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熱のせい
💙sideです ⚠涼ちゃん出てくるまで長いです
朝現場に向かう途中で、涼ちゃんが体調を崩したと連絡があった。
本当なら今すぐにでも駆けつけたいところだが、この後の仕事のことを考えて、ぐっと堪える。
「おはようございまーす。」
現場の扉を開けると元貴は先に到着していて、スタッフの人達と話をしていた。
俺が来たことに気づくと、おはよ。と短く応え、 俺も交えてのスタッフとの全体ミーティングが始まった。
「ーーというわけだから、今日の打ち合わせは延期で、涼ちゃん以外のレコーディングは予定通り行うからね。」
「…了解。」
「……」
元貴は何かを思ったのか、ミーティング終了後、俺を別室に呼んだ。
「なんだよ元貴。急に呼び出して。」
「心配?」
「は?」
「涼ちゃんのこと。顔にかいてあるよ。」
ーーこんだけ長い付き合いだと、わかるもんなんだな。
そう心の何処かで感心した。
幼馴染という関係を、あまり馬鹿にしてはいけないみたいだ。
「…はあ、元貴にはお見通しってわけか。」
「当たり前でしょ。何年いると思ってんの。」
そう言って、お互い目を合わせて笑った。
それでさ、と元貴が話を戻す。
「もし涼ちゃんが気になるなら、レコーディング午後にまわしてもらうように頼んでみようか?」
「え、いいのかよ…」
「しょうがないでしょ!若井このままだとずっと涼ちゃんのこと考えてて、使い物にならないだろうし。」
「おおい!!」
「ははっ」
「大森さん、すみません。」
「はあい。…どうするか決めなね、若井。」
そう言って、スタッフに呼ばれて元貴は部屋を後にした。
残された俺は、自分が今するべきことを考えた。
確かに仕事は大切だ。でも、今は大切な恋人に会いに行くのが最優先だ。お見舞いに行ってから、その分全力でやればいい。
俺は部屋をでると元貴に声をかけた。
「…わかったよ。こっちは俺に任せて。
俺の分までちゃんと看病してこいよ!」
「サンキューな」
俺がドアノブに手をかけると、「あ、」と元貴が思い出したかのように近づいてきた。
「間違っても涼ちゃんに変なことすんなよ。相手は病人なんだからな。」
誰にも聞こえない声でからかうように耳元で囁やいてくる元貴。
は、?もしかしてこいつ…
「…俺が気づいてないとでも思った?」
「……まじか。」
「ははっ。若井、涼ちゃんにお大事にって伝えてね。」
「…ん、りょーかい。」
元貴が俺たちの関係に気づいてたなんて…
言いたいことは山程あるが、今は涼ちゃんの家に向かうことにした。
涼ちゃんの家に向かう途中で、スポーツ飲料や薬
、冷えピタなどを買い込み、合鍵で部屋に入る。
寝室の扉が開いていたので、様子を見る。
心臓が止まるかと思った。 思わず買い物袋を落とし、中身が散乱する。
俺は涼ちゃんに駆け寄るとすぐに脈を確認する。
よかった、ちゃんと生きてる。
ほっと胸をなで下ろし、涼ちゃんを抱えて布団に戻す。
…ほんっと軽いよな。ちゃんと食べてるのか?
袋の中身を拾い、中から冷えピタを取り出しそっと涼ちゃんの額につける。
「熱いな…」
相当熱が高いのだろう。涼ちゃんは顔を真っ赤にして、苦しそうにしている。目には薄っすら涙を浮かべている。
「早く下がれ…」
俺は涼ちゃんの手を握り、そう呟いた。
「……若井?」
さっきまで元貴と連絡をとっていたスマホを放り投げ、涼ちゃんの顔を見る。
「あ、涼ちゃん起きた?」
ちゃんと冷静を装って。
恋人の前では、ちゃんと紳士でいたいから。
…なんて言ったら、元貴には笑われるかな。
涼ちゃんの額を冷えピタ越しに触る。
「まだ熱いね…」
何回か張り替えたりしていたけど、やっぱりまだ熱い…
俺はリビングに新しい冷えピタを取りに行く。
涼ちゃんは、まだ状況がわかっていないみたいだった。はてなマークだ飛んでいるのがわかる。
ほんと、そういうところがかわいいんだよな。
俺が冷えピタを貼り替えると、涼ちゃんは気持ちよさそうに目を閉じた。
「涼ちゃん辛くない?大丈夫?」
「うん、平気…さっきより大分楽になったから。」
嘘つけ。まだ全然苦しそうにしてるくせに。
涼ちゃんは変なところで誤魔化す癖がある。
でも、それを今言ったらきっと涼ちゃんはまた謝るんだろうな。
「そ、ならよかった。…心配したんだよ?お見舞いに来たら涼ちゃん倒れてるから…」
「うん…ごめんね。忙しいのに。」
気にしなくていいのに。
俺が心配で来たんだから。
「いいよ。予定は遅らせてもらったし、」
このぐるぐるした感情を、ぎゅっとまとめる。
とにかく、涼ちゃんには安心してもらいたい。
仕事の時間が来るまでは、ずっとそばに。
俺の愛を、感じてもらおう。
「ーそれでさ、」
「あははっ」
ピコンッ
スマホが鳴る。
『若井、仕事だよ。』
…ああ、きてしまった。
でも、やると決めたのは自分なのだ。決めたからには、最後までやる。
「…ごめん。そろそろ行かないと。」
「大丈夫だよ。来てくれてありがとうね。」
涼ちゃんともっと一緒にいたいけど、仕事だから。そう自分に言い聞かせて、部屋を後にしようとする。
「っ…」
…え?
「涼ちゃん?!」
泣、泣いてる…?え、俺何かした?!
涼ちゃんを心配して見つめるけど、涼ちゃんから何か言ってくる気配はない。
もしかして、寂しい…?
そう判断する前に体が動いていた。
「涼ちゃん。」
俺は涼ちゃんの涙を拭うと、そっと頬にキスを落とす。
「っ、?」
「…仕事終わったらまた来るから。
だから…それまで待ってて。」
ね?
思わずしてしまったキスに自分でも戸惑うが、
なんとか言葉を繋ぐ。
それにこくんと頷く涼ちゃんが可愛くて、思わず笑みが溢れる。
そして、段々と涼ちゃんの顔が赤くなっていくのがわかる。
「ははっ、涼ちゃん顔真っ赤。 」
言った後、少し意地悪しすぎたか?と思ったが
涼ちゃんは少し黙って、口を開いた。
「…熱のせいだし。」
帰ってきた言葉は予想外で、思わず硬直した。
まじか……
これ、俺この後の仕事ちゃんと出来るかな…
fin
「熱のせい」💙sideでした。
少し長くなってしまいました。
💛と💙の視点をぜひ比べて見てみてくださいね!
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