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サイド ルネ
「俺、物心ついた頃から人と違ってたんだ」
誰もいない屋上赤く腫れた目で、俺を見つめながらダイチは言った。
「外で遊ぶより母さんの手伝いをするのが好きだった。体育より家庭科が好きだった。手先が器用で喧嘩が嫌いだった。そんな俺を皆おかしいって責めるんだ」
……人間の怖いところはその集団行動で誰かを否定するところだと、俺は思う。それを知っている人も否定されるのが怖くて見て見ぬふりを、誰かを生贄にすることを選ぶ。
……それは俺も例外ではないのに、なぜそんなことを話せるのだろう。
俺のような他人を簡単に信じることを出来るダイチを、羨ましいと思った。
「家族にも心配ばっかされるから、中学で家出て、いつも弟の前で、ヒーローを演じて……本当の自分も、見失いそうだったんだ。だけど、ルネは俺の欲しい言葉をかけてくれて……すごい、嬉しかったんだ……!」
ダイチは、間違いなく社会に認められなかったモンダイジ、だった。
「……誰が何を言おうと、あの子たちのヒーローはダイチでしょ」
「じゃあ、俺にとってのヒーローはお前だな」
まだ腫れが引かない瞳で俺に笑いかけながら、ダイチは大きく伸びをした。
「あー、俺、この顔みんなに見せたくねぇや。悪いけどうちに来てしばらく三人の相手してくれ!」
「んー、まぁ今日くらいはね」
「あ、出来れば今の話は言わないで……」
「“出来れば”だから言ってもいいってこと?」
ニヤリと悪い笑みを浮かべて、俺は冗談混じりにそう言った。
「マジで言うなよ?!」
「え〜?どうしようかな♪」
焦りまくるダイチをからかいながら、俺は笑う。
このときに、気付くことが出来たらよかったと今でも思う。そうすれば、ダイチは死ななかったかもしれないから。