森side
交渉術に長けた太宰君は早速敵対組織に送り込んだ。
敵組織side
「笑っちまうなぁ、ポートマフィアさんは。」
大柄な男が細身で白髪の男に語りかけた。
「そうですねぇ。蛇には感謝しなくてはいけませんね。我々は林檎を食べる役目をきちんと果たさなくては。」
「?やっぱり首領の言ってることは難しくてオレには分かりません…」
「いいのですよ。我々…いえ、君たちは林檎を食べ、ありとあらゆる知に身を滅ぼすのですから…」
大柄な男が首領と呼ばれた白髪の男の顔を覗き込んだ。
「首領?首領は…負けちまうんですか?」
身を滅ぼす、という言葉に反応した男は心配そうにそう言った。
「なぁに、私は負けません。」
太宰side
「歓迎します、君が太宰君ですね。」
目の前にたった男は白髪で、紫色の何処か憂いを帯びた瞳をした、顔立ちの整った男だった。
どこか薄気味悪さを感じる瞳に背筋を震わせる。
「どうも。」
握手を求められ、手を握り返す。
“人間失格”
異能が作用した。
僕に対して、白髪の、目の前の男は何かを仕掛けてきたのだ。
反射的に手を離そうとする。
しかし相手は僕の指に自分の指を絡め、ふふ、と気色の悪い笑みを浮かべ、それでいてもう片方の手で僕の手首をしっかりと掴んでおり、手を離せないようにしていた。
「君、可愛らしいですね。」
「はぁ?」
薄い唇から紡がれた一言に驚きを隠せないでいると、男はより嬉しそうに笑った。
「僕はエフス・フェージャです。」
偽名だ。顔を見ればわかる。
恐らくロシア名の愛称をさらにもじった形だろう。
本名はドストエフスキー・フョードル…いや、姓名が逆だろうか。
フョードル・ドストエフスキー…
きっとこれが本名だ。
「よろしくお願いします、ドストエフスキーさん。」
間違えたのか。
彼は嬉しそうに私の指先を愛で始めた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!