなかった。ただ黙って学級日誌に書くことを書き込む。
深澤「いや、別にって顔じゃないんだけど」
いつもより少し低くなった声に驚いて、ペンを止めた。言い返そうと思って顔を上げるとあまりにも分かりやすく怒った顔をしたふっかが居た。幼馴染ながらも初めて見る表情に少し戸惑ったけど、今はそんなんで戸惑ってる場合じゃない。
阿部「…ふっかこそ、」
深澤「は?」
阿部「佐久間先輩と楽しそうじゃん」
皮肉めいたように鼻で笑ってそういえば、ここの周りだけ空気が固まる。俺はもうふっかなんて見てなくて、学級日誌に目を移していた。一限目社会…二限目美術。
深澤「それさ…どういう意味なわけ?」
阿部「別にそのまんまだけど。」
少し怒っていたふっかの顔はいつしか悲しげな表情に変わっていて少し心が痛くなる。だけど棘のある言い方をして、ふっかと俺の間に壁を作ろうとしていた。
どうせこの恋が終わるなら、幼馴染もやめて好きになるのもやめさせてほしかった。
字を書く手に力が入る。シャーペンの芯がボキッと折れた瞬間と同時にふっかが席を立ち上がった。
深澤「なに、そのまんまって。」
ふっかの視線が上から突いて、俺の胸にグサグサ刺さっていく。
深澤「急になんか距離感じるし…意味わかんないこと言うしなんなの」
阿部「別に…避けてないでしょ」
深澤「避けてるから言ってんだろ」
強く言い切られて、何も言い返せない…
そりゃ、ふっかのこと避けてるよ。だけど避けてる原因はふっかじゃなくて俺にあるから…もう近付かないで、ふっかと俺のためだから。ハッキリそう言おうとした瞬間に、
深澤「俺、なんかした?」
阿部「……しらない…、」
自分でも最低なのは分かってる。そもそもふっかと佐久間先輩が付き合ってるなんてわかんないじゃん…全部俺が勝手にふっかのこと想って、勝手に落ち込んだだけ。
おれのせいだよ…嫌いになってください。
深澤「知らないってなんだよ…もういいわ」
そういったふっかの声は怒ってると言うよりもやっぱり少し悲しんで、傷ついているみたいな声で。言わねぇなら分かんねぇよ…と吐き捨てて椅子を引いてしまった。
ふっかの足音が、背中が俺から遠のいていく。追いかけて名前を呼べばいいのに、ただそれだけなのに…今の俺には許されないことだから、できなかった…だから、何も出来ないままただその場に座ってペンを握りしめることしか出来なかった。
side…深澤
よくわかんない頭のまま教室を出て、廊下を歩く。さっきの阿部ちゃんとの会話が頭から離れるわけもなく、ずっとずっとへばりついてくる。
深澤「…はぁ、?」
知らないってなんだよ…俺も知らねぇよ。
にしてもあんな泣きそうで、でも少し怒ってるような顔をした阿部ちゃん初めて見た。小さい頃から優しくて、怒ることなんかなかったのに…って、なんで俺小さい頃と比べてんだろ。関係ない…はず、
てか、どっちかっていうと…
深澤「傷ついてんの、俺の方なんだけど」
小さく吐き捨てるように呟けば、その言葉が床に落ちていく。するといつの間にか高校生には似合わない、ピンクの色をしている頭が飛び込みスライディングしてきた。なにをしてるかと思えば俺がさっき吐き捨てた言葉を全部拾い上げたような動きをして、両手で抱えるフリをしていた。
佐久間「落としました!!」
深澤「そこら辺に捨てといてください」
呆れたような目で先輩を見つめれば、持っていたものを投げて全部どっかに飛ばした。はぁ…まじこの人どうなってんだよ。
佐久間「顔ヤバいぞお前」
深澤「普通です」
佐久間「普通の人はそんな顔しないよ〜?」
明らかにいつもより元気がない俺に気付いたのかおら行くぞ、と手首を掴まれたと思えば反論する前にどこかに向かって走り始めた。
深澤「いや屋上かい」
佐久間「気分転換に丁度いいでしょ?…で、ふっかさ阿部って子と喧嘩したっしょ」
深澤「別に喧嘩ってほどでは」
喧嘩ほどではない、そう言おうとすれば嘘つけ顔に書いてあるとほっぺをグリグリ押されて痛いと言って笑えば、やっと笑った!と先輩も笑顔になった。
少し間が空いて、春風が吹いて髪を揺らす。
佐久間「好きなんだろ?」
深澤「…は?いや、そんなはずは…」
なにが、だれが?と困惑している俺を見て先輩は呆れたように笑って阿部くんのことだよとしっかり俺の目を見て話した。
反射的に目を逸らしてしまい、また何か言われると思えば
佐久間「わかりやすいねぇ〜初心しい♡」
深澤「…はぁ、そんな分かりやすいもんなんですか恋心って」
うんうん♡と頷く先輩を横目に、さっき阿部ちゃんと喧嘩した時の内容を俺は話し始めた。
深澤「あいつ、なんも言わねぇの…避けるし、意味わかんねぇこというし…」
佐久間「じゃあさ」
佐久間「言わせればいいと思うよ?…じゃないとさ、終わるよ?」
珍しく真剣な表情の先輩に少し驚きながら、どういうことか質問すると返ってきた言葉は
そのまんま、好きって言わせれば良くない?
と。いやいやいや…そりゃ阿部ちゃんが俺のこと好きそうだなとは態度とかで分かってたけども。違うかもしれないって確信はできなかったけど、ストレートすぎんのよこの人。
佐久間「とにかく、仲直りすること!」
深澤「はい…」
佐久間「一限目遅れてるし俺っち行くね」
深澤「はぁ!?」
屋上の入口についている時計を見れば一限目が終わりそうな時間。そんな話してないはずなんだけど…と思いながらも先に歩いている先輩を追っかけた。
…あれ、俺今教室戻っても気まずいだけじゃないか?保健室で休んどこう…
side…阿部
阿部「俺…本当にふっかのこと好きで、でも…もう分かんなくて、」
夕日が木の枝の間から差し込む。
木陰にしゃがみこみ、そして今すぐにでも溢れてしまいそうな涙を拭って友達の涼太に相談する。入学式のときに声をかけてくれて、ふっかの事を話したり恋愛相談をさせてもらったりしている人。高校生とは思えないくらい大人びていて、雰囲気が落ち着いていて…すごく相談しやすかった。
ずっと溜め込んだものが全部溢れ出てきてしまいそうで、ゴシゴシと目を擦った。なんで俺、こんなに泣いてるんだろう…。
宮舘「…想いなんて伝えないとないものと一緒でしょ…?ほら、いってらっしゃい阿部。 頑張って?」
ゴシゴシと目を擦る俺の手首を掴んだ涼太は、その手首をグイッと上に引っ張り立つ元気もなくなっていた俺を立たせてくれた。
そのまま背中を押され、無我夢中で走っていれば教室で夕日を眺めているふっかの背中があった。 その背中は、佐久間先輩と追いかけっこしていたあの時の元気な背中じゃなくて少し寂しげな背中をしていた。
…ごめん、あんな悪態ついちゃってごめん…
阿部「ふっか!!」
教室のドアを勢いよく開け、ふっかの名前を叫ぶ。引っ込んだ涙がまた出てしまいそうなのを抑えてビックリして唖然としていたふっかの前に立った。
阿部「…ふっか、ごめん……あんなこと言ってごめん、」
震える声で、震える手でふっかに話しかける。下を向いて言葉に詰まっていれば、自然と涙が込み上げてきて…ふっかと喧嘩した時を思い出しちゃって。
今、ちゃんと思いを伝えなきゃ終わる…。
阿部「…ふっかのこと、っ……」
阿部「…好きっ、だいすき…っ、!」
目を見て、ちゃんとふっかに言った。涙で目が滲んで表情は上手く読み取れなかった。
深澤「…わかりやすいね、ほんと…俺、今心臓バックバクだよ、」
瞬きをしてから、ふっかの顔を見る。
そこに居たふっかの顔ははっきり分かるくらい口角を上げて、余裕そうな振る舞いをしていたけど顔は真っ赤だった。
それより、言われた…分かりやすいって…、
阿部「…どういう、ことなの…っ」
深澤「めっちゃ前に言ったじゃん、分かりやすいって」
阿部「…いっ、てた、」
泣いてばっかでまともに話せない俺をふっかは優しく抱きしめて、また話し始めた。
深澤「分かりやすいってさぁ…阿部ちゃんが俺のこと好きなことと、」
頭をポンポンと撫でてくれるふっかは、昔と変わんなくて…昔も、俺が怪我をして泣いていれば大丈夫?と声をかけて頭を撫でてくれたのを思い出した。
懐かしさと思い出した嬉しさで涙が込み上げてきて、ぼろぼろ泣いてしまった。
深澤「俺が、阿部ちゃんのこと好きってこと…分かんなかった、?」
阿部「へっ…うそ、っ」
深澤「泣き虫なのも変わんないね」
そういうところも大好きだよ、と呟いてくれたふっかを抱きしめ返す。
俺…ずっとふっかの気持ちに気付いてなかったらしい、だけど俺の気持ちはふっかにはバレバレだったらしくて…とにかく両思いだったってこと…?
深澤「…ねぇ、亮平…?好き、大好き、俺と付き合って…?」
阿部「っ…うんっ…!!!」
幼稚園児ぶりだと思う名前呼びも嬉しいし、付き合えたことが一番嬉しいし、今ふっかとハグしているのも嬉しいし…何もかもが全て嬉しい。
長時間ハグして、離れて…見つめ合って。
なにも言わなくても、全部伝わっている気がした。
謎の笑いが込み上げてきて、二人で笑って…またハグして。
この温もりを手放さないように、もう一度、分かりやすいくらい強く抱きしめた。
佐久間「…にゃは、大成功」
喧嘩した時はどうなるかと思った…なぁんだ、幸せそうでよかった!おめでとう二人とも!!
佐久間先輩、大事な大事な後輩には幸せになってほしいからね〜
宮舘「そうですね…ふぅ〜…」
佐久間「いつからっ!?」
『わかりやすいね、ほんと』
コメント
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わ〜!!好みぶっ刺さり(とは)な作品でびっくりです泣けてきますね😭😭💗 最終的に結ばれて良かった🫶🏻︎💜💚 ❤️💗もなんか恋仲になりそう、、 マイリストに入れさせていただきます...!
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