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スネ夫は、いつもの自慢話の延長線上に、拭いきれない焦燥感を抱えていた。自分の手に入らないものなどないはずだった。ラジコンも、最新のゲーム機も、パパのコネクションも。しかし、静香だけは違った。彼女の清らかさは、金や物で飾られたスネ夫の自尊心を、かえって惨めにさせた。放課後の空き地、人気のない夕暮れ。スネ夫は静香を呼び止めた。最初、彼は新しいフランス製の香水の自慢を始めたが、その声は震えていた。静香が困ったように微笑み、「もう帰らなきゃ」と背を向けた瞬間、スネ夫の中の何かが弾けた。
彼は静香の細い手首を掴んだ。力の差は歴然としていた。静香の驚きが恐怖に変わるのに時間はかからなかった。スネ夫は自分の卑屈さを塗りつぶすように、彼女の尊厳を蹂躙した。そこには友情も、淡い初恋の欠片もなかった。ただ、所有したいという醜い独占欲と、それを実行できてしまう歪んだ優越感だけが渦巻いていた。
事が終わり、静まり返った空き地で、スネ夫は震える手で乱れた服を整えた。地面に崩れ落ち、声を殺して泣き続ける静香の姿を見ても、達成感などは微塵もなかった。あったのは、取り返しのつかない一線を越えてしまったという、底なしの恐怖だけだった。
「僕、パパに頼んで……なんとかしてもらうから」
スネ夫が吐き出した言葉は、あまりにも身勝手で空虚だった。彼は逃げるようにその場を去った。しかし、彼がどれだけ金を積み、どれだけ権力を使おうとも、静香の瞳から光を奪った事実は消えない。スネ夫はこれから一生、鏡を見るたびに、自分がただの「金持ちの息子」ではなく、一人の少女の人生を破壊した「怪物」であることを突きつけられながら生きていくことになるのだ。