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森side
太宰君は甘ったるい声で私の名前を何度も、何度も呼んだ。
その後太宰君は、疲れたのだろう、すぐに寝てしまった。
「お、おはよう…森さん。」
翌朝。私の異能力生命体であるエリスちゃんと紅茶を嗜んでいると、首領室のドアが開き、太宰君が入ってきた。
「おはよう、太宰君。太宰君も紅茶を飲むかい?」
私が尋ねると、うん、と頷いた。
「おはよう!オサム!」
「おはようございます、エリス嬢。」
「オサム、紅茶を飲むならせっかくだしリンタロウの隣に座ったらどうかしら?」
エリスちゃんに悪気は無い。
しかし、いまの太宰君にとっては、昨晩自分が腰を振り快楽を求めた相手の、しかも上司である私の隣に座るなど、気まずくて仕方がないに違いない。
「エリス嬢が勧めてくださるなら、是非。」
微笑んではいるが、少し表情が硬い。
やはり隣…というのは気まずいようだ。
「太宰君、はい、どうぞ。」
「ん。」
「それで、どうかしたのかい?君が朝から来るなんて珍しいね。」
「えっと…その…」
視線を左右に漂わせた太宰君は森の目に焦点をピタリと当てると、その後ちらりとエリスちゃんを横目に見た。
「あぁ…エリスちゃん、紅葉君と遊んでおいで。」
「わかったわ!」
きっとエリスちゃんがいると話しにくいことなのだろう。恐らくは昨夜の事だ。
エリスちゃんが部屋から出て、足音が遠ざかったことを確認すると、太宰君は急にこう切り出した。
「その、森さん、昨日は…ごめんなさ、い。」
耳まで真っ赤に染め上げて、視線を私の斜め下に逸らしていた。
「謝ることはないと思うんだけど…」
昨夜の太宰君はあくまで快楽に身を委ねただけだ。
人間は誰であろうと快楽を求めるものだ。
どんな形かは人によって、性行為による快楽だとか、食による快楽だとか、様々である。
虐待されてきた太宰君は初めて知った快楽に身を委ねただけなのだ。
それに私自身も太宰君と体を重ねることで快楽を得たていたのだから。
「その、ぼ、く、気持ち悪くない…?」
嗚呼、なるほど。
彼は自ら挿入れて欲しいと頼み、自ら腰を振った自分が私から見て変態だとか思われていないかを気にしているのだ。
「まさか。そんなわけないだろう?」
「でも、」
「それに、快楽を求めることは人間の本能だ。太宰君が変態だからって訳では無いね。あ、唯ね、太宰君が淫乱さんだってことは本当みたいだねぇ。」
揶揄いたくなって、そう云った。
「そ、れは!」
「そうそう、それでなんだけど…」
「森さん!?聞いてる?」
「ハニートラップの方が明らかに向いてるね。」
「っ!!」
またまた耳まで真っ赤になって凄く恥ずかしそうにしている太宰君はやっぱり愛おしい。
「…僕さ」
「ん?なんだい?」
「その、誰かに助けてもらったのが初めて、で、その、別に森さんが私に愛を向けているかどうかは別、として、ぼ、僕も愛されていいのかなって、そ、う、思えて…それ、で、森さんの、こと、を、も、求めちゃって…」
やはりそうだった。
優しさも愛も何も知らないこの子は、どうしてもそういった物を渇望しているのだ。
真っ赤になっている太宰君が、とてもとても愛おしく見えて、思わず抱きしめた。
「森さん!?」
「辛かったよね?太宰君。いいんだよ、君は間違ってない。ひとつ、云っておくとするならば、間違ってもハニートラップを仕掛ける相手に愛を求めちゃいけないことだ。求めてしまったら君はもう、その相手の性奴隷になってしまうからね。分かったかい?」
柔らかな彼の蓬髪を撫でてやると、心地が良かったのだろうか、ほんの少し、私の手に自分の頭を押し付けるようにしてきた。
この子は親が与える、温かな愛情を知らない。
最初に知ったのは自身が男として、男に犯される際の快楽。
迚申し訳なく思うと同時に、何処か安心してしまう自分がいた。
最初に温い温い、無条件で与えられる優しさを与えてやれなかったことが只管に申し訳なかった。
そして最初に彼に快楽を、優しさを与えたのが私なのだという安心が、彼が私に依存してくれるのではないかといった期待を抱かせた。。