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⚠nmmnです。
本人様とは関係ありません。
あくまでお名前を貸してもらっているだけです。
hbkn.knhb要素を含みます。
本編では名前を伏せません。
七日前、世界の終わりが知らされた。
それはあまりにも突然で、けれど誰もが理解できるほど確実だった。
地球へ接近中の巨大隕石。
各国政府による緊急会見。
「衝突回避は不可能」だとか、「人類存続の可能性は極めて低い」だとか、難しい言葉が並べられていたけれど、要するに。
________あと一週間で、全部終わる。
テレビの向こうで泣いているアナウンサーを見ながら、渡会雲雀はぽかんと口を開けていた。
「……うっそぉ!?⤴」
間抜けな声だった。
隣のソファでは、風楽奏斗がスマホを見つめたまま乾いた笑いを零す。
『あっはは……いや、笑えないって。マジなんだこれ』
窓の外では、夕焼けみたいに赤い空が広がっていた。
まだ昼なのに。
世界は、確かに終わりへ向かっていた。
「なぁ」
沈黙に耐えきれなくなったのは雲雀だった。
「……やり残したこと、全部やらね?」
奏斗が顔を上げる。
『全部?』
「そ! 世界終わるならさ、もう何しても良くね? 補導とか進路とか将来とか、全部意味なくなるんだし」
努めて明るく言う。
そうしないと、喉が震えそうだった。
奏斗はしばらく雲雀を見つめて、それから小さく笑った。
『……じゃあ、僕とデートしてくれる?』
「は!?」
『冗談冗談w』
「おまっ……!」
顔が熱くなる。
奏斗は昔からこうだ。
平気な顔して、心臓に悪いことを言う。
雲雀はそっぽを向きながら、誤魔化すみたいに笑った。
「……別に、いいけど」
『え』
「デート。したいなら」
今度は奏斗が黙る番だった。
黄緑と黄色の混じった瞳が、わずかに揺れる。
けれど彼はすぐにいつもの調子へ戻って、
『へぇ〜? 雲雀、僕のこと好きなんだ?』
「はぁ!? ちげぇって!!」
『顔真っ赤じゃんw』
「うるっせ!!」
そうやって笑い合えたことに、少しだけ安心した。
世界が終わるというのに、自分たちはまだ、こんな風に馬鹿みたいな会話をしていられる。
一日目。
二人は深夜の学校へ忍び込んだ。
「うわ、マジで誰もいねぇ」
『そりゃ世界終わるし』
静まり返った廊下に、忍び笑いが響く。
窓の外には赤い空。
誰もいない教室。
机に突っ伏して、「授業だる〜」なんてふざけ合った。
屋上にも行った。
立入禁止のフェンスを乗り越えて、夜風に吹かれる。
街は異様なほど静かだった。
遠くでサイレンが鳴っている。
誰かが泣いている。
世界中が終わりを待っている音がする。
『……怖い?』
ぽつりと奏斗が言った。
雲雀は少しだけ考えて、
「怖ぇよ」
と、笑った。
「めちゃくちゃ怖い」
その声だけ、少し掠れていた。
奏斗は何も言わなかった。
ただ、隣に立っていた。
肩が触れそうなくらい近くに。
二日目。
海へ行った。
電車はもうほとんど動いていなかったから、自転車を二人乗りした。
「お前重っ!!」
『失礼すぎない!? 僕、スタイルいい方なんだけど!』
「ナルシストきっつ」
『嫉妬?』
「ねぇよバーカ!」
青かった海は、どこか灰色に濁っていた。
けれど波の音は変わらない。
小さい頃にも、ここへ来たことがある。
そのとき奏斗は、波打ち際ではしゃいで転んだ。
びしょ濡れになって泣きそうになっていた奏斗を、雲雀は大笑いしたのだ。
「懐かし〜!」
『最悪だったんだけど。雲雀ずっと笑ってたし』
「あれは笑うって!」
『ほんと性格悪いよねぇ』
言いながら、奏斗も笑っていた。
その横顔を見て、雲雀は思う。
好きだなぁ、と。
ずっと前から。
きっと、どうしようもないくらい。
三日目。
カラオケへ行った。
フリータイム。
どうせ明日なんて来ないみたいに、朝まで歌った。
雲雀は感情が乗っていた。
少し掠れた声でバラードを歌うと、胸が痛くなるくらい似合う。
『……ねぇ』
奏斗がぽつりと言う。
「ん?」
『その曲、ずるい』
「何が?」
“君と見た景色を忘れない”
画面に流れる歌詞。
まるで今の自分たちみたいだった。
雲雀は少しだけ黙って、
「……じゃあ、奏斗のために歌った」
なんて笑うから。
奏斗は顔を隠すようにマイクを握った。
『……ほんっと、お前そういうとこ………』
言えない。
好きだなんて。
今さら。
もう終わるのに。
でも終わるからこそ、壊れるのが怖かった。
もし拒絶されたら。
最後の最後で、この関係が終わってしまったら。
それが、世界の終わりより怖かった。
五日目。
街から人が減っていた。
店は閉まり、信号も止まり、ニュース番組はほとんど消えた。
空はずっと赤い。
夜なのか昼なのか、もう分からない。
それでも二人は笑っていた。
笑うしかなかった。
コンビニでアイスを山ほど買って、公園で食べた。
ゲームセンターでメダルを使い切った。
プリクラも撮った。
『うわ、お前盛れてねぇw』
「奏斗も変顔終わってるって!」
『遺影にする?』
「縁起でもねぇ〜!!」
笑う。
笑う。
笑うたびに苦しくなる。
終わってほしくないと思ってしまう。
この時間が。
この声が。
隣にいる、この人が。
六日目の夜。
帰り道。
人気のない歩道橋の上で、二人は立ち止まった。
風が強かった。
赤い空の向こうに、白く光る隕石が見える。
もう肉眼でも分かるほど近い。
『……あと一日じゃんね』
奏斗が呟く。
雲雀は答えなかった。
答えたら、本当になってしまう気がした。
『雲雀』
「んー?」
『……僕さ』
奏斗が何かを言いかける。
けれど結局、笑って誤魔化した。
『やっぱなんでもないw』
「はぁ!? 気になるって!」
『秘密でーす』
「なんだそれぇ!」
いつも通りのやり取り。
なのに。
どうしてか泣きそうだった。
最終日。
二人は、近所の公園へ来ていた。
小さい頃、毎日のように遊んだ場所。
ブランコも、滑り台も、少し錆びている。
「ここでさ、お前めっちゃ泣いてたよな」
『え、どれの話?』
「全部」
『あっははw 否定できない』
夕方みたいな赤い光が、公園を照らしている。
世界は静かだった。
まるで最初から誰もいなかったみたいに。
ブランコを揺らしながら、奏斗がぽつりと言う。
『……もっと早く言えばよかったな』
「何を?」
『色々』
雲雀は隣を見た。奏斗は前を向いたままだった。
空は眩しいほど綺麗な茜色に染まっている。今日で世界が終わるなんて、信じられないほど綺麗で。
それが少し恨めしく思えた。
『……ほんとに世界終わっちゃうのかな』
「未だに信じれてないし」
『まぁ、呆気なく終わっちゃうんだろうけどさ』
二人とも空を見あげた。今まで見てきた中で、一番と言っていいほど綺麗な空を。
「……終わりたくないな」
『……だね』
二人で、ぽつりと口にした本音。
それは、すぐに夕闇に溶けて消えてしまったけど。
無意識のうちに重ねた手のひらから伝わる体温は、確かな温かみを持っていた。
『……ねぇ、雲雀。』
「ん?」
『…………もし、だよ。もし、何らかの原因で世界が再構築されて…もし、来世とかがあったならさ。』
遠くの空で、何かが光った気がした。静かだが、確実に。
世界は終わりを迎えようとしている。
『その時も、一緒に。』
「……っはは、当たり前じゃん。」
二人で目を合わせて、にっと笑った。
まるで、この先もずっと幸せが続くみたいに。
儚くて、消えそうで。でも、温かくて、輝いている。
最高の泣き笑いで、二人は光に包まれた。
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