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昔から変なモノを見た。

目に見えるソレは、いつも僕自身に縋り付くように助けを求めた。

小さきモノには”力”を、力持つモノには”知識”を。

善意や悪意など幼い人間が知るはずもなく、やがては

周りを滅ぼしていった。



____



『助けてください、”おきつね”様…』


小学生くらいの小さな妖怪が服の裾を掴んで言う。

が、僕は気にせずただただ帰路を辿る。


『私の母上が謎の病に伏しておられるのです。医者曰く、人間の病が伝染したのではないかとおっしゃられるのです!』


無意識に足を早める。


『人間である貴方様なら治せるだろうと、ッそう思って遥々遠方の地からやって来たのです…!どうか母上を救ってくださりはしませんか!』


チラリと視線を這わせれば、人気のない森に足を踏み入れていた。

いつ、彼の話を聞く気になったのか…と、内心自分に呆れるも、服の袖を掴む小さな手をすくい上げ目線を合わせた。


「…今回だけだからな」


言うが否や、垂らしていた耳を持ち上げ今度は手を引く子狐。


「ぅわ、!?」


『こちらです!!』



____



手を引かれた先には小さな、くたびれた社があった。

先を走っていた子狐は肩を揺らし、大きく深呼吸してから今にも壊れそうな木の扉を2回ノックをする。


『…母上、』


表情は見えないが、明らかに落ち込んだ声を放つ子狐。

通夜にでも来た気分になっていると、音もなく扉は開いた。


『…お入りなさい』


消え入りそうな声が聞こえると同時に、見たこともない神社に立っていた。

驚く僕の目の前を、一輪の桃色がふわりと横切る。

横目で辺りを確認すると、両サイドに立派な桜の木が並列しており、その中央には神が通る道とされる石畳が綺麗に並べられていた。

こんな大きな神社が付近にあったか、なんて疑問に思う僕を置き、脇の下を潜って先程の子狐が社めがけ走っていく。自分もその背中を追った。



____



『…あら、今度は誰を連れてきたの?』


正直、目を疑った。

プライドが高いと言われる狐が、人間なんぞに助けを求める時点でおかしいと思っていた。しかも親族のことを頼むのは狐内でご法度とされていると風の噂で聞いたことがある。

なのにどうだ?今目の前に伏せているのは

”目をなくした九尾の狐”

『母上、…今度は治してくれるヤツを連れてきました故』

自分の顔ほどある大きな手を握りしめて、小さく涙をこぼす子狐。

治す治さない以前の問題だろ。これは、完全に…


『…”やこ”、人間を連れてきたんだね、』


子狐はハッと顔を上げる。

それは多分、子狐自身もわかっていたこと。

人間のせいで目をなくしたのに。

子狐は目に涙を大きく浮かべた。

罪悪感のものなのか、治せないとわかっているからのものなのだろうか。


『ごめん゛なざいッ、』


母狐の尾に顔を埋め泣く子狐。

その声は酷く枯れていて、今までも泣きじゃくった姿が目に浮かんだ。

連れてこられた僕が悪いみたいな空気が漂う。…いや、そう思っているのは僕だけなのだろうけど。罪悪感を感じるこの空間に長居はしたくなかった。


「…はぁ」


むず痒くなる後頭部に手を当て、母狐の側に座る。

幸い、社自体は小綺麗だったので腰掛ける分には問題なかった。

突然隣に座る人間を不思議そうに見つめる子狐。


「治せって言ったよな」


見つめる子狐を見つめ返す。

子狐は目を丸くするも、小さな声で『できるなら、』と自信なく答えた。

お前が僕を連れてきたんだろ!なんて内申苛つきながらも、頭上に?を飛ばす母狐に目をやった。



「…貴方の目を取った人間の特徴、わかります?」

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