テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
貴方には敵わない。
💙『 』
🧡「 」
「お疲れ様でーす」
撮影を終えて楽屋に戻ったが、いつもの騒がしさはなかった。
どうやら各々別の仕事に行ってしまったらしい。
ふと楽屋の奥の方に目を向けると、ソファに体を預けている人が1人。
「―あれ、カイくんだ」
珍しいことに、スマホを手にしたまま寝落ちてしまったようだ。
楽屋の扉を静かに閉めて少しずつ距離を詰めてみる。
途中、テーブルの脚に膝をぶつけて物音をたててしまったが、それでも一向に起きる気配がない。
ついに真正面1mの所まで来てしまった。
ターゲットの様子を伺っていると、スマホの画面が光っているのが見えた。
都合のいいことにロックが解除されている状態のようだ。
つい、悪戯したい欲が出てきてしまった。
まあ無防備なのが悪いですよねぇ、なんて言い訳をしつつスマホを覗き込もうと更に距離を詰めたそのとき、
「ぅえ!?」
ぐいっと腕を引っ張られたと思った次の瞬間、先程まで無防備に寝ていた人の顔が目の前にあった。
『何してんのー?ハル』
「ね、寝てたんじゃ…」
『んー? 』
とぼけたような返事が返ってくる。
いつから起きていたのだろうか。
いつからバレていたのだろうか。
想定外の事態に頭が真っ白になる。
『何しようとしてたの?』
「い、いや、別に…何も」
『ふーん』
悪戯しようとしてました、なんて正直に言えるわけがない。
ただ、しどろもどろになった俺をみすみす逃がすような人ではないわけで。
いつの間にか、その人の膝の上で向き合うようにして座らされていた。
「…お、落ち着いてください」
『俺は落ち着いてるよ?…こら、逃げようとしないの』
逞しい腕が腰を包むようにまわっていて、逃げようにも逃げられない。
この体格差では逃げるのは諦める他なかった。
『んで、何しようとしてたんですかねー?』
かれこれ10分程この体勢でちょっと恥ずかしくなってきた。
とはいえ、引くに引けなくなってしまったので彼の方に諦めてもらうように仕向けた方が良いという考えに至った。
「…本当に、何もしてないよ」
『…そう』
腰にまわっていた腕がゆるむ。
ようやく解放か、と膝の上から降りようとした瞬間、 後頭部を手で押さえられ、鼻と鼻がぶつかりそうな位置で頭が固定される。
「…っ、」
至近距離で目が合って、恥ずかしさのあまり目を逸らす。
『…こっち見て』
その静けさの中に支配の色を含んだ声に抗えず、再び目線を戻す。
吸い込まれそうなほどに澄んだ瞳から目が離せない。
惹かれ合うようにして唇が重なる。
「んっ…」
『…だめでしょ、悪い子へのお仕置きなのにそんな顔したら』
妖艶な笑みを浮かべた彼は、頬に手を添わせてそっと唇に触れてくる。
顔が火照っていくのを感じる。
少しひんやりした手が心地よくて、つい擦り寄っていってしまった。
今、いつもの彼とは違うんだと理解した時にはもう遅かった。
再び唇が重なる。
今度は、先程の触れるだけのキスではなかった。
噛み付くような少し乱暴なキス。
それだけじゃなくて、腰にまわっていたはずの手が服の裾から滑り込んできていた。
男らしい大きな手が容赦なく素肌を這い上がる。
「…んっ…っ!」
俺の反応を見て弄ぶように触れる。
初めての体験で、うまく呼吸が出来なかった。
苦しくなって胸を押し返すと、ようやく離れてくれた。
2人の間を銀の糸が伝う。
『…これに懲りて悪戯しないことだね』
ニコッといつもの顔に戻り、ぐったりした俺をソファに寝かせて、楽屋の外に出ていってしまった。
恥ずかしさと気持ちよさと苦しさとでぐちゃぐちゃになった俺とは対照的に、彼は余裕そうな様子であった。
「食べられるかと思った…」
とりあえず彼には悪戯を仕掛けないことを心に決めるのであった。
34
54
18
コメント
1件
うわあ、第1話から既にやばいやつだこれ…!「寝てる」と思ったらまさかの逆転劇で、体格差とか至近距離の圧がすごい。カイくんの「…こっち見て」の静かな支配感が刺さるわ。ハルが食べられるかと思ったって本気で思うレベル(笑)。続き気になる🔥